第四十一話 聖女スキルが伸びてました……予定外……
次に湧いたのはゴブリンが7体。アーマードゴブリンが2体。
魔法使いさんが文字通りヒャッハー!って感じで勢いよく火球を放つが、少し威力を落としている。
私は火球の中からあぶれた虫の息のゴブリン目掛けて弾を放つ、を繰り返していた。
とても効率がいい”狩り”だ。
ドロップもレアは20体に1回、くらいのペースで落ちてきてる。
通常のドロップも2回に1回のペースだ。
ミスリル魔石、黄金リンゴ、焚火の護符……どれもレアアイテムだと鑑定された。
「まとめて売り飛ばしたら結構な金額になりそうやが、ガンナーさん、なんかほしいのあるか?」
「……なら、焚火の護符が欲しいです。これを野営で使うと魔物が寄ってこないらしいので、泊まりのアタックの時にあれば良さそうだなって」
「ああ、ええ判断やな。護符は3つあるし、俺も一個もろとこ」
「泊りのアタックとかしてるんですか?」
「たまにな。ガンナーさんは?」
「……泊まり、はないです。一回やりかけたことはあるんですがトラブルでダメになって……」
思い出すのはあの池袋三階層での悪夢。
私たちはあの時、撤退することしか選べなかった。
「まあ泊まりはソロだと難しいとこもあるからなぁ……」
私をソロしかしたことがないガンナーだと思ってるんだろうな……。
「とりあえず、護符を一個ずつもろとこか。あとはギルドで売買しよ」
「はい」
「ところで、レベルアップの兆候あるか?」
「いえ……。4から全然上がらなくなりました。もう10日以上ここに潜ってるのに……」
「ほーん。あんなぁ、自分、ほんまにガンナーしかジョブないんか?」
「え?」
「いや、どっかの掲示板で見たんや。剣士とガンナーのWジョブの持ち主がおってな?なかなかガンナーのほうが上がらへん、って思って久々にステータスちゃんと見たら、剣士のほうに経験値が極振りされてたらしいで」
「そんなことあるんだ……」
「せやから自分もひょっとしたら気が付かないうちにもう一個ジョブ生えてるんちゃうかなって思ったんや」
「ちょっとステータス確認してみます……」
聖女は私以外には誰にも見えないステータスのはず……。
目の前にステータスを開示する。
――
日向さくら 32歳
ジョブ 聖女(?)Lv8+ ガンナー Lv4
スキル
シール貼り+
ストレージボックス(認識阻害)
聖魔法+ ヒール / 小回復魔法・ライト / 光魔法・プロテクト / 防護魔法・ディテクト / 感知魔法
ガンナースキル 命中・照準固定
鑑定 Lv3(上限Lv10)
ドロップ率 Lv3 15%UP(上限Lv5 25%UPまで)
HP100/100
MP150/150
ATK150
――
うわ、聖女レベルがいつの間にか上がってる。こっちに経験値が吸われてたってこと?
まって、予定外すぎる。
「ジョブはガンナーのみみたいやな」
魔法使いさんが私のステータス画面をのぞき込む。
「ほんなら俺のも見せんとフェアやないな」
魔法使いさんが指で空をなぞると、半透明のウィンドウが開いた。
「ほら、こんな感じや」
慣れた動作で、自分のステータスをこちらに向けてくる。
――
??? 27
ジョブ 魔法使いLv18
スキル
火球
魔力制御
範囲詠唱
魔力節約(常時)
ブースト
強制顕現(魔物限定)
HP200/200
MP300/300
ATK300
――
名前は見えない。これはどうしてだろう。
ああ、まだ私たち、お互いの自己紹介もしてなかったか。だから向こうも私の名前は見えていないみたいだ。
「しかし、自分、魔法スキルないのにMP多いなぁ。スキルで必要なんかな?」
「……そ、そうかもね。弾撃つ時に色々籠めてるから」
「……ま、そういうこともあるわな。に、しても、10日もここに潜っててレベルが4以上にならんのは、なんか理由がありそうやな」
うん、確実に聖女ジョブが理由です……。
でも聖女のジョブのスキル、つまり聖魔法があるから私のMPは少し多めなんだろうなってわかる。
あまり詮索されたくないので、話を変えることにした。ちょっと強引だけど。
「あ、あの!」
「ん?」
「おなか空いてない?」
唐突な私の言葉に、一瞬魔法使いさんが目を丸くしてから大笑いする。
「おー空いとる、空いとる。ダンジョンいると毎秒空腹や」
「だよね。おにぎりあるけど一緒に食べない?」
「ええな。ご相伴にあずかれるなら喜んで。確かここのセーフティエリアはあっちや」
魔法使いさんが先に立って、二つ向こうの通路に先導してくれた。通路の先に木造の扉があった。
「ここや」
ドアを開けて入ると、中は割と広いセーフティエリアで、何人かの探索者が休憩していた。
池袋みたいにブルーシートはないけど。
レジャーシート持っててよかった。
空いてる場所にレジャーシートを敷くと、斜めがけのカバンから、タッパーを出す。
以前、ストレージバッグを持っている人を見てからは、このかばんをストレージバッグに見せられるように使っていた。
使い方は簡単。
カバンに手を突っ込んだ時に私の意識をストレージボックスとつなげる。
そこからお目当てのものを出すだけだ。
「お、ストレージバッグか?」
「そうだよ。池袋の2階層の紫スライムからドロップしたの」
ということにしてる。
「池袋か……あそこスライムだけやろ?」
「うん。普段は私、あっちで探索者してたの」
「ほーそうか。俺は普段は上野がメインなんやが、ゴブリンが落とすっちゅーダンジョン金貨ってレアアイテムが欲しくて、こっちにも潜り始めたんや」
ダンジョン金貨?
「ほら、これや」
背中のデイパックから出して見せてくれたのは500円玉くらいの大きさの金貨だった。刻まれてる意匠は……何だろう、なんか見たことあるような……。
考えてみるけど思い出せない。
「これ、何に使えるの?」
「何に使えるかは分からんけど、これ、換金率が抜群にいいんや。レアアイテムの売り相場は100万やろ?でもこれは1枚500万なんや」
ご、ごひゃく……?
「今ならまだ非課税で売れるやろ?こいつをできるだけ多く手に入れて換金したいんや。あ、金が目当てなのあかんか?」
「ううん、何に探索者としての意味を見出すかは個人の自由だもの。私も、最初に手に入れた魔石が一万円で売れた時は、美味しいご飯食べに行くのに使ったし」
「話がわかるなぁ、ガンナーさん。俺な、自分の会社のために金を貯めたいんや」
「会社経営してるの?」
「まあちっちゃい会社やけどな」
「それが魔法使いさんにとって楽しい仕事ならいいんじゃないかな」
仕事が楽しい、ってのは大事だ。生活の根幹だし。
私も自分の仕事は割と好きだ。
残業は多いし大変なこともたくさんあるけど、楽しいことも多いから。
「あ、はい、どうぞ」
「お、ありがとう、頂くわ」
タッパーの蓋を開けて差し出すと魔法使いさんは遠慮なくおにぎりを手に取る。
「うま!」
「お腹空いてたら何でもおいしいよね」
「いや、ほんとにうまいって!塩むすび大好きなんや。それに中の梅干しもうまい」
「それ、私が漬けた梅干しなの。美味しいなら良かった」
こうして持ち込んだタッパーのおにぎりはあっという間に空になった。




