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第四十七話 盗賊の目的

 これから一緒に夕飯行こうか、なんて蒼樹さんと話しながらダンジョンを出たところで、端末が震えた。

 表示された名前に、少しだけ背筋が伸びる。


「すみません、ちょっと電話が」

「気にせんでええで」


 電話に出ると、久しぶりの声が聞こえた。

『さくら、今どこ?』

「今、東京駅ダンジョン出たとこだけど」

『なら、今から俺と一緒に池袋ギルドに行ってくれないか?ちょっと確認したいことができた』

「確認?」

『ああ。電話じゃちょっと、な』

「分かった。じゃあ池袋ギルドに直行するよ。凪はどれくらいで着く?」

『急行に乗れば40分で池袋に着くから、一時間後に池袋ギルドでどうだ?』

「うん、分かった。それくらいで着くように向かうよ」

 電話を切って、蒼樹さんに向き直る。

「すみません、ちょっと用事ができて、ごはんご一緒できなくなりました」

「分かった、気にせんでええで。今日のドロップ品の仕訳はどうする?」

「今日のは特に欲しいのないから、蒼樹さんがどうぞ。それじゃあ失礼します」

「……相変わらず欲がないなぁ」

「ほしいものあったら言いますよ」

「分かった。ならありがたくもらっとくわ」


 そのまま、蒼樹さんと別れて、私は久しぶりに池袋ギルドへ向かった。

 しばらくフロアで待っていると、厳しい顔をした凪が入ってきた。


「凪」

 手を振ると、まっすぐこっちに来た。

「さくら、悪い、待たせたか?」

「ううん、大丈夫。それで?確認したいことって?」

「雪城さんと鷹宮さんには話をしてある。奥に来てくれって言われてるから行こう」

「……うん」

 凪のこわばった顔を見て、私は軽口も言えないで凪の後ろについていく。

 受付のお姉さんに案内されて、以前通された応接間のソファに座った。

 すでにそこには雪城さんと鷹宮さんが待っていた。

「お待たせしました」

「いえ。緊急で話したいことがあると聞いてはむしろこちらがお待たせするわけにはいきませんから」

 雪城さんが軽く頷き、先に口を開いた。

「では、早速本題に入りましょうか。前川さん、川越ダンジョンのギルドからあらましは聞いていますが、詳細をお願いします」

 

 詳細?

 川越のダンジョンで何かあったの?

 

 凪が一度、深く息を吸ってから言った。

「川越ダンジョンで会った探索者に聞いたんです。盗賊にジョブとスキルを全部奪われた、と。そのスキルの一つがマッピングでした。以前言いましたよね?奪われたスキルが被っているものはないって。でもこれはおかしい。今の被害状況ってどうなってるんですか?」

「それに関してですが、これが現在の被害状況です」

 鷹宮さんがタブレットを操作して画面を見せてくれた。

 Excelの表と円グラフの資料だった。

「佐伯さんのスキルとジョブが奪われた後、盗賊の動きは活発になりました。都内だけじゃない、都内周辺や地方のダンジョンでも被害が出るようになって、もっと言うなら、他の国でも盗賊被害が出るようになったんです。盗賊の目撃情報はローブを着た顔が分からない人物で、光の糸で縛られたあとにジョブとスキルが消えていた、と状況はすべて一致しています」


 海外でも……?


「これは今現在判明しているすべての被害です。マッピングスキルは、佐伯さんが被害に遭ってから、判明している限りで50件を超えています」

「50件……ですか」

「はい。他にも被っている被害は無数にあります。特に多い剣士ジョブとスキルは、外国と合わせると被害が1000件を超えてます」

「それは被害甚大だな……」

「その通りです。盗賊は神出鬼没で、どこに出るのかまったく把握できないままです。このままではますます被害が増えると私たちも懸念してます。探索者の人口減は、国家の損失なので。かといって、ジョブやスキルをなくした人に再度潜れとは決して言えない」

「でも、潜れば、再度ジョブやスキルを得られることがあるんですよね?俺が川越で会った探索者が、そうやってニ度目のジョブとスキルを得てました」

「ええ、ごくたまにそういったこともあるようですが、丸腰でダンジョンに再度入る恐怖を思うと、決して推奨はできないことです」

「わかります。川越で会った探索者も、相方と一緒だから潜れたって言ってました」

「一度探索者としての力を知ってしまったら、それをなくしたら恐怖心が先に立ってしまうのは仕方ないことです」


 雪城さんと鷹宮さんが言うことは分かる。


「それで、こちらとしてもいくつか仮説を立ててみました」

「仮説、ですか?」

「はい。盗賊の狙いについてです。奴らの狙いは、縦横無尽にジョブやスキルを盗むことは目くらましで、実は狙っているジョブやスキルがあるのでは、というのが現在最も有力視されている仮説です」

「その理由は?」

「理由はいくつかあります」


 雪城さんはそう前置きしてから、指を一本立てた。


「まず第一に、被害の“質”です。数だけを見れば剣士が突出していますが、これは人口比率を考えれば不自然ではない。問題は、特定のスキルが異常な頻度で含まれている点です」


 鷹宮さんが頷き、タブレットの画面を切り替える。


「マッピング、鑑定、高精度索敵、認識補助系、回復系。いずれも“戦闘力そのもの”より、”後衛”に特化したスキルです。剣士ジョブ持ちも後衛に使えるスキルはありますから」

「……前に出て戦う人たちじゃなくて、後方から全体を見たり守る探索者ってことですか?」


 思わず、口に出していた。


「ええ。その通りです、日向さん」


 雪城さんがこちらを見る。


「盗賊は、戦力を欲しているのではない。ダンジョンを理解するための目を集めている。もしくは、何かお目当てのジョブやスキルがあるのかもしれません。所謂ユニークジョブやスキルなどを狙って、とにかく手あたり次第、という可能性も考えてます」


 ユニークジョブにスキル……。

 私が持っているものもそうだ。

 

 右手の甲をぎゅう、と握る。


 もし、そうだったら、私のジョブとスキルは確実にターゲットだろう……。


 胃が冷えるような不安がこみあげてきていた。

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