40新たな脅威
外国国王「おお!進軍が止まった!」
領主「見ての通りです。瑪瑙がこれからこちらへ来ますが、どうとでもできますよ。」
外国国王「命さえ助かれば・・と思っていたが、王になる前の地位くらいは望めそうだな。」
側近「それより、瑪瑙を暗殺することはできないのですか?」
外国国王「側近?」
領主「それは無理です。ミークルーガーが邪魔するでしょう。」
領主「ミークルーガーはオレの言うことを聞きませんから。」
外国国王「下手な刺激はやめろ!いきなり処刑するとか言い出したらどうするのだ!」
側近「いいのです。あなたはここで死ぬのですから。」
外国国王「な、なんだと・・!?」
側近「おい、やれ。」
領主「へい!」
領主は、外国国王を斬り捨てた。
外国国王「な、ぜ・・」
側近「これであなたは最後まで王だったことになる・・」
側近「誇りなき王に価値なし。」
領主「王が貴族や平民になるのは良しとせず・・か。」
側近「当然です。誇り高き者は、誇りを失うことが死と同義なのですよ。」
側近「こいつは王にふさわしくなかった・・私は誇り高く生きます。」
領主「それは構いませんが、王を殺してしまって・・報酬は大丈夫でしょうか?」
側近「安心していいですよ。王の隠し財産が東南山にあります。」
領主「外国の東南山というと、王国が西南山と呼んでいる山ですね。」
領主「・・確かあそこはギリ王国領土だったはず。そんなところに隠し財産を?」
側近「王国領土ですが、王国側からは入山しづらい地形になっており、外国側は他国なので立ち入り禁止にできる。」
側近「つまりは穴場です。」
領主「ほー・・それだけ聞ければ十分だ!死ね!!!」
領主は側近を斬り捨てた。
側近「き、貴様・・」
領主「金目当てなんだから、より多く金が手に入る選択をするに決まってんだろ。」
領主「お前も誇り高いまま死ねよバーカ。」
側近「・・愚かな・・私につけば・・ミレソウ教を紹介してやったものを・・・・」
領主「ミレソウ教?」
側近「ミレソウ教は・・・・ミークルーガーを超える魔物を手に入れた・・」
側近「・・世界の支配者となる・・・・なのに・・愚かな・・・・がくっ」
領主「・・」
・・
・・・・
あ、領主様来ましたよ・・あれ?
領主「瑪瑙、お前ミレソウ教って知ってっか?」
迷惑な方々です。
ミークルーガー乗っ取るのに失敗して教祖が亡くなったりしていましたが。
領主「なんかこいつがさ、ミレソウ教はミークルーガーを超える魔物を手に入れたとか言ってたぞ。」
・・・・どなたですかこの人?
領主「外国国王の側近だった肉片。あ、そっちは外国国王だった肉片な。」
えええええええええええ!?
