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第七話 初めてのダンジョンとドロップ品

 週末の休み、池袋ダンジョンまで来ると、入場待ちの列はダンジョンのある公園をぐるりと囲む形で入場2時間待ちだと言われた。

 まあ休日だしね、仕方ないか。

 スマホのバッテリー持ってきておいてよかった。

 ソシャゲで暇つぶしをしながら入場待ちをしていると、やっと入場の順番が来た。

 入口に設置されている空港のゲートのようなところを登録カードをかざして通ると、目の前には真っ黒い穴があった。空中に浮かんでいるようなその穴にゆっくりと足を踏み入れると、そこは都会の狭い公園のはずなのに、目の前にはひたすらに広い空間が広がっていた。

 所々がほんのりと明るくて、あちこちにある岩が光っているように見えるのはダンジョンの特性なんだろうか。

 先に進むのに足下が危なくはないのは助かる。

チュートリアルの時はもっと暗く見えたけど、場所によるのかな?

 念のため、と持ってきていたヘッドライトは荷物になってしまったが仕方ない。

 暗くはない、と公式の情報にはあったけれど、どれくらいの明るさがあるのかまでは調べてなかった私のミスだ。


「よし、行ってみよう」


 カバンからBB弾を装填したエアガンを出すと、ウインドウが目の前にシュン、と現れる。


 ――ジョブ、ガンナーを習得しました。


 ――

 日向さくら 32歳

 ジョブ 聖女(?)Lv1+ ガンナー Lv1

 スキル

 シール貼り+

 ストレージボックス

 聖魔法+ ヒール / 小回復魔法・ライト / 光魔法・プロテクト / 防護魔法・ディテクト / 感知魔法

 ガンナースキル 命中


 HP10/10

 MP100/100

 ATK70

 ――

 

 あ、ATKが増えてる。

 私は相棒のエアガンのガンちゃんを構えてフロア内を見回す。


「あ、いた」


 岩陰にもぞもぞ動いているスライム発見。

 ぷるぷるしてて、動きがちょっとかわいいな。

 大きなゼリーみたい。

 私はスライムに照準を合わせて引き金を引いた。


 ぱんっ!


 乾いた音とともにはじき出されたBB弾が寸分たがわずスライムに当たり、弾けた。

 そしてそこには……。


 「これドロップ品かな。モンスターを倒すとたまに落とすっていう、あれだよね」


 スライムがはじけた跡には小さな小瓶が落ちていた。


「一発目からドロップ品出るなんてラッキー」


 それを拾った時、またウインドウが私の前に現れた。


 ――スキル、鑑定、ドロップ率アップが付与されました。


 え、なんかふえた?


 ――

 日向さくら 32歳

 ジョブ 聖女(?)Lv1+ ガンナー Lv1

 スキル

 シール貼り+

 ストレージボックス

 聖魔法+ ヒール / 小回復魔法・ライト / 光魔法・プロテクト / 防護魔法・ディテクト / 感知魔法

 ガンナースキル 命中

 鑑定 Lv1(上限Lv10)

 ドロップ率 Lv1 5%UP(上限Lv5 25%UPまで)


 HP10/10

 MP100/100

 ATK70

 ――


 鑑定ってことは、持ってるものが判別できる?

 私は手の中にある小瓶に向かって「鑑定」と呟いた。するとウインドウに


 ―― 青スライムドロップ品 回復ポーション低級


 と文字が出た。


 記念すべき初ドロップ品だ。

そういえば、公式の情報では、スライムからドロップした回復ポーションは飲んでも毒性もないし、人間の体には無害だって書いてあったな。少しの傷や痛みくらいなら低級で十分だって研究結果も出てるって。

 小瓶をカバンにしまい、私はさらに奥へ歩みを進めた。

 広すぎるフロアのおかげか、他の探索者の人たちの姿は遠い。

 「マジでどんだけ広いのよ、ここ……」

 一歩ごとに、スライムのぬるっとした気配がそこかしこにある気がして、思わず周囲を何度も見回した。


「……あれ?」


 次の岩の角を曲がった瞬間、私は思わず足を止めた。

 岩陰のあちこちで、もぞっ、もぞっ、とスライムがいっせいに揺れている。

 それらが目の前にゆらゆら揺れながら現れた。


「え、ちょっと、多くない?」


 数にして6……いや10?

 スライムって単体なら大きめの可愛いゼリーだけど、群れるとちょっと怖い。

 しかもこっちにぷるぷる高速移動で迫ってきてるし!


 ……落ち着け私。撃てば倒せる。撃てるけど……10匹全部を一気に狙える自信はない。


 焦りで手が汗ばんだその時、ふと思い出した。


(……そうだ。シール貼り……!)


 私はカバンの外ポケットから、ポーチを出して、空白のおなまえシールを一枚引っ張り出した。

 そして震える手で素早く床にペタッと貼り、ペンを走らせる。


「えっと……『結界』っと!」


 書いた瞬間、シールがふわりと青白く光った。

 次の瞬間、私にとびかかろうとしていた先頭のスライムが飛び上がった場所で静止した。


 ぴたっ。


 本当に静止した。

 スライムの体が空中で揺れを止めるなんてあり得ないはずなのに、まるで時間が止まったみたいだ。


「え、本当に止まった……!」


 後ろのスライムたちは止まった仲間にぶつかり、ぺちょ、ぺちょっと空中で重なり合って足止め状態に。

 結界が私の前に壁を作り、スライムたちはこれ以上私に近寄れないどころか、まとまって固まったので良い的だ。


(今しかない!)


 私はエアガンを構えて、一匹ずつ丁寧に狙って撃った。

 百発百中のシール効果と命中スキルがなくても目の前の止まったスライムなんていい的だ。

 BB弾は寸分違わずスライムの中心を撃ち抜いていく。


 ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ。


 スライムが次々と弾け飛び、ドロップ品がいくつか床に散らばった頃、私はようやく息をついた。


「……めっちゃすごい、シール貼り……!」


 床を見るとシールは消えていた。

 やっぱり使用すると消えちゃうってことでいいのかな?

 どうやら効果は一度だけらしいけど、十分すぎるほど役立った。

 でもエアガンを鑑定してみると、百発百中のガンちゃんって出るから、こっちは使っても効果が消えることはないらしい。効果が固定されたってことかな?

 なるほど。

 これは色々試して検証が必要だ……。


「うん、思った以上にすごいな、シール貼り」


 私は思わずシールのストック数を数え直しながら、再びダンジョンの奥へと歩き出した。


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