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第三十八話 東京駅ダンジョン

 帰って、買ってきたチョコケーキを食べながらネット検索をする。

 

 ガンナー レベリング 最適

 

 で検索して出てきたのは、都内なら東京駅ダンジョンがイチオシとのことだった。

 東京駅ダンジョンのモンスターはゴブリンと、上位ゴブリンのアーマードゴブリンの二種類のみ。

 群れではなく、単体のみでの発生になるので、ソロ向きで尚且つダンジョンが地下通路のように一直線なので、遠距離攻撃向きだということ。念のため、近距離攻撃もできればなお良しとのことみたいだ。

 

 ソロで行くなら、シールスキルを存分に使えるのでは?と思い、何をしようか考える。

 ふと、お兄ちゃんが言っていた「魔弾」と言う言葉を思い出した。

 私はクラフターじゃないけど、シールを使えば魔弾を作れるのでは?

 と思いつき、弾に貼れるサイズに切った小さなシールに「必中」と書いたものを貼ってみると、青い光を帯びた弾が出来上がった。鑑定してみると「魔弾・必中効果あり」と出てきた。

 よし、これを東京駅ダンジョンで使ってみよう。


 リボルバー用に弾を量産すると、装填しやすいようにダンジョン用のベストのポケットに入れておく。

 久しぶりのソロで、少し緊張してる。

 由衣と組んでからは、由衣としかダンジョンアタックしてなかったからなぁ……。凪とパーティになってからは一回しかダンジョンには行ってないし。

 由衣ともそんなに回数をこなしたわけじゃないけど、すごくやりやすくて、会社で仕事をしてる時とは違う由衣の姿に、良い友達ができた、とひそかに嬉しく思っていた。大人になると、なかなか仲の良い友達って難しいもんね……。


 月曜日、会社で由衣に会うことはなかった。

 元々所属してる課も違うし、フロアも違う。

 それでもやっぱり出勤してるか気になってこっそり見にいったら、ちゃんとデスクにいたので、会社に来ることはできたんだ、と少し安心した。



 仕事は定時で上がることはできなくて、30分だけ残業して、通勤バッグを手に、いつもは使わない丸の内線に乗って東京駅へ向かう。

 東京駅ダンジョン専用のギルドのロッカーを借りて着替えると、装備を整えて、探索者カードを首から下げる。

 深呼吸をひとつ。


「……行こう」


 東京駅ダンジョンの入口は、丸の内線に近い地下通路の一角にある。

 観光客と通勤客の流れのすぐ横で、非日常への扉が口を開けているのが、不思議だった。


 初めて入るダンジョン……。緊張する……。


 探索者カードを入口ゲートにかざすとダンジョンに入る。


 ダンジョンゲートをくぐった瞬間、空気が変わる。


 湿った石の匂い。

 足音がやけに反響する、一直線の石畳の地下通路。


「……静かだ」


 あまり探索者はいないのかな?

 耳を澄ませてみれば、遠くから戦闘しているような音が響いてくる。


 このダンジョンはとにかく石の通路でできていて迷路のように広い、とのことだった。

 池袋の岩がたくさんある階層と森の階層しか知らない私には新鮮だ。


 情報通りなら、ここは単体湧き。

 警戒しつつ、リボルバーを構えたまま進む。


 数十メートル歩いたところで――甲高い声が響いた。


「ギィ……!」


 少し先の通路の陰から現れたのはゴブリン。

 手に持つ武器は錆びた短剣一本。距離は十分。


 私は迷わず引き金を引いた。


 ――パンッ。


 必中のシールを貼った弾は、軌道をわずかに歪めるように飛び、ゴブリンの額を正確に撃ち抜いた。


「ギィヤアアアアアアア……!」


 悲鳴を挙げて、赤い粒子になって、ゴブリンは消える。


「……当たった」


 思わず小さく呟く。

 狙いをつける暇すらいらない。命中スキルも発動させる必要がない。

 弾そのものが当たるようになってるのが手ごたえで分かる。

 “当てる”という行為そのものが保証されている感覚。


 これは……強い。

 やっぱりこれ、かなりのチートスキルじゃない?


 少し進むと、今度は体格のいい個体が現れた。

 さび付いた剣を手に、鎧を着込んだ――アーマードゴブリン。

 でも、鎧とはいっても、つぎはぎっぽくて、隙間がある。


「……狙うなら……首元かな」


 距離を取り、一発。


 ――パンッ。


 弾は鎧の隙間を縫うようにして、喉元へ吸い込まれる。

 アーマードゴブリンは一瞬よろめき、そのまま光の粒子になって崩れ落ちた。

 さび付いた剣が一本のナイフに変わる。あれがドロップ品か。

 拾い上げて鑑定してみると「ポイズンナイフ」と書いてあった。これはあとでギルドの売買に持っていこう、とストレージに入れる。

 

「……よし」


 ソロでもいける。

 怖くないわけじゃないけど――進める。

 ここでレベル5になるまで頑張ろう。

 きっと今頃凪も頑張ってる。


(由衣……)


 今はまだ、戻ってこられなくてもいい。

 でもいつか戻ってきてくれたら、胸を張って言いたい。


 「私たち、ちゃんと強くなったよ」って。


 リボルバーの弾を補充し、私はさらに通路の奥へと歩き出した。

 

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