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私とあの人  作者: 桜木 桜花
三章
10/11

2∥友達

「ったく、誠人兄は本当に変わってない。」

優美子があきれたように言うと、真斗はクスクス笑って、優美子に笑いかけた。

「季遊崎って、本当にキャラが面白いな。」

真斗はそう言って、ベッドの上であぐらをかいた。

「そう?」

優美子は真斗に笑いかけた。真斗はうなずいて、優美子に近づいた。

「何?」

優美子が後ろに下がりながら、そう言った。真斗はそのまま優美子を押し倒した。そして、優美子の唇にキスをした。

「何で?」

優美子がベッドに横たわったまま言うと、真斗は優美子の頬に触れた。

「何でだろう?変に胸が高鳴ってるんだ。体も火照ってる。」

真斗がそう言うと、優美子はため息をついた。

「風邪のせいじゃない?」

「ん?そうかもな。お前からうつされた風邪だから火照ってるのかもしれない。」

真斗はそう言って、ニコッと笑った。優美子は、真斗を押し離した。

「もう。からかうのはいいかげんにしてよ。」

優美子は笑いながらそう言った。真斗は苦笑いをして、突然笑い出した。そして、優美子の頭を撫でた。

「季遊崎、カワイイ!」

真斗にそう言われて、優美子はクスッと笑った。

「ありがとう。」

「優美ちゃん、帰ろう。」

そう言って、蛍太が保健室に入ってきた。

「蛍ちゃん・・・?」

優美子がおびえた様子でそう言うと、

「真ちゃん、一緒に帰ろう。」

と言って美佳が入ってきた。

「美佳・・・?」

二人とも、困惑していた。優美子は蛍太とケンカしたばかりだし、真斗も美佳とケンカしたばかりだったからだ。

「ちょっと、あんたたち。美壁君と、優美子は私たちと帰るのよ。」

そう言って、朝美が玲と保健室に入ってきた。

「ごめんね、蛍ちゃん。」

優美子はそういって、靴を履くと、朝美のところへ行って、朝美からカバンを受け取った。

「美佳、先に帰れ。」

真斗は怒ってそう言うと、美佳から自分のカバンを受け取った。そして、玲と一緒に保健室を出た。

「ちょっと待って、美壁君!」

優美子がそう言って、真斗の腕をつかんだ。真斗は振り返って、壁にもたれた。

「大丈夫?」

優美子がそう言うと、真斗は少しため息をついた。

「まぁ、大丈夫だと言いたいところだけど、そんなに・・・」

真斗はそう言って、床に座り込んだ。

「大丈夫か?」

玲がそう言って、真斗に肩をかしながら、真斗を立たせた。

「悪い。家までおくれるか?」

真斗がそう言うと、玲はすぐにうなずいた。

「季遊崎と天王寺もついて来てくれないか?」

真斗がそう言うと、朝美と優美子は顔を見合わせた。

「私はいいよ。朝美は?」

「私もいいよ。一緒に行こう。」

朝美と優美子はそう言って、真斗の横に並んで歩いた。

「浅野って、意外に力持ちだよね。」

校門を出ると、朝美がそう言った。

「そうか?まぁ、昔、真斗と柔道、空手、剣道と合気道を習ったりしてたから、武道の心得はある。」

玲はそう言うと、静かに微笑んだ。それを聞いて、朝美と優美子は感心したように、笑った。

「じゃあ、二人とも強いんだ。」

朝美がそう言うと、玲は首を横に振った。

「俺は真斗に比べれば、全然だよ。だって、真斗は黒帯だし。」

「ちなみに、玲は茶帯だ。」

真斗が付け足す。優美子はクスクス笑って、

「私も黒帯よ、柔道。柔道と合気道を習ってるの。」

と言った。男子二人は、優美子を見てニコッと笑った。

「すげぇ。この前の校内ピアノコンクールで優勝できるくらい、ピアノが上手くて、成績も真斗と一位と二位を争ってるくらいだし、その上に運動神経抜群、おまけに柔道の黒帯で合気道も出来る。完璧じゃん。さすが、学校一の姫は違うな。」

玲がそう言うと、優美子はため息をついて、玲の頭を叩いた。

「姫っていう呼び方、やめてよね。それ言っていい人は、一人だけよ。」

優美子はそう言って、玲を睨んだ。

「誰だよ、その一人は。」

「え、名前は知らないのよ。たぶん、お互い知らないと思う。会ったのも、三回だけで、そんなに親しくならなかったし。」

優美子はそう言って、ニコッと笑った。

「二度と会うことないかもしれない。中学二年生の夏のときと入学式のときのことだし。」

「あ、そう言えば、真斗の初恋も入学式だよな。入学式の三日前と入学式のときに会って、それっきりだから、あきらめたけど。」

玲がそう言うと、真斗は顔をしかめた。

「今も続いてる。見つけたから。」

真斗はそう言うと、赤くなった。玲は目を見開いて、爆笑した。

「マジで?カッコイイ、真斗。」

「うるせぇ。だって、そいつ、可愛すぎるんだ。」

真斗は赤くなって、足を止めた。そうとう恥ずかしいらしい。優美子は、そんな真斗から目をそらした。真斗の言うそいつと言う言葉を聞いて、真斗の事を見ていられなくなったのだ。

