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第十六話 なんかすごいのドロップしてた

「じゃあ今日は一旦出て、ギルドに行ってパーティ申請するか!」


 立ち上がろうとして、ふと私はここでやろうと思っていたことを思い出す。


「あ、待って。帰る前にここで今日のドロップ品の整理したいんだけど……。ギルドの待合室でドロップ品広げるの禁止だし……」

「分かった。で、ドロップ品は?」

「ここだよ」

 私がイメージすると、ストレージボックスから二階層でドロップしたあれこれがブルーシートの上に乱雑に落ちる。割と多めに見えるのは嵩張るものがあるからだ。

「うわ、すげえな……。二人でどれくらいやったんだ?」

「うーんスライム200匹くらい?」

「の、割にドロップ率すごくないか?」

「ああ、私、ドロップ率UP5%のスキルもあるから、普通よりドロップ率いいんだよ」

「ドロップ率UPまであるのかよ……。おまえ、チート過ぎんだろ……」


 そんなこと言われてもたぶんこれ、あの異世界召喚のせいだから。


「あ、これ中級回復ポーションじゃん」

 凪が端っこに転がった小さなフラスコみたいな形の小瓶を持ち上げる。

 淡い桃色の液体が入っていた。

「これ、3階層以降は絶対あったほうがいいから、買取に出さないほうがいいぞ」

「分かった、そうする。より分けておこうか」

 中級回復ポーションは10個あったので全部より分けておく。あとは低級回復ポーションとあれこれ魔石と、初めてドロップした小さなポーチみたいなものだった。ファスナーとかはなくて、ボタンで留められているだけだ。

 開いても中には何もなくて、ただのポーチというか赤い革の袋。


「さくら、これだけ鑑定してみてよ。今、公式見たけど、これ情報にないわ」


 由衣がスマホで写真を撮って確認してくれたけど、この赤い革のポーチのことは何も分からなかったらしい。


「分かった。――鑑定」


 ポーチを掌に載せると、パッと目の前に文字が浮かんだ。


 ――

 空間ポーチ

 ストレージボックスと同じく収納空間になっている。

 収納容量は30キロまで可能。収納は生物は不可。

 0.00001%の確率で赤スライムからドロップする。

 ――


「……これ、ストレージボックスのポーチ版だよ」


 私の鑑定に、由衣も凪も絶句する。


「こんなの落ちるのか、マジか……」

「えと……私たちいらないから、凪くん使う?」

 由衣の言葉に、私もコクコクと頷いたけど、凪は首を横に振る。

「いや……それは二人のものだし、俺もこれからは二人と行くんだから、必要ないしな……。ギルドに戻って買取でいいんじゃねえか?」

「……でも、これ、相当レアだよ?」

 由衣がぽすんとポーチをブルーシートの上に置く。

 見た目は赤い革のポーチにしか見えないんだけどな……。

「だって確率、0.00001%だよ……?スライム200匹じゃ普通出ないって。さくらのドロップ率UPのおかげだと思うし」

「だよなぁ……さくら、おまえマジでどんだけチートなんだよ」


 凪が半ば呆れつつ笑った。

 なんかまだ内緒にしてることがあるのが申しわけなくなってくる……。

 でもまだこれは言えない。


「でも、ほんとにいらないの?ストレージボックスは私が持ってるけど、凪もあったら便利だと思うよ?」

「いや、マジで。二人の手柄だし、そのまま換金してダンジョン攻略の資金にしろ。三階層以降は消耗品いくらあっても足りねぇからな。スキルとジョブに消耗品の組み合わせが大事になってくる」


 凪がさらっと言うその言葉が、なんだか頼もしくて。

 私はちらっと由衣を見る。由衣も同じ気持ちらしく、肩をすくめて小さく笑った。


「じゃあ……ありがたく買取に出すね」

「それがいい。俺も買取額どれくらいか気になるし」

「でも……なんか、今日だけでいろいろ起きすぎてるなぁ」

 私は苦笑しながら空間ポーチを軽く手のひらでぽん、と叩く。

「ほんとだよ。スキルの話に、ジョブの話に、こんなのまで落ちるとか……」

 由衣もぽつりと言葉を続ける。

「けど、悪いことじゃないだろ」

 凪は腕を組んだまま、私たち二人の顔を見る。

「三人で行くって決めた日に、こういう運が巡ってくるのは、悪くねぇ。幸先いいってやつだろ」


 その言葉に、胸がじんわり温かくなる。


「……うん」

「そうだね」


 ブルーシートの上。

 熱いコーヒーの香りと、ほんのり漂う甘いチョコの匂い。

 少し遠くから聞こえる、スライムを倒す音と、セーフティエリアにいる探索者たちの雑談。


 私たちは、それぞれ残りのコーヒーを飲み干した。


「よし、それじゃあ戻るか。ギルド行って、パーティ申請して、ついでに今日の成果を売ってこようぜ」

「うん!」

「了解~。三階層攻略、頑張ろうね!」


 私たち三人は片付けをし、二階層のセーフティエリアをあとにした。


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