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私とあの人  作者: 桜木 桜花
一章
2/11

2∥美壁君!?

 優美子が家に帰ると、優美子の母、明美【あけみ】はそんなにビックリしなかった。こういうことはしょっちゅうで、お母さんも慣れているのだろう。

「ごめんね、耕太君。いつも、いつも、優美子を送ってもらっちゃって。」

明美が言った。耕太は首を振って、優美子の頭から頬にかけてなでた。優美子のお父さんの言いつけで、キスは最低でも一日一回。優美子と耕太は、今日、最初で最後のキスをして、別れた。

優美子は部屋で休んだ。夕方になると、ベランダの窓を誰かがたたく音がした。優美子がカーテンを開けると、真斗がベランダに立っていた。

「み、美壁君!?」

優美子が驚いていると、真斗が口パクで、でも、面倒くさそうに『開けて』と言った。優美子が窓を開けると、真斗は宿題などが書いてあるプリントと、英語のプリントを渡した。

「あ、やばい。ちょっとお前、来い。」

そう言って、真斗は優美子を引っ張って、ベッドまで連れて行き、押し倒してその上に乗った。

「ちょっと、美壁君!?」

優美子が言うと、何か硬いものが落ちてきたような音がした。しかも、何回もその音がした。石だろうか。優美子は見ようとしたが、真斗が顔を抑えていたので、動けなかった。何回か真斗に当たって、『うっ』と真斗はうなっていた。音が収まって、真斗は優美子から離れた。

「ごめん、季遊崎。ケガしてないか?こんなことに巻き込んで、ごめんな。俺のことを狙った奴らが、嫌がらせしてくるんだ。俺がこの家に・・・不法侵入だけど、この家に入ったのを見て、投げてきたんだろうな、この石を。そこを動くなよ。これは、割ったら刃物みたいによく切れる石だ。踏んだり触ったりするとケガするぞ。ったく、どこからこんなものを持ってきたんだか。俺が片付けるから、触るなよ。スリッパある?」

真斗はそう言って、申し訳なさそうに笑った。優美子はベッドの上でうなずいて、部屋の入り口を指差した。真斗はそれを取りに行って、優美子に差し出した。

「ほうきを持ってきてくれないかな?あと、紙袋か麻袋を持ってきてくれる?」

真斗はそう言って、細かく割れた石をつまんで見た。優美子はうなずいて、麻袋とほうきを持ってきた。明美は、買い物で出かけていた。真斗は慣れているのか、すぐにほうきで割れた石などを片付けた。床はもちろん、ベッドの上も。

「よし、これくらいでいいだろう。でも、裸足で歩くなよ。まだ残っているかもしれないから。」

そう真斗に言われて、優美子はうなずいた。優美子は、真斗の頬の傷とふくらはぎの傷を見て、心配していた。割れた石が飛んできて、切ったのだろう。

「大丈夫?頬にも足にも切り傷があるけど。」

「あ、ああ。大丈夫。唾つけとけば治るって。」

真斗は、そう言ってニコッと笑った。優美子はそんな真斗を引き寄せた。そして、ベッドの下にあった救急箱を取り出して、

「切ったところを見せて。放っておいたら、跡が残っちゃう。」

そう言われて、真斗はしぶしぶふくらはぎを見せた。優美子は、ふくらはぎを治療するのに、普通にすると、ちゃんと治療できないので、横たわって胸のところで真斗の足を折り曲げて、治療した。そして、頬の治療が終わった直後ぐらいに、明美の車がガレージに入った。

「あ、やばい。お母さん返ってきちゃった。帰れる?玄関からは、ダメだよ。お母さんと鉢合わせしちゃうから。でも、ベランダから出るのも・・・危ないし。って言うか、どうやって上ってきたの?」

「優美子?体調はどう?」

優美子が質問すると、明美が階段を上りながら、そう言っているのが聞こえた。

「じゃあな、季遊崎。手当てしてくれてありがとう。」

真斗はそう言って、麻袋を持って、ベランダに行って消えた。あっという間のことだったので優美子はビックリした。

「ちょっと優美子。聞いてるの?」

明美はそう言って、ドアを開けた。優美子はお母さんの方を向いて、うなずいた。

次の日、優美子が登校していると、真斗が走ってきた。

「美壁君、おはよう。」

優美子が言うと、真斗は優美子の手を引っ張って、走っていろんな角を曲がった。優美子はどこを走っているのか分からなかったが、真斗が誰かに追われているのは分かった。

「美壁君!?誰かに追われているの?」

「ああ。昨日、石を投げてきた奴らが、俺の家の前で待ち伏せしていたんだ。また、あの石を投げてきやがった。ちょっとケガしたけど、これくらい大丈夫だから心配するな。」

そう言って、真斗は肩の傷を見ながら言った。しばらくずっと走っていると、学校に着いた。

「お前は先に行ってろ。俺は、あいつらを懲らしめてから行くから。」

真斗はそう言って、さっききた方向を逆に走って行った。

優美子が校門の前に立つと、目の前が真っ暗になり倒れた。

優美子が起きたのは、次の日の朝だった。病院のベッドに横たわっていて、まだだるさが残っていた。

「優美子。あ~、よかった。」

優美子の兄が言った。実は、兄はアメリカの大学へ留学していたが、優美子が倒れたと言う知らせを聞いて、駆けつけてきたのだ。

「お、お兄ちゃん!帰ってきたんだ。お母さんは?」

「仕事が忙しくて、これないんだ。って言うか、お前、ほぼ一日寝ていたんだぞ。それと昨日、暴力事件があって、その暴力をふるった美壁っていう奴が、お前にだったら全部を話すって言っていたらしい。」

優美子は兄貴のその言葉を聞いて、ベッドから降りた。

「お前、動かない方が・・・」

「今すぐ行かなければならないの!美壁君が、私に話すって言うんなら、私、聞かなければならないの。これは生徒会長としての意地よ。」

優美子はそう言って、大きなかばんに入っていた自分の服に着替えた。



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