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苦手な方はご注意ください。

モブリーナシリーズ

転生幼女のやらかしー軍神降臨

作者: ひよこ1号

ハーイ、私モブリーナ。

皇族に転生したモブでございます!

モブにしては地位が高いんですけどね!

ともかく、三歳になったばかりの私は、はしゃいで駆けまわって柱にごっつんこ。

頭を打った拍子に、前世なるものを思い出してしまった。


おでこ、いってぇぇ!


ふぇ、と泣きそうになって、急にすんっと真顔になった私を、侍女達は蒼い顔で見つめた。

急に蘇った前世の記憶と、現状確認で忙しいの!

目を据わらせたまま、私は思い出した。

前世は名前すら思い出せないけど、平凡な女性だったように思う。

小説や漫画や映画、ゲームが好きな普通の女の子。

死んだ理由とかは分からない。

普通に老衰でお願いします。


モブリーナとしての、私と言えば。

人々の話を聞いて、総合的に考えると非常に恵まれてはいる。

けれど、ちょっと特殊。

何せ生母は、私の住まうお城には殆どいない。


情熱的な母、アイリーナは旅から旅への踊り子なのだ。

艶やかな黒い髪に、蠱惑的な桃色の瞳。

或る夜開かれたパーティーで、いたく皇帝陛下は気に入ってしまった。

一目で、恋に落ちたのだ。

それは初めてのことと言っていい。

既に皇帝には皇后という生涯の伴侶と、幾人もの皇妃と側妾がいた。

自国の高位令嬢だった皇后と、周辺諸国から捧げられた元王女の皇妃。

政略だったり、戦利品だったり。

勿論、それなりに好意は芽生えていただろうし、それぞれに子供も儲けている。

けれど、心の底から欲したのはアイリーナただ一人。

皇帝として生きて来た父は欲しいものは全て手に入ると思っていた。

なのに、アイリーナは首を縦に振らない。

貢ぎ物をしようと、脅そうと、愛を乞おうとも。


アイリーナは自分の暮らしをこよなく愛していた。

自由に旅をして、自由に恋をする。

何よりも舞踏ダンスをこの上なく愛していたのだ。

だから後宮に留まる気はさらさらない。

死んでも嫌だ、と。


もうほんと、どっちもどっち。

皇后は話をまとめるのに苦労しただろう。

見かねた皇后が間に入って、双方を説得して妥協点を見つけた。

何せ、政務も滞りかけるほどに、憔悴する皇帝を初めて見たから。


一年だけ、お側に召す。

子が出来たら子が生まれるまで。

ただし、生むのは一人のみ。

護衛は付けるが、今までの様に旅をして舞踏ダンスをするのは邪魔をしない。

その代わり、他の異性に恋をする事は禁じる。

何だかこう、双方痛み分け、みたいな感じ。


皇帝はアイリーナの愛と子と蜜月を手に入れる。

その代わり、彼女の自由までは奪えない。

アイリーナは旅と舞踏ダンスを続けられる。

その代わり、異性とは没交渉。


そんな我儘両親の娘として生を受けた私、モブリーナ。

教育を任されたのは皇后陛下である。

と言っても、今は乳母と侍女の世話になってるけどね。

きっちりアイリーナの色を纏って生まれた私を、皇帝は溺愛している。

第十五皇女、モブリーナは末っ子にして、最後の皇位継承者であった。


「おお、私の可愛い大麦糖ちゃん……む?何だこの額の赤さと膨らみは……!まさか何処かに頭をぶつけたのか!貴様らは何をしておった!」

「ヒッ、も、申し訳ありません」


父は、上機嫌な恵比須顔から、急に鬼に変化する。

いやいや、感情の起伏激し過ぎ。

考え込んでいた私も流石に気が付いた。

このままじゃ処刑とか言い出すぞ。


「だめ!おとちゃま!」


「……んなんっっ!なんて!何という愛らしさだッッ」


慌てて丁寧に呼ぼうとして噛んでしまった。

幼児語は流石に痛い。

ほめないで……はずかしい……!

