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第一話 リンドウ・アカツキという男-14


「リンドウ!」


 祭壇までの道に立っていた軍人が声を上げた。そして、先程とは異なる()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 その動作と同時に、その姿が変わっていく。


「殿下!?」


 皇族席にいるはずの殿下が——ヒナタが現れるという事態にキキョウは吃驚する。同時に、皇族席にいるはずのヒナタがポンっと音を立てて、黄玉へと姿を変えた。その見覚えのある光景に皇帝はと目を見開き、声を上げていた。


「移魂術か!?」


 ヒナタが放り投げたものを最前列にいるリンドウが受け取り——そして、その大きな『何か』が徐々に姿を現した瞬間、キキョウは蒼褪めて祭壇へと向かって飛び出した。


「待って!」


 分かってしまった。その『何か』が——()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。いつも近くで——どんな時も側で共に過ごしていたから、直ぐに気付き、止めなければ——と間髪入れずにその身体を動かした。


「おっ、と!」


 だけど、その行く手を阻む男がいる。


「殿下!? 退けてください! 邪魔しないで!」

「すまんぬが、従妹の願いでも余は親友を取る」


 動揺するキキョウを抑えながらヒナタが「術式・一の拘束、発動——!」と呟く。足元に古代文字の術式が浮かび上がり、地面から黄金色に光る蔦がキキョウの足に絡みつき拘束する。皇族の継承者のみに受け継がれる一子相伝の拘束術式。どんな巨漢の男でさえも取り押さえてしまう力を持つ。故に、キキョウはその場から一歩も動くことができなくなってしまった。


「やめて、お願い!」


 それでも必死に身体に力を入れて、拘束する蔦から脱出しようとする。


 動けなくてどうする? 何のためにワンピースを着てきたのか、と。自分を叱責し、先程御して抑え込んだ手をリンドウへ向けて伸ばす。だけど——当然、届かない。



(女のために命を賭ける男は馬鹿であるか――?)


 リンドウは再び己に問いかける。


 同行者をキキョウだけにしたのは最も近くで自分を見て欲しかったから。この言葉に偽りはない。だけど、同時に家族を離れた場所に置いておきたかった。


 アカツキ家は神職家系として国に仕えている。特に今回の儀式について、父は勿論のこと、リンドウの代わりに叔父が、嫁いだ姉や妹でさえも重要な役割を担って参列している。

だからこんな馬鹿な真似をしている自分を家族の誰もが直ぐに止めに来ることができない。持ち場を簡単に離れることができないのだ。他の親戚たちもすぐに動けないところに配置している。


 皇帝の隣で震え、鬼のような顔をして自分を睨んでいるだろう父親の姿を容易に想像し、リンドウは心の内で「ざまぁみろ」と笑った。


 ヒナタが放り投げてくれた荷物が姿を現すと同時に、リンドウの姿も変わっていく。それはアカツキ家の後継者としての正装……ではなく、任務を与えられたときにいつも着ている学ラン風の戦闘服姿。


(あえて言おう。大馬鹿者である、と——!)


 そう答え、リンドウは必死にこちらへと手を伸ばすキキョウを安心させるかのように優しく微笑みんだ。そして、そのままゆっくりと目を閉じる。


 侯爵であるアカツキ家は古くからヒ・イズル帝国の繁栄のために代々皇族に仕えてきた。その由緒正しき家系に生まれ、才能あるものとして期待され、権利を貰い、沢山の人々に愛された男。


 それが、リンドウ・アカツキだ。


 多くのものを貰ったのならば、その責務を果たせ。それがアカツキ家後継者の務めだ。


 わかっている。充分理解できている。


 理解できているから、リンドウは愛のために己の命を賭ける。


 笑いたきゃ大笑いしろ。

 軽蔑したければ指でも差してこい。


 リンドウ・アカツキは物語のような奇跡を信じる大馬鹿者だ、と——!

 そんな汚名、キキョウを失うことに比べれば怖くもなんともない!


 静粛の中で突然起きた出来事に大広場にいる人間だけではない、四角い光を通して世界中の人々が困惑している。そんな中、アオだけがその目をキラキラさせ、閉じたリンドウの目が再び開いたときにどんな目をしているのかワクワクして期待している。


 さぁ、リンドウ・アカツキ。

 深呼吸をしろ。

 そして再び、目を開ければ———大丈夫。


「そうだ。俺は強い人——!」

 

 その目を見たアオは——歓喜した。


 目をかっぴらき、両手を広げ、天を仰ぎ、大声で。

 空の向こう側にいる同胞にこの素晴らしき瞬間を伝えるために——!


「お前ら喜べぇええええ! いまここで! 百五十年振りの神様ゲームの開催を宣言する!」


 その瞬間、アオを中心に光の輪が世界の果てを目指して広がった。

 聖女カンナ・サオトメの歴史でも語られている。神様ゲームの始まりの合図——ゲームの開催により()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 もう逃げられない。

 逃げるつもりはないから構わない。


「勇敢なるプレイヤーの諸君? ウェルカム? 神々の更なる娯楽の世界へ!」


 先程まであんなに気さくなで笑顔満点だったアオの顔が歪み、皮肉な笑みを浮べ、全員がゾッとさせる。だけど、そんな笑みにリンドウは負けない。神が振りまく不安を消し去るように、恐れ知らずの大胆不敵な笑みを浮べて対抗する。


「さぁ——ゲームを始めよう!!」



 これは愛する女のため……己が欲のために。

 神からの慈悲を無視し、命を賭けたゲームに参加する


 大馬鹿者の物語である——!


 第一話 リンドウ・アカツキという男 完

 第二話 続

さぁ、大馬鹿者どもが動き出す―—!

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