地獄落ち勇者
ああ、やってしまった。
首から鮮血が噴き出す。
意識が遠のいて...
「どのようなご用件で?」
え?俺は死んだはずじゃ。
「その前にお前は誰だ?俺は死んだんじゃないのか?」
「私は何者でもございません」
「は?」
「は、ではございません何者でもないのです」
目の前の女は黒い瞳を瞬きもせずにこちらを見つめ続ける
「意味が分からん」
「意味分からなくありません。私はあなたの質問に答えました」
「いやまだだ。俺は死んだはずじゃないのか?とも聞いたぞ」
「失礼しました。はい、あなたは死にました。では、こちらの質問に答えてください」
やっぱり俺は死んだのか。よかった。
「あんたの質問には答えられない。用件も何もなんで俺はここにいるのかが分からないからな」
「あなたはひどく後悔を残したままお亡くなりになりました。このままでは成仏できません。そこであなたが残した後悔をこちらでお聞きして少しでも楽な気持ちになり、成仏してもらうために後悔の内容をお聞きしているのです」
後悔か。
「俺の後悔は多くの命を殺めたことだ」
「はい、続きをお願いします」
こいつ話聞く気あんのか?俺のペースに合わせろよ
「俺は勇者として人々の期待を背に多くの魔物を殺めた。いくら相手が俺ら人間を苦しめた魔物といえど俺からすれば弱い者いじめに過ぎなかった。それがどうしても耐えきれなかった」
「それで自ら命を絶ったということですか」
「そうだ。もう魔王を倒したし、魔物はいなくなった。俺の役目は終わった。だから...」
「そうですか。では、もういいでしょうあなたは地獄行きです。」
「え?どうして。俺は勇者だぞ。地獄行きだなんておかしいだろ!それにお前俺を成仏させるために話を聞くって言っただろ。言ってることとやってることが違うぞ!」
「私は与えられた任務をこなしているだけです。あなたは地獄へ行くことで成仏できます。」
「意味が分からない。俺は天国行きに間違いない。お前は間違っている!」
「いいえ、あなたは地獄行きです。では」
「ふざけるn」
俺の足元が抜け落ち、体が急降下する。
体が地面に打ち付けられ全身に痛みが走る。
「ん?なんだ。新入りか」
重厚感のある声が耳に入る。
「いや、お前は!?」
なんか聞き覚えのある声だな。
声の主の方を見る。
「何でお前がここに」
奴の声が震える。
「え?」
俺も驚きで体が固まる。
「な、魔王。貴様まだ生きてたのか!」
俺は本能的に剣を構える。
「おいおいちょっと待て。俺はもう死んでるんだ。もう悪さはしない。だから警戒しないでくれ」
この怯え方本物だな。俺の戦闘経験からわかる。
「だが、勇者何故貴様がここに。我が言うのもなんだが貴様は天国行きじゃないのか?それに死ぬのが早すぎないか?我を倒して間もないだろう」
「何故俺がここに来たのか分からない」
「そうか。それでなぜ今ここにいるのだ」
「俺はお前を倒してすぐに命を絶った」
「何故だ?我を倒した貴様には華々しい未来が待っているはずであろう」
「俺は耐えられなかったんだ。魔物であろうと命を殺めることに」
「そうかそれで勇者としての役目を終えた貴様は自ら命を絶ったということか」
「そうだ。でもおかしいなんで俺が地獄行きなんだ。お前と俺が同じなんておかしい!」
「それは正直我もおかしいと思う。勇者よ一緒にここを抜け出さないか?」
は?何言ってるんだこいつ。
俺はつい唖然とした表情をしてしまう。
「そんな顔をするな。悪さをしようとしてるわけではない。ここは何もなくて我も暇なんだ。そこで何か余興を探していたのだ。地獄に落ちた勇者を救い出すなんてなんと面白そうなことではないか」
「絶対に悪さはしないんだな?」
俺は鋭い視線を奴に向ける。
「しないしない。我は貴様に一度完膚なきまで叩きのめされているんだ。貴様の傍で悪さをしようなんてならん」
「約束だぞ。」
「もちろんだ。では、始めるぞ!地獄を抜け出す旅を」
「まさかお前が俺に力を貸してくれるとはな意外だよ」
「いいってことよ、昨日の敵は今日の友よ!」
魔王は豪快な笑いをしながら俺の背を叩いた。