けれど、父の褒め殺しは止まらない、


「それに至らぬ乳母と侍女を庇うなど、慈悲深いにも程があるぞ……」


勝手に感動まで始めた。

まあいいか、とりあえず乳母と侍女は命を繋いだ。

彼女達も父の言動にこくこくと頷いている。


「だっこ」


両手を広げて手を挙げれば、父は脂下がった顔で私を軽々と抱き上げた。


「仰せのままに、姫君よ。ああ、何と可愛らしいのだ。見てみよ、この桃色の神秘的な瞳を」


多分もうそれ、1万回くらい言ってる。

周囲も笑顔で相槌を打ってるけど、いい加減飽きてるんじゃないかな?

権力者に、ほら、可愛いだろと言われる苦痛。

可愛いの押し売りです。

もう結構です。

でもまあ、三歳という年齢だから、ある程度の傍若無人は許される。

それに、父は皇帝とはいうものの、まだ若い。

三十代前半のイケオジである。

乗り物としては悪くない。

私はとりあえず、指をさしてあちこち歩かせた。

一人で行動できる範囲は限られているから、外の部屋が見たかったのだ。

皇帝だから入れない部屋など無い。

連れ歩きながら、娘自慢を繰り返す。

揺らされる良い心地に、段々瞼が重くなってきた。

残念……ここまでか。

赤子の体力……少ない!


やっぱりさ、転生したからには楽しみたいんだけど、まずは基礎固めだよね!

貴族名鑑とか見たい。

だから、図書室へと行かなくてはならない、んだけど。

図書室だとね、膨大な量の本があるし、ピンポイントでこれ!と貴族名鑑を欲するのは難しい。

だから、すぐ上のお姉様の部屋へ訪問する事にした。

お庭に散歩に連れ出される時に通りかかる部屋に、十四皇女のヨゼフィーネ。

茶色の髪に灰色の瞳の、物静かな姫君だ。

母親は十番目の側妾で、ユッタ様という。

年齢はもう五歳になっているので、皇女教育が始まっている筈だ。

私が扉を指させば、心得た様に侍女が先に訪問を告げ、部屋に通される。


「まあ……どうしたのですか?」

「モブリーナ様が、こちらにいらしたいと仰いまして」

「ねえさま」


にこっと微笑めば、ヨゼフィーネは嬉しそうに微笑み返した。


「ちょうど休憩ですの。一緒にお茶をいたしましょう」

「はい」


返事をすれば床に下ろされて、私はとことこと部屋の中を物色する。

勉強机を見上げれば、分厚い本がいくつも並んでいる。

基本的な文章は読めるから、貴族名鑑もすぐにみつかった。

椅子の上によいしょと登って、貴族名鑑をめくる。


「あら、お勉強するの?モブリーナ」

「うん!」


元気よく返事をすれば、ヨゼフィーネは思案顔。


「絵姿があるから気に入ったのかしら?ニナ、これと同じものをモブリーナのお部屋にも持って行ってあげて頂戴」

「畏まりました」


さすがお姉様!分かってる!


「ねえさま、ありがとう」


椅子から降りて抱きつけば、ヨゼフィーネは嬉しそうに笑った。


「お礼が言えるなんて、良い子ね、モブリーナ」


頭をなでなでと撫でられて、甘いお菓子を食べ、満腹になったら力尽きた。



それからというもの、私は貴族名鑑を見るのが趣味になった。

帝国のを読み終わったら、他の国、と読んでいく内に幾つもひっかかる地名や貴族の名前が出てきたのである。


お、お、乙女ゲー!!

乙女ゲームとは、自称乙女達が嗜む、恋愛シミュレーションゲームである。

アドベンチャーゲームだったりRPG要素もあったりするけど、大抵は攻略対象と言われるイケメン達の好感度を上げるのがポイントだ。

そして、その乙女ゲーを前提にした創作物もまた、無数にあったのが前世の世界である。


生で、見れるかもしれない!

