雪は、手から溶けるように淡く
メリークリスマス!!そして、悲しき物語を添えて
いつからだっただろうか。
空一面を覆う黒い雲から、白い雪が振り落ちる。
呼吸をすると、白い煙がポワァと舞い上がる。
コンビニに、立ち寄って、100円セール中の肉まんを買う。
小さな口で、その白い食べ物を頬張る。
どうして、こんなに悲しい気分にさせるのかな。
コンビニの前、雪景色、黒い雲....そして、寒さが私の手を冷やす。
「........美咲?」
「..........」
厚手の赤いマフラーを首に巻いた好青年が、私の名前を呼んだ。
それとなく、見つめて...興味のなくなった私は、早足でその青年から逃げるように歩く。
「ま、待ってくれ!」
立ち止まり、彼に目を向ける。
そこから、なにか口をまごむかせた彼は、
結局 言葉を出すことができないで、息を詰まらせる。
「会えて嬉しかった」
「.........あっ」
一言だけ、口に出してから、再び彼から逃げるように歩く。
苦しいよ。私も....
こんな気持ちにさせた日は、いつだっただろうか。
肉まんが、妙に暖かい。
「.......俺は......俺は、話していたかっただけなのに」
青年の声が、呟かれた。
「今日は、楽しかったね」
「そうだなwまた、遊びたいな。」
耳元に残る声、また.....また.....うん.....また。
「俺は、お前のことが好きだから」
「.....私は、」
目線を、落とす。何となく、分かってた。でも、気のせいじゃないかな。なんて....心に言い聞かせてた。
「もちろん、答えを急がせたりなんかしたくない。なんだろ....俺のこと、好きになったらでいいから」
「...........うん」
もし、もしこうなったら、いや....考えたくなかったのかもしれない。
彼の悩みを、聞くことが趣味みたいになってた。
彼の考え方を聞くのが、楽しくなかったと言えば、嘘になる。
「だから....私は、弱いんだ」
ベットの上で、呟いた言葉が妙に心に響く。
君の好意を断ったら多分、君は傷つくよね。
いつも、大変だって言ってたし、頑張ってるのも見せないようにしてるけど、分かってるつもり....
「ねぇ、俺のこと好きになった?」
「.......うーん、」
「.......そう、だよね」
まるで、演技でもするかのようにガックリと肩を落とす彼、ごめんね。
「俺、ここまでやりたいっていう目標があるんだ。だから...ちょっと、レベルの高いものに挑戦してみようと思う。」
「え、あれやるの?」
「できるかどうか分からないけどね。まずは、買うところから買うところから」
「そうだね。頑張って」
こんなこと言われたら、断るタイミングなんてないじゃん。
なんか、ウヤムヤになっちゃったし、私返さなくてもいいよね。うん...
別に、気にしてなさそうだし....大丈夫
「.......親が、言うだよ。ずっと寝てるじゃん。勉強やれてるの?ってさ....俺頑張ってんだよ....自分より、上の目標に手が届くように頑張って...それで....それで、ぶっ倒れちゃってるだけなのに」
「言っても、分かんないよね。大体」
「うん.....そりゃあ....俺も、寝すぎだな?みたいな?感じてるよ?でも....しんどいから、寝てるだけでも、いいだろっ!!って感じだよっ!!」
「寝てるだけでも、いいだろwwwまぁ、うん。頑張ってると思うよ。君は」
...........うん。うん........モヤモヤするなぁ....
「あれ.....返信.....」
返信が来なくなった。
まぁ....そうだよね。頑張ってる....しな。
「.....んー、あーーー!!なんか、肩の荷が降りた気分っ!!全然、平気。大丈夫」
よし、明日から....頑張ろうかな。
近くの公園に立ち寄る。
「ハフッ」
肉まんを頬張る。雪が振る。
「ハフ....は.....ハフ...は.....ぅ」
うん....うん....しょうがない。しょうがなかった。
「......君の所為だからね」
涙が溢れる。
「......私の所為じゃないからね」
でも、苦しいなぁ
赤いマフラーに、手を添えて...雲中に、出来た光の隙間に目を向ける。
ボタボタと涙が、零れる。
「ハァフゥ」
大きく呼吸をする。
よし、行こう。
いつからだっただろうか。私が、少しだけ君に惹かれていたのは
惹かれた=Loveではない。