05雫さん仕官
?「失礼する。領主殿はおられるか?」
お客さん?
玄関には、俺より少し若そうな女の子がいた。
領主様はお昼まで寝ているので、アポイントメントが無ければ少し待ってもらえますか?
?「寝てる・・?領民の話では、最近精力的に働いていると聞くが。」
ああ、普段のお仕事は俺が代わりにやっているんです。
独立してから重要な仕事が目白押しらしくて、領主様は目立たないけど大切なことをしているそうです。
?「・・魔物退治をしたのは?」
俺です。自由にやっていいと言われたので退治したんですが・・まさかそれがとんでもない間違いだったとは・・
?「間違い?」
地方領主は反乱しないよう、大きな兵力を持ってはいけないそうじゃないですか。
それを俺が魔物退治してしまったせいで、領主様は謀反を疑われてしまったんです。
領主様は領民のためを考え、独立を決意したのです。
?「そんなルール無いぞ。」
いやいや、俺が住んでいたところもそうでしたが、魔物が現れてもみんな放置しているじゃないですか。
制限かけられているから魔物退治できないんでしょう?
そのせいで俺の住んでいた村は滅びました。みんな殺された。
?「(領主の怠慢なだけだが、王国の指導不足も否めぬ・・刺激しない方がいいかもしれぬな)」
ところで、どちら様でしょうか?
?「就職希望じゃ。」
うわぁ、俺先輩とかになっちゃうのかな。
と、とりあえず中へどうぞ。
・・
・・・・
ところでお名前は?
雫「雫じゃ。以後お見知りおきを頼む。」
俺は瑪瑙です。よろしくお願いします。
えーと、得意なこととかありますか?
雫「戦闘が得意かのう。私兵を持っておるぞ。」
おおお、戦力アップしそう。
採用・・したいのですが、領主様の許可を待ってもらえますか?
お昼には起きると思いますので。
ドドドドドドドドバタン!
領主「若い女の匂いがする!」
まだお昼まで一刻(2時間)くらいありますよ。
領主「若い!かわいい!いただきまーす!」
雫「はっ!」
雫さんが剣を抜・・かず、柄で領主様を迎撃した。
領主「ちょ、おい!なんでいきなり柄でどつくやつが屋敷の中にいるんだ!?」
領主様が飛び掛かったせいだと思います。
えーと、こちら雫さん。就職希望だそうです。
領主「オレの嫁が空席だったかなー。」
雫「わらわはまだ未熟じゃ。結婚は立派な大人になってからと考えておる。」
領主「いいんだよ。身体が大人なら。」
雫「心が未熟なら何事も成せず、他人に迷惑をかけてしまう。」
雫「例えば・・夫を殺してしまったりのう・・」
雫さんが剣を抜いた。
おおお、かっこいい。
領主「OKOK、キミの言い分を聞こう。脱げと言うなら脱ごう!」
雫「国軍と戦うなら人手が必要であろう。軍人として就職を希望する。」
領主「OKOK、まーその辺は瑪瑙に任せるわ。オレはまた寝る・・変な時間に起きると調子狂うわー。」
おやすみなさい。
雫「・・あれが領主で大丈夫なのか?」
はい!
・・
・・・・
?「ごめんください。」
はーい。
玄関へ行くと、そこには綺麗な女の子がいた。
?「さて、私が誰かわかる?」
・・この声・・どこかで聞いた覚えが・・・・
・・・・あ、悪魔王さん!?
悪魔王「正解。」
あの、あの、ゴーレムを返せなくなった件は、そのー・・
悪魔王「わかってるわ。盗られたものは仕方ない。」
悪魔王「でもね、超神なんかの力を借りたことは間違いよ。」
でも、超神さん色々良くしてくれましたよ?
悪魔王「私のゴーレムを持った人がいるけど、そのままにしておくつもり?」
あ、それはもちろん悪魔王さんにお返ししないといけませんから、返してもらうつもりです。
悪魔王「相手が嫌がって力づくでってなったら?キメラで戦うの?」
・・そうなりますね。
悪魔王「いくらキメラが移動力あっても、素の強さはゴーレムが上よ。勝てる?」
・・真正面から戦ったら負けそう。
悪魔王「超神は配慮が足りないのよね。ま、私より格下だからしょうがないんだけど。」
ん?