「ごめん、私、帰る。」

「こら、優美子。今日は習い事ないでしょう?帰る必要はないわ。」

朝美がそう言うと、優美子は泣きそうな顔をした。

「泣かない。美壁君が心配するでしょう。」

朝美が小声でそう言った。優美子は涙をこらえて、うなずいた。朝美は、優美子が真斗を好きで、優美子がそれを気づいていないこと、真斗が優美子のことを大好きで、自分の気持ちに気づいていることを知っている。優美子とは、蛍太と同じぐらいの長い付き合いなので、見たらすぐ分かる。それをあえて言わないのは、優美子が自分で気づかないと意味がないからだ。

「大丈夫なのか、季遊崎?用事があるなら、帰ってもいいぞ。」

「ううん、大丈夫。美壁君だって、何回も私の家に来てくれてるんだから、私だって行くよ。」

優美子はそう言うと、ニコッと笑った。真斗は笑って、うなずいた。

 真斗の家に着くと、朝美も優美子もビックリしていた。とにかく、大きいのだ。

「何ここ?大邸宅じゃん!」

朝美がそう言うと、真斗は苦笑いをした。

「これは言わないでほしいんだけど、俺は『beauty wall』の社長の息子なんだ。絶対言うなよ。」

真斗はそう言うと、インターホンを押した。

『はい?あら、坊ちゃん。』

インターホンのスピーカーから、そんな声が聞こえた。

「春海さん、門を開けて。」

真斗がそう言うと、門が自動的に開いた。

「す、すごい。」

朝美と優美子が声をそろえて言った。真斗はそんな二人の反応をみて笑いながら、門の中に入っていった。優美子と朝美もその後ろに続く。

「お帰りなさいませ、お嬢様方、浅野様、坊ちゃん。」

真斗の家に入るなり、春海がそう言った。

「あ、お邪魔します。美壁君と同じ学年の季遊崎 優美子です。」

「同じく、天王寺 朝美です。」

そう言って、女子は春海に会釈した。玲は手を挙げて、

「春海さん、久しぶり。真斗が熱出したんで、おくりに来た。」

玲がそう言うと、春海は驚いた顔をして、真斗の額に触れた。

「まぁ、本当。早く部屋に連れて行ってください。」

春海はそう言って、玲と一緒に真斗を部屋に連れて行った。

「あの、春海さん。キッチンはどこですか?」

優美子がそう言うと、春海は振り返って、

「右の突き当たりにあります。」

と言うと、二階に上がった。優美子はすぐにキッチンに言って、氷と水を用意した。そして、いつも持参しているスポーツタオルを、その氷水につけた。そして、二階に上がった。

「優美子、こっち。」

先に二階に上がっていた朝美がそう言った。朝美がいるほうに優美子は行って、真斗の部屋に入った。

「あの、氷水とタオルを持ってきました。」

「あら、ありがとうございます。でも、氷のある場所、よく分かりましたね。」

「私の家の冷蔵庫と同じですから。」

優美子はそう言うと、氷水にひたしたタオルを絞った。そして、春海にわたした。

「ありがとう、季遊崎。春海さん、下がって。」

「かしこまりました。」

春美がそう言って、部屋から出ると、真斗はため息をついた。

「ありがとうな、季遊崎。」

真斗はそう言って、ため息をついた。

「あ、真斗。これ。」

そう言って、玲が参考書を真斗に渡した。

「かしてくれてありがとうな。」

玲がそう言うと、真斗はうなずいて笑った。

「俺もここはいるからさ。なんか分からないことがあったら言えよ。」

真斗はそう言って、ベッドの隣にある机の上に参考書をおいた。

「どこに入るの?」

「ん?あぁ、幸門【さちもん】大学。俺は経営学部。玲は文学部。」

優美子の質問に、真斗が答えた。すると、朝美がニコッと笑った。

「大学一緒だよ。私は音楽学部で、優美子は教育学部。」

朝美がそう言うと、四人で笑った。

「じゃあ、大学も一緒だな。でも、受かるかな。」

玲がそう言うと、真斗が笑った。

「心配するな。俺が教えてやる。」

真斗はそう言って、起き上がった。

「あ、玲。塾はまだいいのか?」

真斗が時計を見て言うと、玲も時計を見て、

「うわ、ヤバイ。じゃあ、また明日。」

そう言って、玲は部屋を出た。

「私も帰るね。優美子はどうする?」

「私?どうしよう。」

「ここにいろよ。まだ時間があればの話だけど。」

真斗がそう言うと、優美子は真斗を見てうなずいた。

「じゃあ、もうちょっとここにいるよ。」

優美子がそう言うと、朝美は笑って部屋を出た。



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