こうしちゃいられない。


私は超スピードで努力を始めた。

幼児の振りなんてしてられるかー!

体力作りと、言語習得、大好きな貴族名鑑。

とりあえず三つを極める事にしてみた。



そしてある日、私は侍女と乳母を連れてとことこと王城の中を探索していた。

体力がついてきたから活動範囲も広がっている。

自由に歩き回りたいと駄々をこね、渋々皇帝ちちは了承した。

外部の人間が立ち入らない時なら、と。

謁見は昼頃までで午後は執務が多いみたい。

でもその日は一日丸ごと。

意気揚々と歩いていたら、物々しい警備が扉の前に立っている部屋がある。

何だろう?

気になる。

とことことことこ。

早足で近づいて行くと、鎧を着た騎士は槍を持ったままどうしたものかと顔を見合わせている。


「あけなさい」

「は、ですが…」


私の命令に、鎧騎士が戸惑うように声を上げるが、侍女が言った。


「モブリーナ皇女殿下はどの部屋にも入って良いと陛下から許可を戴いております」

「では……」


困った様に開かれた扉の向こうには、とても綺麗な部屋があった。

何人もの偉そうな人間と皇帝が床を見ている。

艶々に磨き抜かれた床には大きな地図が描かれていた。


「おお、モブリーナや、我が愛しのマシュマロ」

「お父様、この地図はなあに?」

「これはな、これから始まる戦の地図であるぞ」


え?戦争があるの?

にしては、あまり緊迫感なくない??


「皆様で、戦ごっこをして遊んでいるの?」

「おやおや、これは手厳しい」


笑ったのはハイトマン公爵だ。

だが、仏頂面をした者や目を怒らせる者達もいる。


「戦に勝つと何が貰えるの?」

「そうさな。外交で有利な条件で税金をかけられたり、良いものが安く買えたりするぞ」

「ふうん、それだけ?」

「強いのだという事を、周囲の国に示せる」


うーん。

私は地図の上を見る。

周囲を山に囲まれた広い盆地。

平原で両者が相まみえるのだろう。


「この戦でもう決着はつくの?」

「いいや?決着がつかないから、来年も同じ時期に戦う」


?????!

それは多分、全力でぶつかれば双方共倒れになってしまうと手加減を覚え、形骸化していったのだ。

捕虜となり、保釈金で解放されるという。あれだ。


「では、やはり戦ごっこだわ」

「皇女殿下は、命を軽んじておられるようですな」


耐えきれないと言うように、目を怒らせていたヘンベル侯爵が床を杖でどんと突いた。


「くだらない戦の為に命を消費する方が馬鹿にしているのではないか?」


思わず、言ってしまった。

ぎょっとしたようにヘンベル侯爵が固まる。


「外交なら外交で力を示せば良い。それが出来ぬのなら無能という事だ。戦でなくても国力を示す方法は幾らでもある。勝てぬ言い訳をしたいから、その様に世迷言をいい、無駄な戦を続けているのだろう」


「な、な、なんと、いう……!」


ヘンベル侯爵は何度もこの戦をしてきたのだろう。

でも勝ててないじゃん。


「相手を完膚なきまでに叩き伏せなければ勝利とは言わない。人命が大事ならば戦はすべきではないし、人命をかけるのであれば、徹底すべきである。国土を踏み躙られ、家族を殺されるのが嫌ならば命もかけよう。だが、くだらない力の見せ合いに人の命を使うな」


敬語はなし、もう丁寧にも喋ってられないし、幼児の振りもしてられない。


「其方達はこの戦に名誉や栄誉を覚えるのか?ならば前線に貴方達の子息を送るがいい。そして、その死を讃えるが良い。国の為によく死んだ、と。だが、その見返りは何だ?外交の尻拭いと対外的な示威行為だけか?」


