冬だ!温泉だ!雪女だぁあ?!お札でOFFデース
小原井寺は、お祓いも受け賜っていた。
その跡取り娘で、高度なお札を扱える一級お祓い士の小夜世・二十歳は、炬燵でガチ寝をしている。よだれを垂らしながら。
「居眠りしよって。お祓いじゃ」
父親である住職にどやされるが、全く目覚めない。
業を煮やした住職は小夜世を段ボールに詰め、宅配便で発送した。
あまりの寒さに小夜世が目覚め箱から出ると雪山にいた。その手元には住職からの『目の前にある温泉旅館が雪女に絡まれて難儀している。お祓いしてこい』とか書かれたメモがあった。
吹雪の中、目を凝らせば確かにそこには氷漬けになった温泉旅館があった。
幸いにも住職の好意で雪山装備の恰好。何かないかとポッケを探るとお札が出て来た。総ての呪いを無効化するヤツ。玄関にそれを貼ると一気に旅館の氷は蒸発して、あるべき姿の旅館が現れた。
中に入ると女将が三つ指ついてそこにいた。濡れている。この姿勢のまま氷漬けにされていたようだ。
「お客様、お待ちしておりました」
びしょ濡れなのに笑顔を崩さないとは女将の鏡だった。
若い女性と不倫しに泊りに来た男が、混浴温泉に浸かっていた雪女をナンパし、ワンナイトラブ。しかし雪女の方は男にガチ恋し、会わせろと旅館に襲撃を掛けた。との事だった。
小夜世は住職が装備してくれたお札を机の上に並べたが、どれも悪霊を飛散・溶解・分解するデストロイなものばかりで可哀想すぎる。悪いのは絶対にクソ男の方だろうが。
スマホを取り出し、除霊グッズ通販店・尼寺諏のアプリから特注の高級お札をオーダーした。支払いは住職のアカウントで。
注文終了、玄関から呼び声か聞こえる。尼寺諏の配達員が頼んだお札を早くも持ってきたのだ。
小夜世は早速、過剰包装された段ボールの中から一枚のお札を手にすると、温泉場に向かった。
そこには例の雪女が男を待って浸かっていた。
小夜世は何も言わず、先程のお札を空中に投げると空間に穴が開いて、そこから不倫男がぼちゃんと湯船に落下した。
「姉さんの探していた男は其奴じゃろ?好きにせいや」
雪女はびしょ濡れスーツ不倫男をしっかり抱きしめると凍結させ、山奥へと連れ去っていった。
すると吹雪いていた雪は止み、日の光が当たり照らす。これで呪いは無事OFFになった。
仕事は終わった、ゆっくり休もう。しばらく旅館に泊まりこんで温泉と特産品でドンチャン楽しんだが、住職のツケにしたので、帰宅後、怒涛の仏罰が落ちるのだった。