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第四十二話 当面の第一希望、ガンナーレベルを上げたい

 結局、その場でお互いにステータスを開示した結果、私の経験値はほぼ全部「聖女」に吸われていることが判明した。

 これは私にしか分からないことなので、これ以上魔法使いさんにジョブやスキルに疑念を持たれるのは避けたい。


「ええと……普段は上野に潜ってるって言ってましたよね?」

「え?ああ、うん」

「上野のダンジョンってどんなところですか?」


 実際、興味はある。

 私は池袋と東京駅と九十九里しか知らないから。


「上野駅の地下にダンジョンゲートが開いとる。5階層までの構成で、1~2階層が青と黄スライム。3~5階層がゴブリンで、亜種含むって感じで、環境は広いホールみたいな感じやな。スライムはめっちゃ湧くんやが、ゴブリンの湧きがここと一緒で単体湧きでな。イライラするわー、ってなってたらレベル15超えたくらいに強制顕現(魔物限定)ってスキルが生えてな。その使い方が分かってからはゴブリンを複数湧かせて火力で押し切るやり方を始めたんや。んで、その時にダンジョン金貨が1回ドロップしてな。ギルドに持っていったら、レアアイテムの中でもかなりいいアイテムだったみたいで、1枚500万っちゅーとんでも破格の買い取りを打診されたんや」

「それで上野を狩りつくしたからこっちに来たとか?」

「狩りつくしてへんわ!いや、まあ上野に飽きたのもあるけど、こっちは防炎機能ありの地下迷路のダンジョンって聞いて、せやったら目いっぱい火力ぶっ放せるなって思ったんや」

「なるほど、納得」

「何で納得するんや!」

「だって、今自分で言ったんでしょ、目いっぱい火力ぶっ放したかったって」

「まあせやけど……」


 苦笑いして肩をすくめる魔法使いさん。


「ちょっと考えたんやけど、どっかでたまってんのかもな、ガンナーさんの経験値」

「たまってる?」

「せや。貯金みたいなもんで、ある日いきなり、どばーっ!と出てくるかもしれへんぞ。せやったら、利子がついてりゃええけどなぁ」

 

 魔法使いさんは額を押さえつつ、どこか楽しそうに笑った。


「まあでも、ガンナーさん、腕はええしスキルも使えてるし、伸びしろはあると思うで」

「そう、ですか?」

「そ。俺みたいに火力一点より、ずっと堅実や。でも俺はこれからも火力のみでいくけどな」


 それから少しだけ狩りを続けて、アイテムのドロップが区切りがついたところで、今日はここまでにすることになった。


 ダンジョンの出口へ向かう通路は、さっきまでの戦闘が嘘みたいに静かだ。

 焚火の護符がポーチの中で、かすかに温かい気がする。


「結局、他はほんまにええんか?」

「はい。護符があれば十分です。野営の時に使えそうですし」

「ミスリル魔石も黄金リンゴもあるんやで?」

「うちの会社、副業で探索者やるのはいいんですけど、ダンジョンに潜るときは社員の安全管理のために申請が必要で。私、この10日間、会社に内緒で潜ってるので、バレたらまずいんですよ。実際、ここでドロップしたアイテム、私全部放置してます」


 そう答えると、魔法使いさんは少し目を丸くしたあと、ふっと息を吐いた。


「……欲がないなぁ」

「そう、ですか?」

「普通は全部放置はせえへんで?でも生き急いでない感じ、嫌いやない」

「あ、それなら、魔法使いさんがなくてもいい、ってものあったら、何か1つください。自分で使えそうなの」

「お、せやったらこれどうや?」


 魔法使いさんがデイパックから出してきたのは、歪んだ指輪だった。


「ゴブリンの指輪や。装備しておけばATKを+10してくれるんやて」

「へえ、いいんですか?」

「ああ、同じの持っとるし、レアでもないから売っても安いしな。+10でもあればここぞってときに役に立つかもしれへんやろ?」

「ですね。じゃあこれもらいます」


 出口の光が近づいてくる。

 ダンジョンを一歩出ると、現実の空気が肺に戻ってきた。


「今日はここで解散やな」

「はい。ありがとうございました」

「こちらこそ。ガンナーさんのスキルのおかげで、お目当ての金貨も2枚落ちたし、俺のほうがめちゃくちゃ世話になったし、儲かったわ。ほんまにありがとうな」

「いいえ。私のほうこそいろいろ勉強になりました」


 軽く手を振って、魔法使いさんはギルド本部の方へ消えていく。

 私はロッカーのある反対側へ歩き出し、ポーチの上から護符をそっと押さえた。


(これを使えば、ソロでも泊まりのアタックいけるかも)


 いや、ダメだ、それは時期尚早だ。まだ盗賊のことも何もわかっていない。

 雪城さんから定期的に報告は来るのだけど、由衣の被害の後、盗賊は何度か現れ、被害は拡大しているという。

 現れるダンジョンも特に決まりはないみたいで、都内周辺だけではなく地方にも現れているみたいで、ギルドとしてはどこのダンジョンを警戒すればいいのか見当がつかないらしい。


(今は私は当面ガンナーのレベルを上げる方法を考えよう……。聖女スキルはまだ使ったことないし、使い方は少しずつ検証しよう。ガンナースキルのレベルについては、帰ったらお兄ちゃんに相談してみようかな)


 ——欲張らなくていい。

 生きて帰れるなら、それで十分だ。


 そう思えるようになったのは、たぶん池袋のダンジョンを経て、無事に帰ることの重要性が身にしみたからだと思う。

 ……に、してもお腹すいた。

 家にはもう大した食材ないし、何か食べて帰ろうかな。

 東京駅の食堂街行くか。


 私はロッカーで着替えを済ませると、ごったがえす東京駅の食堂街へと向かった。

 あれだけおにぎりを食べても空腹は毎秒やってくる。

 がっつりラーメンを食べて少し夜遅くなったけれど、帰宅してお兄ちゃんに電話をかけることにした。

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