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第四十話 魔法使いとの連携

 2人で東京駅ダンジョンの通路を進んでいく。

 通路の向こう側にゴブリンが湧きそうだと、ドローンの偵察が教えてくれる。


「この先、ゴブリンが出ます」

「それ、ギルドで最近発売されたドローンやろ?」

「そうです。私、マッピングスキルないし、ソロでやるなら必要かなって」

「せやな。ダンジョンで迷子になって行き倒れとか笑えんしな。俺も買おうかなって思ったけど、自分の魔法に巻き込んで速攻でお陀仏にする未来しか見えんかった。せやから、偵察が終わったら、ドローンはちょい下げとき」


 ほんとにそれはあり得るから笑えない。

 私はドローンを自分の後ろまで下げた。

 

「ああ、そうや。先に俺のスキルを説明しておくわ」

「え?」

「俺はジョブは魔法使いなんやが、スキルがちょっと変わっててな」


 手にはめたグローブが青白く光ったかと思うと、前方にゴブリンが5体纏めて湧いた。

「え……?ここって単体湧きのダンジョンじゃ……」

「ほんとならそうやで」


 ニヤリと魔法使いさんが笑う。

 

「これが俺のスキルや。魔物が単体湧きのダンジョンで、複数湧きを念じたらこうやって湧くんや。元々複数湧きの魔物相手には使えないんやがな。ワインドウルフとか、シャドウキャットみたいな複数行動で攻撃してくる魔物、そういうのは増やせへん。いろんなダンジョンで、色々試してみて分かったことなんやが、な!よっと!」


 光ったグローブからすごい勢いで火球がゴブリンの群れに向かって放たれた。

 炎が空間をなめるようにゴブリンの群れに走っていく。

 魔法使いさんが放った火球がゴブリンたちのいる通路の奥で弾け、5体のゴブリンが一斉に悲鳴を上げた。


「よし、命中!」


 ガッツポーズで本当に楽しそうだ。ダンジョンや魔物が怖いとか微塵も思ってなさそう。

 この魔法使いさんは、自分で言っていた通り、火力で押し切る前提の立ち回りだ。


 焼け残ったゴブリンが、黒焦げの体を引きずるようにこちらへ向かってくる。

 もう崩れる寸前ぽいけど動いている以上殲滅すべき標的だ。

 

「……私がやります」


 私はリボルバーを構え、引き金を引いた。


 ――必中。


 撃ちだした青い光を帯びた魔弾が、魔法使いさんの火炎が残した熱の尾をなぞるように飛ぶ。


 次の瞬間。

 炎と魔弾が重なった。

 一直線にゴブリンへと向かっていった弾が当たった瞬間、ゴブリンの体表を覆っていた炎が、内側から一気に膨れ上がる。

 一気に薪が燃え上がるような爆発力。


「――なっ?」


 魔法使いさんが、思わず足を止める。


 ドンッ!!


 爆発音とともに、ゴブリンの姿が完全に掻き消えた。

 悲鳴も、断末魔もない。

 存在そのものが、きれいに消滅したような感覚。


 そのあと通路に転がったのは、魔石だけ……ではなかった。


 きらり、と光る手のひらくらいの石が1つ。


「……え?」


 魔法使いさんも、それに気づいたらしい。


「おいおい……今の、なんか普通の魔石以外にドロップしたんか?」


 私は恐る恐る近づいて、しゃがみ込む。

 落ちていたのは、淡い銀色の小さな魔石だった。


 鑑定スキルで鑑定する。


「……これ、ミスリル魔石です」

「は?」


 魔法使いさんが、肩越しに覗き込んでくる。


「ミスリル魔石ってレアドロップやん。この階層で?ゴブリンから?」

「……たぶん、さっきの」


 私は視線を上げて、彼を見る。


「魔法使いさんの攻撃と、私の弾……同時に当たったからじゃないかな。私、ドロップ率UPのスキルあるんです。そのおかげもあるかも」


 一瞬の沈黙。


 それから――


「……あー」

 魔法使いさんは、納得したように、そして心底楽しそうに笑った。

「なるほど。スキルの相乗効果で魔石とおまけが転がったってことか。おまけのほうがレアやがな」

 軽く頭を掻きながら、私のリボルバーを見る。

「おもろいな、そのリボルバー。魔法に反応する弾ってことやん。さっきの火力低いは撤回するわ。スキルを使いこなせる武器がダンジョンでは大事やからな。弾もやが、リボルバーにもスキル使ってるやろ?」

「ええ」


 弾、多めに作っておいて良かった……。

 

「……実際のドロップについては、検証してみないと分からないけど」

「ほな、検証したらええやん」

 彼はそう言って、にやりと口角を上げた。

「ええなぁ。ガンナーはん」


 名前じゃない。

 でも、そこにははっきりとした評価があった。


「もう1回、やってみぃひん?」


 彼の指先に、再び火球が灯る。


「次は、少し火球の威力抑えるから、仕留めるのは任せるわ」


 挑戦的で、楽しげで、危うい提案。

 私はリボルバーを握り直し、小さく息を吸った。


「……じゃあ、魔法使いさん。巻き込まれても文句言わないでね」


「ははっ、さっきと同じセリフやな。言わへん言わへん」


 炎が揺れる。

 青い魔弾が、装填される。


 東京駅ダンジョンの通路で、即席の“連携”が、静かに始まろうとしていた。

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