チートとナイトと
「アオイ・セト」
属性:聖・土
レベル:※※※
職業:※※※※
スキル:多言語解析・ライブラリ・鑑定(1)new
「カナタ・セト」
属性:闇・水
レベル:※※※
職業:※※※※
スキル:多言語解析・ライブラリ・認識阻害無効(1)new
「どうやら、私の鑑定レベルだと詳細は分からないってことかなぁ」
鑑定が使えると分かった私は、もちろん奏多兄のステータスもチェックした。多言語解析....って言うのは言葉が分かるっていうのでいいのかな?良くある異世界転移ものと一緒で良かったー。
ライブラリは、二人とも持っているスキルなのに、意味が解らず。クリックしたら詳細とか出たらいいのに...。
「私の鑑定が、行使したことで新しくステータスに追加されたっぽいってことは.....奏多兄の認識阻害無効は、いつ使ったの?」
「認識阻害無効?」
眉間にシワを寄せて、心当たりを探そうとする奏多兄。悩んだら答えは出るんだろうか...。
本当に、例の小説の世界に来てしまったとしたら、二属性持ちの私たちは、チートと言うことになる。聖も闇も珍しいはずだったんだけどなぁ。
「んん....」
二人で、ステータスと魔法について話している間に、大分時間が過ぎてしまったようだ。
美女が身動ぎし、かけてあったシャツが落ちる。私は、そっと彼女に近づき、
「大丈夫ですか?」
と、肩に触れて言った。
少しずつ瞼を開く彼女の瞳は、芽吹いた葉の様な緑で、ぱっちりした大きな目が、私の紺碧の目を見つめる。
「だ.....れ.....」
「私はアオイです。あっちは兄のカナタ。事情があって森で迷子になっていたら、倒れたあなたを見つけました」
彼女は身体を起こそうとして、自分の身体を見下ろす。服が変わっていることに気がついて、目を見開く。
「すいません。びしょ濡れだったので私が脱がしました。兄は見えない所にいてもらいました。あなたの着ていたドレスはまだ乾いていないです」
彼女は、ドレスの方を見てまた目を見開いた。
思った事が全部顔に出る人なんだなぁ。と思いつつ慌てて口を開く。
「ドレスを乾かすためにギュッと絞ったらシワだらけになってしまって...すいません」
そう言って頭を下げた私に、彼女は少し困った様に言った。
「謝る必要などありません。私を助けてくださってありがとう。まだ小さいのに、私のドレスを脱がせるなんて大変だったでしょう。貴女たちは私の命の恩人だわ」
彼女は、白魚の様な真っ白な両手で、私の手をそっと握ってくれる。軽く頭を下げた彼女の視線が、足元にかけた軍服で止まる。
「アーサー....。私の騎士がここにいたはずなのですが、何処に行ったのかご存知かしら」
奏多兄と私は顔を見合わせる。私たちが来たときは誰もいなかった事を伝えようとしたとき、私の後方の森からガサガサっと大きな音が聞こえた。
奏多はサッと動き、森と私たちの間に立ち、身構えた。私も少しだけ彼女のそばにより、音の聞こえた方を見る。
熊....いや魔獣....とかだったらどうしよう...。
茂みがガサッと大きく揺れたと思ったら、黒い大きな塊がすごい早さで奏多に向かっていく。
「嫌っ!」身体中が強張る。とっさに私は目をギュッと瞑ってしまう。
「盾」
奏多兄の声が聞こえた。
キィン
「何者だ!お嬢様から離れろ!」
男性の低く怒りを孕んだ声が聞こえる。私はガクガクと震えながらそっと目を開ける。そこには奏多に向かって剣を振り上げる男の人と、その剣を黒い壁の様なもので受け止める奏多が居た。
「やめなさい!アーサー!」
彼女のよく通る声が、森に木霊した。