「ぐっ……ぬ……」


ヘンベル侯爵は、ぐぬぐぬ言ってるけど、他の人達はぽかんとしている。

しまった。

頭にきて言い過ぎた。


どうしよう、逃げようかな。

ここまで引っ搔き回しといてなんだけど。


「軍神か?軍神が舞い降りたのか?」


皇帝陛下ちちうえが一番おかしい。

ぶっちぎりで優勝。


「だって、人が死ぬのは嫌です!一回で!おわらせてください!!」


軍神とか言われるのは嫌なので赤ちゃん返りする事にした。


「お、おぅ……」

「しかし、皇女殿下が仰る事も理解出来ます。毎年、戦をするのに出費もあり徴兵にて働き手を失う者達もおりますれば、この辺りで清算するのは如何かと」


きっちり軍服を着こんで厳しい顔で言ったのは、レーヴェンタール公爵だ。

隣では、マイシュベルガー辺境伯も頷いている。


「これでは戦ごっこと言われても仕方ありますまい。完全なる勝利などした事もないのですからな」


流れが私に傾き始めた所で、風見鶏な人達もうんうん、と頷く。

だが、ヘンベル侯爵は高圧的に、幼女である私を見て来た。


「そこまで仰るのですから、皇女殿下には立派な策がおありなんでしょうなぁ?」


このジジイまじか!?

我、三歳ぞ!?


「ありますけど、もし勝ったら、ヘンベル侯爵にはお馬さんをしてもらいます」


「なっ!?」


侯爵は仰け反って驚いた。


だが、同じように驚く人が居た。


「なっ!?それは罰ではなく褒美ではないか!父だってお馬さんになるぞ!?」


父は黙ってて。

私は父からぷい、と顔を背けた。


「三日、頂きます。地形を見て策を練ります。また、この策には準備がかかる可能性が高いので、来年以降に。本気の戦支度を相手にも求めてください」



三日間、私は一生懸命地誌を調べた。

勿論、私だけじゃなく専門の者達も呼んで、緻密な計算は任せる。

実際に使える策か否か、測ってもらうためだ。


「姫さま、これは、イケます!」

「皇女殿下……!」


十人くらいの専門家達に囲まれて、私は頷いた。


そして、軍議を迎える。

別室に皇后や皇妃、側妾、その子供達が全員勢揃いしているとは知らずに。


まずは専門家と地形を細かく入れて作り直した大きな地図を床に広げた。


「簡単に言うと、この盆地に水を引き入れるの」

「水、ですか?」


怪訝な顔をしたマイシュベルガー辺境伯に頷く。


「近くにある川の治水工事をまず、最初にする。ダナウ川、ドラン川、ケベス川。この三つは途中の農地で氾濫を起こす事もある川だから、途中に幾つかダムを築いて水を貯める。乾季には水を放出し、雨季には水を制限して貯める施設ね。これは戦の為であって、戦だけの為ではない。今後も民の為になるもの」


「ほう……」


流域に領地を持つヘンベル侯爵の目が輝いた。

災害で橋が流されたり、増水で家が流されたりと被害が甚大になる事もあるのだ。


「さらに、下流の盆地近くには水門を作り、水路を敷く。ダムを造る際に掘った土は土嚢にして上流からの川の堤防の補強と、盆地のこの二点の道を塞ぐために使う。カザレス帝国側の道は当日水が流れる直前にこの辺りの崖の上から土嚢を投げ落とすだけでいい。こちらは我が国に近いので、先に準備をしてもいい。我が国のあるこの道は砦を築く。あくまで補給のためと見せかけて、実際は水を塞ぐため。もしかしたらこの砦を見たカザレス帝国も同じように帝国側の道に砦を築いてくれるかもしれない。それが最上」


