第二話 存在しない錬金術師-9
神々はたまに人間に贈り物をする。
贈り物をもらった者は皆『授かりし者』と呼ばれる。贈り物の内容は永遠に落ちない視力から大怪我をも一瞬で治す治癒術と大小様々で、良くも悪くも授かりし者は歴史に残りやすい。その中でも、『錬金術』を授かった者たちは長年人々の生活に貢献し続けているために極めて目立つ存在である。
「耳飾りはどうした? 錬金術師であれば常に身に着けているように決められているはずだ」
時期は人それぞれだが、錬金術は授かった瞬間に証である印が額に浮かび上がるため認知しやすく、授かればすぐに国へ登録することが義務付けられている。この登録時に耳飾りを受け取るのだ。自国の錬金術師の人数を把握するため……というよりも材料があれば何でも作れてしまう彼らが国を脅かさないための管理といったところだろう。最も、彼らにとっては研究が生き甲斐のため、国家転覆なんかに興味はない者が殆どだ。
「あれはどんな温度にも衝撃にも耐えられる代物だ。そう簡単に壊れるはずはない。それに、あれは錬金術師にとって誇りでもあるものだろう? それを自ら外すとは思えない」
「……そうだよ。ボクは国から貰った耳飾りを持っていない」
耳飾りを持っていない。それは国に登録する義務を怠ったことということだ。自ら無法者と名乗っているに等しい発言にリンドウは少年——ミツルを更に睨みつけた。だが、ミツルも負けじと睨み返す。
そんな二人の状況を見て白髪の老人は慌てて間に割って入ってきた。
「リンドウ殿、坊主の話を聞いてくだせぇ。こいつにはどうしようもなかった話だったんだ」
そう言って赤の他人にも関わらずミツルのために頭を深く下げるその情の深き姿に流石のリンドウもこれ以上詰め寄ることができなかった。刀を向けた状態のまま、数秒の沈黙が流れる。その間、誰も微動だにしない。
「……確かに。法を犯す方法は本人でなくてもいくらでもあるな」
白髪の老人の優しさに免じてリンドウは刀を下ろす。その行動に一同が安どのため息を付いた——が、次のリンドウに対するミツルの態度に再度一同が凍り付く。
「身なりはそれなりだからスラムの人間ではないだろう……生まれ付きならば、親が法を無視したか——」
「ボクの家族はそんなことしない!」
突然大声を上げて立ち上がり、今度はミツルの方がリンドウに詰め寄った。折角リンドウが刀を収めたというのに、と一同が焦ってミツルを止めようとする。だが、ミツルは先程など比ではない鬼気迫る表情でせまり、その気迫にリンドウは思わず後ずさった。
「ボクも家族も、みんな知らなかったんだ! 知らない中勝手に決められて……責任を押し付けられて殺されそうなんだ!」
「……どういうことだ?」
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