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裁きの日①

 その翌朝のことだ。さて、どうしてくれようかとペーターが想像を膨らませていたその時、勢いよく部屋の扉が開いて、一人の衛兵が入ってきた。

「も、申し上げます!ヒルデ様がお目通りを求めて、こちらに向かっていると……!」

 突然の報告に興を削がれたペーターは憮然とした顔になる。

「なに?ヒルデ?」

「はい……!その通りです!それで、あの……」

「屋敷から出るなとあれほど言い聞かせていたはずだがな。いや、縁談のことか?よりにもよってこんな時に……!面倒な。追い返せ!」

「そ、それが……怪しい風体の武装集団を率いているのです。それだけではなく、どういう理由があってか民衆もその後ろに続いているようです。何千人という集団が、城のすぐそこまで……!」

「……⁈何千⁉」

 あまりの人数の多さに泡を食ったペーターは転がるように部屋から出た。異常事態があったことは事実らしく、城内の兵士たちも慌ただしく動いている。途中何度か呼び止められるもそれらを無視して、ペーターは外に出ると近くの城壁に取りついた。

 息を切らしながらペーターは城壁の向こう側を見渡した。探すまでもなく、報告の集団はすぐに見つかった。数千人という集団がゲールバラ城を目指して近づいてきていた。

 その先頭にいるのは騎馬に乗った一人の少女だった。凛々しく顔を引き締め、美しい甲冑を身に纏い、燃えるような赤髪を風にたなびかせている。

「見間違えることはない。ヒルデだ……」

 そのヒルデの傍らには黒騎士が泰然と、その後ろには柄の悪い武装した男たちが意気揚々と少女に続く。風体こそ怪しいが、一定の秩序を保ち、まるでヒルデの従者の如く付き従っている。

 そこから少し離れて、残る数千人がぞろぞろと城に向かっている。遠目からでは判別がつかないが、みすぼらしい格好は近隣の領民と思われた。

 ペーターは状況が理解できず戦慄き、混乱した。突然、男たちを引き連れて姿を現したヒルデの意図を測りかねた。五年間ペーターの言いつけにただ従い、家に引きこもっていただけのヒルデがここに来て何をしようとしているのか。そもそもこの男たち、領民たちがなぜヒルデに従うようについてきているのか。

 顔がはっきり見える距離までヒルデが近づいた。隔てるものは城門一枚だけである。少女は城壁の上で混乱して声も出ない叔父を見上げて不敵に笑った。

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