悪魔王「寿命の件だってそう。残りの寿命の半分を要求されたんでしょ。」
悪魔王「あと60年生きるとして半分だと30年。まぁ50歳前後で寿命が尽きるのよ。」
悪魔王「孫が産まれてもおかしくないわね。人生も折り返し。」
悪魔王「これから余生を満喫しようかって時に、はい寿命。残酷じゃない?」
なるほど確かに。
悪魔王「超神は調子のいいことばかり言うけど、それに騙されるのは間違ってるわ。」
悪魔王「間違いは訂正しないといけない。正しい道を進むのよ。」
・・と、言われましても・・
悪魔王「あなたが信じるべきは私。悪魔王こそ信じるに値するの。」
悪魔王「そうね。対ゴーレムにはこれを貸してあげるわ。」
悪魔王さんは、魔法板を渡してくれた。
これは?
悪魔王「空間兵よ。空間を通して遠距離攻撃ができるわ。」
悪魔王「動きの遅いゴーレムとは距離を置いて戦うのが定石。そうは思わない?」
思います!
悪魔王「寿命は・・そうね、10年程度もらえれば十分よ。」
悪魔王「もちろん超神に寿命を差し出す必要はないわ。そこは私がなんとかしてあげる。」
そ、そこまでしていただかなくても・・俺、迷惑ばかりかけているのに・・
悪魔王「空間兵はあなたの子孫が続く限り使っていいわよ。」
悪魔王「あなたの代で終わりなんて、まだ見ぬあなたの子供や孫がかわいそうだわ。」
悪魔王「もちろんゴーレムも取り戻したら同じように使い続けていいわ。」
な、なんでそこまでしてくれるんですか?
悪魔王「もしかして超神が私の悪口言ったんでしょ?あれは嘘つきなのよ。」
悪魔王「誰がどう見ても私の方が優れているのに、虚勢を張っているだけ。」
悪魔王「これが本当の私よ。あなたはただ、私を信じていればいいの。」
俺は自然と、手を合わせ悪魔王さんに祈りを捧げていた。
そういえば最初に助けてくれたのも悪魔王さんだった。
信じるべきは悪魔王さんなんだ!
・・目を開けると、悪魔王さんはいなくなっていた。
新しい魔法板はある・・ありがとうございます!
・・
・・・・
雫「それで、政務はお主に丸投げされていると聞いたがどうするつもりか?」
今後のことですよね。
えーと、各地で独立運動が起きていると聞きます。
雫「ああ。」
いくら王国が強大でも、すべてを同時に相手するような下策はとらないと思います。
雫「戦力を分散すれば、各個撃破されるからな。」
はい。順次攻めるでしょう。
恐らく順番は・・弱いところから。
雫「・・ほう。」
素早く独立したところを叩けば、他の独立した地方へプレッシャーをかけることができます。
なので、支配は順調だよ~、ここは弱くないよ~・・と思われるような領地経営をします。
魔物は退治する。悪人は逮捕する。領民の陳情を受け付ける。
現状を安定させることが大切ですね。
逆に、強すぎても狙われてしまうでしょう。
なので、まだ他の領地へは進出しない方向で考えています。
弱くないよ~、でも強くもないよ~、放っといても大丈夫だよ~・・と、王国にアピールです!
というより、別に王国と敵対したいわけではないので。
えっと、ダメですか?
雫「いや、それでいいと思うぞ。」
じゃあそういうことで、領民の幸せのためにがんばりましょう。
・・
・・・・
雫「(ただの農民出身でアドバイザーもいないのに、意外としっかりした考えをしている)」
雫「(瑪瑙・・役に立つなら利用させてもらうが、そうでなければ・・)」
領主「お、雫ちゃん。今日もかわいいねえ。」
雫「ひとつ尋ねるが、瑪瑙の方針はお主が指示しておるのか?」
領主「え、あいつなんかやらかしたのか?」
雫「いや、農民出身という割にまともな領地経営をしておるからな。」
領主「・・ははは、もちろんオレがあいつに指導したのだよ。」
雫「そうなのか?何もしないごく潰しだと思っておったのだが。」
領主「そんなわけないだろう。何もせずただの農民に政治を任せるなどあると思うか?」
雫「・・まぁ、そうだな。」
領主「オレのこと見直した?一晩一緒に過ごすともっとオレの素晴らしさがわかるぜ。」
雫「それは遠慮しておこう。生涯を添い遂げると決めた相手としかそういうことはしないつもりじゃ。」
領主「オレと生涯を添い遂げれば解決だな。」
雫「無い。」
雫はさっさとその場を立ち去った。
領主「(見た目は好みなんだがなあ・・オレの女にしてやりたいなあ・・)」
・・
・・・・