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第六十六話 嵐の前の女子会

 凪に「ダンジョンへのアタックについて相談したい」とメッセージを送ると「じゃあ晩飯喰いながらみんなで相談するか」と返ってきた。

「ちょっと肌寒いし、鍋とかどうかな。うちで!」

 と提案すると、それならのんびりできるしお酒も飲めるしいいな、となった。

 蒼樹さんに連絡をすると、土曜日ならいい、ということで、由衣と金曜日に買い物に行くことになったので、全員分の鍋の好みの希望を聞く。

 凪は肉、由衣は海鮮、蒼樹さんはがっつり系なら何でもいいってことだった。

 ……何でもいいって一番困るやつ。なので、ここは私の好みも混ぜようと思う。

 蒼樹さんも来るなら、クッション足りないな……。

 それにテーブルも狭すぎるよね?クローゼットに予備のテーブルあったはずだから出さなきゃ。

 

 探索者と言う副業を始めて一ついいことは、エンゲル係数が爆上がり状態でもそれを十分にペイできる稼ぎになっていることだ。

 まあそれくらいないと本当に食費が倍では済まないレベルなので困る。

 

 金曜日の仕事帰りに由衣とうちの近所のスーパーに行って鍋の材料を仕入れる。肉、魚、野菜、きのこ、豆腐、オーソドックスだけど美味しいよね。鍋は二種類にすることにして、寄せ鍋と、私の好みでトマト鍋。トマト鍋なので、私の好みのソーセージもしっかり買っておく。

 あとはお酒とおつまみ。

 かなり荷物は重くなったけど、ストレージバッグ(ストレージボックスに繋げてる)持ちなのでそこは問題なく。

「由衣、今日は泊まってくでしょ?」

 明日は休みだし、由衣のお泊りグッズ一式はまだちゃんとうちにある。

「うん、そのつもり」

「じゃあ今夜は一緒に観ようって言ってた映画見ようか」

「うん」


 由衣との女子会も久々でとても楽しい夜だった。

 鍋は明日ってことで、今夜は宅配ピザを食べながら見たかったサメ映画を観て、きゃーきゃー言いながらお酒を飲む大人女子2人。

 また由衣とこんなふうに過ごせる日が来たことがどれだけ嬉しいか。


「で?由衣はお兄ちゃんとどうなの?」

 酔ってる、私完全に酔ってる。

 明日休みだし、って思って飲みすぎた。

「遥さんと?うーんと……もう言ってもいいかなぁ」

「言っちゃえ言っちゃえ」

「うん、言っちゃう。私、遥さんとお付き合いしてまーす」

「……そっか。よかったね」

 胸の奥が少しだけ、くすぐったい。

 羨ましいとか、そういうのじゃないはずなのに。

 ていうか、お兄ちゃんのくせに、こんな美人射止めるとかどういうこと!?

「でも私のバディはさくらだけだよー」

 ぎゅう、と抱き着いてきた由衣を受け止める。

「うん、私のバディも由衣だけだよー」

 ぎゅうぎゅうとしばらくバディ愛を確かめ合って、サメ映画第二弾を見ながらきゃあきゃあ言いながらアイスを食べる。

 そんな楽しい夜を過ごした。



 少し遅めに目覚めた。

 鍋の約束は夜。まだ時間があったので、由衣の希望で池袋ギルドに行くことになった。

 何か購買で買いたいものがあるらしい。

 久しぶりに来る池袋ギルドは休日だからか人が多くてちょっと動きづらかった。

 探索者の人数は増えてるって統計が出てるので、この中にはきっと最近探索者を始めた人もいるんだろうなぁ。

 最近は、以前より副業を認める会社も増えてきたってことなので、そんな人も多くなってきているのだろう。

「あ、あった」

 由衣が購買コーナーで手に取ったのはお兄ちゃんの友達のクラフターの人がアイテム化した投網だった。

「これが欲しかったの」

「これ無事に商品化したんだね」

「うん、だから自分用のが欲しくて。……これから池袋に行くならあったほうがいいかなって思ったの」

 その声は落ち着いていて、由衣の心が安定してきていることが分かった。

「……由衣のジョブには合ってると思うしいいと思うよ」

「うん、ありがとう。じゃあちょっと買ってくる」

 ギルドのカードで支払いを終わらせた由衣と合流すると、雪城さんに見つかった。

「日向さん、佐伯さん、いらしてたんですね」

「ええ、ちょっと買い物に」

「お二人がいるならちょうどいい。少しお時間はありますか?」

 何だか少し張りつめたような感じだった。

 ああ、これは何か大事な話があるんだな、と私は心のどこかが引き締まるような気がした。

「由衣、いい?」

「……凪くんと蒼樹さんはいなくていいかな?」

「あの、雪城さん。前川と蒼樹の二人は今日いないんですが」

「そうですか。いえ、でもお二人でも良いです。池袋ダンジョンについてお話しておきたいことがありまして」

「……はあ」

「良いでしょうか?」

「……分かりました」


 そのまま、由衣と二人で以前も入った奥の応接間に案内されることになった。

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