長い杖で、地図を指し示しながら言う。


「更に地形にも手を入れる。治水工事に使う土を平原からも持ちだす。気づかれないように敵国側の土を掘り下げて斜面にする。大きな差は無くていい。水が流れればそれで距離を進めばその差が出てくるから。ここは、直属部隊の土木兵に任せる。

各領地の治水工事には領地から人手を使い、王家からの補助金も出す。あとは、戦について」


私は地図の中央に歩を進める。


「最初は平原のど真ん中で陣を敷くと聞いたの。けれど、水が来たらこの丘の上の方まで戦いながら後退。前衛は重装歩兵でいいけれど、基本的には機動力を活かして軽鎧。ぬかるんだ場所でも戦えるよう、訓練を積ませて。丘でも正面は重装歩兵の密集隊形(ファランクス)という陣形で、武器は主に長槍を使う。疲れたら交代出来るように第二陣も用意する。その後ろには弓兵。近づいてくる敵は水で後ろに退く事も儘ならない。全て殺して」


最初は馬鹿にするようだった人達も、今は顔をちょっと引き攣らせながらも聞いているみたい。

一応ね、専門家も出来るって言ってたからね。


「敵は全て丘陵地帯へ向かうよう、両側の森の中には罠を仕掛ける。逃げ切った者は深追いしなくていい。罠にかかったら大変だから。捕虜の申し出があったら、受ける。但し、保釈金で解放ではない。我が国での労働奉仕を十年。カザレス国から働き手であり戦士も奪えば、もう二度と戦にはならないほど人は減らせる」


