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第一話 リンドウ・アカツキという男-13

 

 ゴーン——……リゴーン——……


 皇帝を始め、皇族たちが着席し、正午の鐘が鳴る。首都中に響き渡る鐘の音に大勢の目が大広場神殿に集まる。


 そして——その国民の想いに応えるように神殿の上空に突然、眩しい光の塊が現れた。多くの人がその眩しさを直視できずに目を閉じてしまう。漏れることなくキキョウとリンドウも目を閉じて光を遮るように手を翳すが、それでも繋いだ手は離さず、お互いに強く握りしめる。光が徐々に弱くなっていることを感じ取り、小さく開けながら数回瞬きをして再度神殿の上空を見上げ——そして、静寂を切り裂くような、あの大声がキキョウの鼓膜に伝わってきた。


「皆さんこんにちはぁああああ―!」


 あの夜、四角い光の中にいた青髪の子ども。前側につばのある帽子に手足の露出した見たことのない服装に身を纏い、踊るように神殿上空に現れ、あの時と同じように棒状のものを片手に持って、国中に届けとその口を大きく開ける。


「皆さんが見たかった神様! アオ様の登場だぜぇええええ!」


 神が六十二年振りにヒ・イズル帝国の地に降臨した瞬間だ。


 神の降臨に感動せずにはいられない。国中が歓喜の声を上げ、拍手とともに神の登場を出迎える。中には深々と神に頭を下げ続ける信仰深き者ものもいた。それほどまでに神はこの世界の人間たちに愛され、崇められている。


「いやぁ~愛されるって気持ちのいいぜ~。あ、ちなみに面白そうだから付けた(仮)だけど、言いづらいから今度からつけなくてオッケーで大丈夫だから! 気軽にアオって呼んでくれよな!」


 またもや、キラーンとなんか星が付きそう勢いで話す神——アオ。その姿は神としての厳を保つよりも、ここに集まる人間たち全員と友達になるんだ、とでもいうように気さくさに広場の人々に手を振っていた。


「ってことで、どういうことで、つーことで! 神様皆さん世界中! が、ドキドキワクワクとお待ちかねの参加表明式をさっそく開催したいと思いまーす!」


 重要な儀式なのに展開の早い。その見た目の通りに子供らしく、面倒臭い工程など吹っ飛ばして、世界中が待っているドキドキワクワクに早く取り掛かりたいのだろう。途中、耳に手を当てて「いいじゃん! 楽しいことはすぐやろうよ!」と何かに話しかけている姿が見られるが、神のやることなど所詮人間ごときにはわかりはしないのだ。


「あーもー、うるさい! 文句がある司会やればよかったじゃん! 司会者の権利で俺がやりたいのでやりまーす! んじゃま、今回ゲーム参加候補者に選ばれた勇者たち百五十名たちよ! 俺の前に出てきな!」


 そう言って蒼がパチンッ!、と指を一回鳴らし、六十二年間眠っていた祭壇の前に集まるように呼び掛けた。


「ここから先は候補者だけの入場になります。足元に気を付けて、決められた道をお歩きください」


 先ほど入り口で話しかけてきた軍人が祭壇までの道に立ち、待機場にいる人々に声をかける。候補者たちは同行者たちに一言二言伝えてから意気揚々と祭壇を目指して支持された道を歩みを進める。当たり前だ。この儀式さえ輝かしき未来が約束されている。重たげに足を動かす者などはいない。


 だが、重たげではないが他の者たちと違ってリンドウはすぐには足を動かさず、隣にいるキキョウをリン見つめた。


「リンドウ?」

「……」


 いつも重要な式典などで自分から離れる際は一度抱き締めるか、顔か手のどちらかに口づけをしてから離れるのがリンドウだった。けれど、いま、目の前にいるリンドウはそのような動作をしようとはしない。その代わり、しっかりと自分を目に焼き付けるように見つめて、繋いだ手を再度強く握った。


「行ってくる」


 そして、とうとう繋いだ手が解かれた。


(あっ……)


 寂しい。それはとても自分勝手の想いだ。だけど、口にしてはいけない。段々と離れていくリンドウの背中に手を伸ばしそうになり、必死にもう片方の手でその手を掴み御した。


(……これでいい)


 彼の栄光を邪魔してはいけない。そう思いながら今日着てきた自分のワンピースを見て、キキョウはため息をついた。


「もう少し、きちんとした格好でくればよかった……」


 予定になかった外出。待機場所まで人混みを歩くことになるため、動きやすさを重点に置いてワンピースを選んだ。ただ、リンドウ以外にも選ばれた貴族の参加候補者もいて、一時的にその者たちに配慮された交通整備もあったのだ。外出を予め決めていたのならば、例え、いまと同じようにリンドウからの贈り物を一切身に着けていなかったとしても、正装の彼に相応しい姿で隣に立てたはずだ。


(たられば、ね。すべて……)


 動くのが遅れたリンドウは最後尾となり、最後に整列した。


「ふぅうううう! 百五十なんて金じゃぁジュース一本分ぐらいだけど、人間だと大人数だねぇ!」


 宙を自由に飛び回り、自分の足元に並ぶ人間の数に関心の声を上げて、パチパチと拍手するアオ。神の降臨と六十二年振りに祭壇の前に並ぶ百五十名の参加者の姿は壮大で、専用席にいる記者たちのカメラを押す指の動きが止まらない。そんな記者の集団たちにアオはそれぞれ両手の人差し指と中指を立ててカメラに笑顔を向ける。


「さぁさぁさぁ! 皆さま静粛に! 運命のお時間です! 果たして百五十年振りに神様ゲームが開催されるのか!? それともまたまた開催することなく神々の残念がる声が空の向こうで広がるのか!?」


 くるり、と髪が乱れることもお構いなしに激しく一回転をしたアオは片手に握る棒状のものへその口を更に大きく開いた。


「神ゲーしたい人その手を上げてぇええ!」


(これでいい)


 この儀式が終わったら——誇らしいリンドウの姿を最後まで見届けたら、彼が自分の元に戻ってくる前にこの場を去ろう。黙って帰れば怒られるだろうが、これ以上この場にいては自分を律することが難しくなってしまう。この儀式が自分とリンドウとの分かれ道にしようと、キキョウは涙が流れないように、溢れないようにと強く目を瞑り、深呼吸を一つ。


 大丈夫。私は強い人——、と。


 心の中で呟き、再びその目を開いた。


「……えっ?」


 天に届くように、真っ直ぐに伸ばされた手。


 参加候補者が大勢並んでいる最前列。

 見間違うはずのない赤い髪。力強さを感じる名前と同じ色の瞳。

 そして、いつもそばで聞いていたあの声で。


「その神ゲー、参加します」


イントネーションは「〇〇する人この指とまれ」です。

※第一話のみ、2026/01/02の11:00 から10分おきに続きが更新されます。

※どうぞ続きをよろしくお願いします。

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