第五話 チュートリアルって何!?
暗闇の中にふわりと浮かぶ光の粒。それらが一つの線になって収束し、私の目の前に半透明のウインドウが形づくられる。
《チュートリアルを開始します》
目の前にはさっきと同じ文字。私はどこにいるの?
「……ここ、どこ……?」
返事はない。しかし淡く輝くウインドウがするすると動き、別の画面が展開された。
《ステータスウインドウを開きます》
続いて、私の名前と簡単な項目が並んだ一覧が表示される。
――
日向さくら 32歳
聖女(?)+
スキル
シール貼り+
ストレージボックス
聖魔法+ ヒール / 小回復魔法・ライト / 光魔法・プロテクト / 防護魔法・ディテクト / 感知魔法
HP10/10
MP100/100
ATK50
――
聖女(?)と聖魔法とシール貼りの隣にある+ってなんだ?そこをタップしてみると、備考の文字が並んだ。
――
+がついているジョブ、スキルは非公開です。鑑定を行われても認識阻害されます。これはユニークスキルおよびジョブで、あなたしか使えません。同じスキル、ジョブは他人に発生しません。
――
いや丸投げかい!って聖魔法はまだ使用目的も使い方も何となくわかるけど、シール貼りで何をしろと!?
と、ふと私は自分の手にあるネイルシールを見た。手に持ったままだったのか……。
よくある100均で売ってるやつだ。でもすごく使いやすいのでよく買っている。
「……これも、シール……?よね」
物は試しだ。爪先で一枚花のネイルシールをはがすと、目の前の岩にぺたりと貼りつけてみた。
するとそこに花が咲いたではないか。しかも少し発光していて辺りをほんのり照らし出している。光の中に揺れる花の影が、ここに今自分がいることが現実なのだと教えてくれた。
ここは岩場だ。ただの岩場。でも直感的にここはあの空洞の中だとわかった。
「ええと……つまりシールを貼ることで実体になるスキルってこと?」
目の前で光る花は何も答えてくれないので、実験しようと更に何枚かのシールを手あたり次第に貼っていく。少し怖かったけど、好奇心が勝った。
貼った端から発光する花になっていくので、足下は危なくなくなった。
うん、シールが実体化する。これは確定だ。
――
――チュートリアルを終了します。
――
突然現れたウインドウにそんな文字が並び、私はまたぐらりとした眩暈に襲われ、そのままその感覚に身をゆだねた。
気づけば自分の部屋のソファにいた。
ただ、手に持っていたネイルシールから半分くらい花のシールがなくなっていたので、あれはシール貼りのスキルのためのチュートリアルだったのだろう。
てかチュートリアルって何よ、チュートリアルなら、もっとこう丁寧に説明が普通はあるもんじゃないの?これ以上は自分で考えて頑張れってこと?
誰が私にこんなスキル与えたのか知らないけど丸投げすぎだろ。
「……よし、明日の休みにギルド登録行ってみるか」
公式サイトを見てみると、一日で登録者数は50万人を超えていた。
そして、すでにダンジョンの掲示板もネットには乱立していて、登録前に情報収集のためにちょっと覗いてみることにした。
次回は少し骨休め回です。




