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私とあの人  作者: 桜木 桜花
一章
1/11

1∥誰?

秋のなかばに入った頃、清水町立清水高等学校で、五十人ぐらいいる取り巻きの中を堂々と歩く、一人の女子高生がいた。名前は、季遊崎 優美子。この学院では結構美人な彼女にはいろいろな取り巻きがいる。

「優美子さ~ん。愛してま~す。」

「きゃー!優美子先輩だわ!」

男も女も虜にしてしまう彼女は、文武両道で、背も高いので、学院のみんなはもちろん、学校の近所に住む人も知らない人はいない。そんな彼女は、学校に着くと、教室ではなく保健室に行く。体が弱く、よく貧血になったり、人酔いしてしまう。保健室に入ると、いつもの先生ではなく、男子生徒がいた。

「誰?」

優美子はそう言うと、そのまま座り込んだ。

「あ、大丈夫?」

だるそうにそう言って、その男子生徒は軽々と優美子を持ち上げた。そして、ベッドに寝かせると、ふとんをかけて、カーテンを閉めた。

「あ、あなた、同じ三年の美壁 真斗【みかべ しんと】ね。この町一番の不良の。なぜ、ここにいるの。」

優美子は、カーテンを閉めたまま真斗に話しかけた。すると、真斗はカーテンを開けて、

「へぇ、俺のこと知ってるんだ。学園一の美人が。光栄なこった。」

と言った。しかも、思いっきり優美子をにらみつけた。それに優美子は動じなかった。

「質問に答えて。なぜここにいるの?」

「べつに・・・絆創膏をもらいに来たんだよ。仲間が怪我したんでね。」

そう言って真斗は、保健室を出て行った。優美子は、ニコッと笑ってベッドに横になって休んだ。


優美子が、体調も良くなって、教室に行くと男の取り巻きが集まってきた。

「優美子さん、体調は大丈夫ですか?僕、すごく心配しましたよ。」

その男子が言うと、優美子は、『大げさすぎ。あんたらのせいで、人酔いしてしまうのよ。』と思っていた。それと同時に、優美子は真斗のことを思い出していた。この人たちみたいに、擦り寄ってこない真斗に、ちょっと興味を持っていたのだ。優美子が男子を無視していると、廊下でいじめに会っている女の子を偶然目撃した。

「ちょっと、何しているの?いじめなんて、大人気ないこと。」

「うるさいんだよ。だいたいな、あんたみたいな女、美人じゃなかったら、誰も相手にしないんだよ。アタイらみたいな、ギャルの方がいいに決まってる。」

そうギャルは言ったが、優美子は『いや、そんなこと言ってないって。いじめをやめろって言ってるの。』と思っていた。

「じゃなくて、いじめをやめろって言ってるだけなんだけど。」

そう優美子が言うと、ギャルは優美子に殴りかかってきた。優美子はそのこぶしを受け止めて、うでをねじった。

「あのね。私をなめないでくれる?ほら、そこの女の子。早くどこかに逃げなさい。」

優美子は、ギャルを突き飛ばして、仁王立ちになった。

「私は金持ちであろうが、なかろうが、いじめは絶対に許さないの。私の小学校のときの親友が、いじめにあって自殺したから・・・何はともあれ、いじめは絶対許さない!」

優美子が言うと、ギャルは下唇をかんで、舌打ちをするとどこかに行った。

「あ、あの。ありがとうございました!」

さっきのいじめられていた、女の子が言った。

「大丈夫?あんなやつらに、目をつけられて、あなたも大変ね。でも、もう大丈夫よ。お名前は?」

優美子が言うと、女の子は目を輝かせた。

「私、二年の西野 園美【にしの そのみ】と言います。あの、弟子にしてください!」

優美子はそう言われて、動揺したが、ゆっくりうなずいた。

「でも、私、何が出来るか・・・。武道とかあまり教えられないよ。」

「それでもいいです!私は、心を強くしたいんです。」

園美がそういったので、優美子はどうすればいいか分からなかったが、ニコッと笑ってうなずいた。園美はスキップしながら、教室へ行った。

「ったく、お前もおせっかいな奴だな。」

と後ろから男の声がした。優美子が後ろを見ると、優美子の中等部からの男友達の成瀬 耕太【なるせ こうた】が、腕組をして立っていた。

「うるさいわね。いいじゃない、このぐらい。」

優美子が言うと、耕太はニコッと笑って、肩をすくめた。優美子は、次は貧血で座り込んだ。

「お前なぁ。さっき休んだばっかりだろう?しかたねぇやつ。」

そう言って、耕太は優美子をお姫様抱っこして、保健室まで運んだ。

「ごめん、耕太。もうだめだわ。私、もう帰る。」

優美子がベッドに横たわりながら言った。耕太は、優美子の目に入りそうになっていた髪の毛をよけて、

「そっか。じゃあ、俺が送るけど、大丈夫か?」

と言った。優美子はうなずくと、耕太に助けてもらいながら、ゆっくり立った。すると、保健室のドアが開いて、真斗が入ってきた。

「あ、美壁君・・・。今度はどうしたの?」

優美子が言うと、真斗は優美子を見て、赤くなった。優美子はあまり分からなかったが、耕太には見え見えだった。

「お前と同じ貧血だよ。最近よくなるんだ。」

「しっかり休んでね。無理しちゃダメだよ。」

優美子はそう言って、ニコッと笑った。耕太は、行くぞと言わんばかりに、優美子を引っ張った。

優美子と耕太は、早退届を出すと家に帰った。

「耕太まで、早退しなくてよくない?」

「お前が心配なんだよ。二年のときは、早退してその帰り道に倒れたときがあったじゃん。」

優美子は、恥ずかしくなった。優美子が倒れているところを見つけたのは、耕太だったのだが、その後、耕太が優美子の家に優美子を運ぶと、優美子の両親に彼氏だと勘違いされたのだ。でも今、優美子と耕太は付き合っている。もちろんこのことは、誰にも言っていないし、デートもほぼ夕方やお父様が許せば夜に楽しんでいる。

「あれはたまたま・・・もう、あんなことにはならないわよ。」

「そうとは限らないだろう。」

耕太に言われて、優美子は黙るしかなかった。




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