一気に言って、付け足した。


「専門家によってこの策は保証されている。あとは貴方達が実行するだけ」


まあ、半分以上は治水工事だけどね。

慈善事業でもある。


「モブリーナ………我が天才軍師よ」


また変な愛称が増えた。


「天才は各分野の専門家達です。わたくしは普通」


「うっ馬になりまする!」


ヘンベル侯爵が杖を持ったまま、四つん這いになった。

突然か。

しかも、涙を流している。

こわい。


「泣いているお馬には乗れません。かわいそう」


「いえ、良いのです。これは感涙、感激の涙でございますれば!私めが浅はかでございましたッッ!」


「あの、勝ってからでいいです」


だって落ち着いて貰えないと、ほら。

乗り心地悪そうだし。

そもそも、屈辱を与えたかっただけなのよ。

乗りたい訳じゃない。


「そうだな!まずは父のお馬に乗りなさい!」


横に父上も並んだ。

ここ軍議をする場所なのに、何やってんですか。


「いえ、いいです。あとは専門家とお話しになって」


乳母に手を伸ばせば、彼女が私を抱き上げる。


「皇女殿下はお昼寝の時間にございますので」


申し訳なさそうに会釈をすると、私を連れて乳母は急いで部屋へと帰った。



ここから先は、皇后陛下から聞いた話。


何故、別室に皇子と皇女とその母達が集められたか。

水面下では帝位争いが始まりかけていたのだという。

激化する前に、と皇帝である父が皆を集めて、軍議の場の私を見せたらしい。

余計な事をしたら、こいつがヤベェからなっていう話。


だから軍議が始まる前の雑談で、皇帝にならないか?とかヤらないかのノリで聞いて来たのか。


「皇帝にならないか?」

「なりません。お父様がやって」

「お父様が引退したらやるか?」

「お父様のお仕事をおしつけないで」

「もし駄目な奴が皇帝になったらどうする」

「民の為にならないなら、やめてもらいます」

「やめないって言ったら?」

「辞めざるを得ないようにします」

「物凄く悪い奴で、沢山人を殺したら?」

「殺す前に処します」

「そうか」

「そうです」

「じゃあその前にモブリーナの命を狙って来たら?」

「正当防衛として、先制攻撃は許されますか?」

「くぅ!お父様が護るッッ!」

「それならお任せします」


全部聞かれてた。

悪い事したら殺す、って言ってた。

何それ怖い。

でも平和に生きていきたいじゃない。

乙女ゲームの世界とかを間近で見るまで死ねないんですよ。

だから、戦とかもやめてもろて。

無駄な争いも良くないよ。

お陰で皇妃も側妾も大人しくなったらしい。

実際に皇后陛下が手を下す前で良かったね。

私を御すか、認められるかしないと、皇帝にはなれないんだって。

別に皆の意見聞いて、暴虐でなければ誰でもいいんだけどな。



結果、一年後、人が沢山死んだ。

参戦した騎士も兵士も心的外傷トラウマレベルの惨状だったと思う。

治水工事は上手く行き、策も上手く機能した。

向こうはこちらの真似をして砦を築いたし、本気度を表すために重装歩兵を数多く投入したのだ。

それが徒になった。

水は深い所で2m近くに及び、一番多かったのは溺死だ。

逃げようにも重装ではそもそも自分で脱ぐことも出来ないし、浮かべず泳げず。

屍の山の上でどうにか呼吸できたとしても、体温は奪われるしいつまでも足下が覚束ないまま、立っていられなくなる。

かといって高台へ逃れようとすれば、弓と槍の攻撃を受けるか、罠がある場所しかない。

密集していたせいで、逃げようと思った時にはもう、身動きがとれないまま。

短時間で出来た小さな湖は、水が引くまで数日はかかっただろう。

水門を閉じればそれ以上は水嵩は増さなかったが、水が引く頃にはもっと酷い状態になっていた筈だ。

こちらはほぼ死傷者はなし、向こうは大打撃を受けて戦は永遠に終了した。

カザレス帝国の領土の実に半分を割譲。

我がザイード帝国との間にその地域は生まれた。

モブリーナ大公領。

いつか、私が大公になってそこを治めるらしい。

いらないのに。

あと何で私の名前つけたの。

ちゃんとした名前にして!と抗議して、リヒテンシュタール大公領とされた。

それから死神軍師がいるって噂になってるって聞いたよ。

恐ろしい。


私が「示威行為がしたいならもっと平和的に出来るもんね」と言ったら、カザレス帝国との会談に連れて行くね!と父に言われた。

連れていかれるらしい。

ついでに領地も見てみたいからいいか。


そしてあれから、ヘンベル侯爵が時々遊びに来るようになった。

軍議に参加されてた他の人達も来るけれど、ヘンベル侯爵の頻度は高め。

お馬さんをしたら、孫が欲しくなったらしい。


「皇女殿下は今日も愛らしいですなぁ」

「そうだろうそうだろう」


おっさん達の社交場になりつつあるんだけど、早い所帰って欲しい。

私はもっとキラキラした美少女とか美少年が見たいんだ。

早く成長して、色々なところに行きたいなぁと思いつつ。

今日も体力を使い果たして眠るのである。


姪っ子見てると2歳から流暢に喋れるので、中身が大人なら話す事は出来ると思うので、こんな感じになりました。

あと5歳ともなれば、お料理も出来るしスポーツも出来るので、大人ほどではないにしろ割と色々出来ます。身近に小さい子がいないと5歳って実際の3歳くらいの子をイメージしちゃいますよね。

普段は貴族名鑑大好きなだけの子供です。

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― 新着の感想 ―
確かに3歳児はしっかり話せるけど、脳内がまだ人間習得中なので話は通じないんすよ……やつらは本能と感情を主体に動かし話すから……。 中に大人の人入ってたらそれはカッツリ喋るでしょうねぇ。 たまに滑舌悪く…
私も三歳の頃に「人の不幸は蜜の味」と呟いて母に「あんた意味わかってんのん」と聞かれ、「人が困ってるの見たら楽しいって事でしょ」と答えたらしい(覚えてない) 幼児は侮れませんぞ。
わーい(≧▽≦)続編だ~ やっぱこのシリーズ面白い♪ キャラ濃ゆい人多いね~ 今後も愉しみにしています!
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