122 エピローグ
家を無事買うことに成功し、俺たちは引っ越しをした。
晴れて借金地獄である。これからは月一で金貨一枚を支払っていかなきゃいけない。ちょっと気が重い。魔獣たちには仕事を頑張ってもらわなきゃいけないよな。本当にさ。
早朝、いま新しい家に巫女さんに招いていた。白い羽衣ローブを着た黒髪ロングの女性。ダイニングの霊棚に家霊様をおろしてもらっている。霊棚に向けて彼女は正座をし、ぶつぶつと呪文をつぶやいている。まるでお坊さんの唱えるお経のようだ。両手のひらを合わせて何度もおじぎをしている。
俺たち三人と一頭は、巫女さんの後ろで見守っていた。ピンクの髪色の少女が嬉々とした表情をしている。期待に揺れているつり目の瞳。微笑んでつりあがる頬。
「スティフ、これであたしたちも新しいスキルを覚えるかしら?」
「ああ、覚えると思うぞ。分からんけど」
「ステータスオープン」
「いやいやお前、ステータス出したって、いきなり覚える訳じゃないからな」
「覚えてないわ」
「そりゃあそうだ」
ふと、霊棚の蝋燭にぼうっと青い火が灯った。家霊様がおりたのである。ちなみにこの蝋燭は火がついても減らないのだそうだ。不思議である。
巫女さんが正座の姿勢のままこちらを振り返った。
「皆さま、家霊様が降臨しました。これからは霊棚の掃除を欠かすことの無いようにしてください」
「欠かすとどうなるの?」
黒い翼に尻尾の少女が尋ねる。
「不潔にすると、家霊様が死んでしまいます」
「えぇ、マジなの?」
「はい。ですから、毎日掃除をお願いいたします」
「わ、分かったわ」
掃除か。シノにでもやってもらうこととしよう。
その後、巫女さんは仕事道具をしまって帰り支度を始めた。俺は彼女に銀貨10枚を支払う。儀式のお代金である。
巫女さんが帰って行くと、俺たちは朝食を摂った。それにしても新しい環境である。綺麗な天井や床や壁、火のついていない暖炉、丘の下の町を覗くことができる大きなガラス窓。
「スティフ! このスープ美味しいわ」
「本当ですぅ」
「ぐるるぅ、美味いな」
「そうだろ。特性スープだからな」
何てことない、とろっとしたかき玉スープである。テーブルの上には生クリームとジャムを挟んだパン。粗挽きウインナーにマリネが並んでいる。飯だけは美味いもの食わないとな。じゃないと生きているのがもったいない。
今度の休日にはルタークとヘミリー、ベアビリーズ食堂のおとっつぁんを招いて新築祝いをするつもりだ。同時に音楽も習う。今から楽しみである。その日は気合いを入れて料理をしなければいけない。
朝食が終わると片付けをして、俺たちは家を出た。ダンジョンへと向かう。さあ、仕事だ。気合いを入れていかないといけない。とは言っても頑張るのは魔獣たちなのであるが。
隣を歩く赤黒ロリータ服がステータス画面を出している。パアッと素敵な顔を浮かべた。笑顔にゆるむ目尻。口の端がつりあがる。本当かわゆい。
「スティフ! あたし、新しいスキル覚えたわ!」
「いきなりか?」
「うん! 見て見て、これ!」
「どーれ」
俺はステータス画面を覗く。そのスキル欄には本当に新しい文字が浮かんでいた。
「良かったな! エヴリル」
ピンクの髪色少女の尻を俺は右手のひらでぺちんと叩く。彼女はお尻を両手で押さえて、
「どうしてお尻を叩くの!?」
「何となくだ」
「何となくで叩かないでよー! もう~」
文句をつぶやいているが、どこか嬉しそうな顔つき。これだからガキは可愛い。
「お前には頑張ってもらわないとな」
「もー、スティフのエッチ!」
「エッチじゃないだろ」
「お尻を叩くなんて、エッチ!」
「ははは」
楽しい気分だった。空を仰ぐ。どこまでも澄み渡るような青。良い天気だった。さあ、今日のダンジョンはどんなモンスターが待っているんだろう。だけど、どんな敵が出て来ても平気な気がした。
俺にはエヴリルとシノとボロックがいるのだから。