・・
・・・・
レイン「死刑」
クー「死刑ですね。」
雫「死刑じゃ。」
エティー「死刑です。」
ミミット「死刑。」
マーユ「死刑です。」
イスス「死刑だ。」
領主「意義あり!」
外国王都を支配下に置き、国民生活に支障がないよう指示を出した後・・
領主様の行為が問題視された。
領主「オレは何もやってない!」
イスス「外国国王を殺した。あいつは・・あたしが殺すつもりだったのに。」
領主「泣くならオレの胸で泣いていいよ美しいお嬢さん。」
イスス「死刑」
領主「キミたちは誤解している!」
領主「オレは・・みんなのために外国国王を殺したんだ!」
クー「納得いく説明をお願いします。」
クー「論理に漏れがあれば死刑です。」
領主「ふむ・・・・オレは外国国王の側近に呼ばれて行ったんだ。」
領主「瑪瑙に対して意見できる人物としてな・・あいつらは、罪を逃れるためにどんな手も使うつもりでいた。」
領主「最初にあいつらは、瑪瑙を金品や女で籠絡できないか言って来たんだ。」
領主「オレは言ったよ。瑪瑙は目先の欲望に惑わされる人物じゃないって。」
領主「次にあいつらは、瑪瑙を暗殺できないか言って来たんだ。」
領主「あいつらは悪魔だ!・・まあ、ミークルーガーが邪魔するだろうと言っといた。」
クー「金品に釣られる者には金品を贈り、女に釣られる者には女を抱かせ・・」
クー「なびかない者は殺(暗殺)してしまえ。離間の策でよく用いられるやり方ですね。」
領主「ああ。あいつらは瑪瑙が心優しい人格者であることを知ると、泣き落としすると言い出した。」
領主「ミークルーガーが復活すれば国家レベルの破壊が待っていると王国に言われ、赤子だった瑪瑙を差し出したのだと。」
領主「そのことがバレそうになり、仕方なくクーデターに手を染めてしまったと・・」
領主「反省していれば許されるだろうと、あいつらは笑っていたんだ!」
領主「許せるか?許せないだろう!?あんな醜い心の人間・・!!」
領主「あんなやつらのためにみんなの手を血で染めたくなかったんだ!!!」
領主「オレが殺せばみんなの手を血で染めなくて済む!だから・・!」
レイン「判定は?」
クー「嘘臭いので死刑です。」
領主「オレの熱演ちゃんと見ろよ!」
エティー「熱演なら演技なのでは?」
領主「揚げ足取り禁止!なあ瑪瑙、お前ならわかるだろう?」
領主様の話は難しくてよくわかりませんでした。
ですが緊急時に戦争相手国の人間を呼んだ時点でリスクは承知でしょう。
危険を招けば災いを受ける。
それは招いた側の責任であり、招かれた領主様に責を問うのは違うと思います。
領主「ああ・・それはオレもわかっていたのだ。」
領主「だが、仮にも王の位にいる者の名誉を汚すようなことは・・言えなかった・・!」
ミミット「もう一度ご自分が言ったことを思い出してみませんか?」
領主「オレは無実。はい結審!」
まぁ事情を聞きたかっただけですから・・資料を作る必要がありますので。
こういうのをきちんと残すことで大説や歴史書が作られるんだよね。
それより、気になること言ってませんでしたか?
ミレソウ教がミークルーガーを超える魔物を手に入れたとか。
領主「外国国王の側近が死の間際にそんなこと言ってたんだよなあ。」
領主「てか、そんな魔物いるのか?」
えーと、こういうの知ってそうなのは・・・・雫さん?
雫「ドラゴンとかなら該当すると思うがのう。」
雫「すまぬ、よくわからぬ。」
実際にあたってみないとわからないかな。
でも・・もし、そんな魔物がいたとして・・・・どうすれば・・?
これも天使様の計画なのだろうか?
なら、対策も考えていてくれるのかな・・それとも、今ある力でいける・・?
一度、王国王都へ行って女神像に聞く?
ここへ来たことに意味はあるのかな。
俺を王様にしてくれるため?それとも、外国国王に罰を与えるため?
マーユ「ミークルーガーより強力な魔物というのは気になりますね。」
マーユ「正面からぶつかるのは得策ではないでしょう。」
エティー「そういえば、天使がここに預け物をしているのではありませんか?」
エティー「天使が瑪瑙お嬢様の父親に預け物をしたのは・・お嬢様に渡すためでは?」
そういえばそれがあった!
行ってみよう・・どこ?
・・
・・・・
イスス「ここだ。」
普通に宝物庫って感じだ。
いや・・鍵穴がない。
ミークルーガーI「・・プチの匂いがする。」
プチ?
イスス「だが、ここは選ばれた者にしか開けられないと聞く。」
レイン「なるほどつまり・・」
みんなが俺を見る。
・・まぁ、そうだよね。俺の親が預かったんだし。
ありがたく使わせてもらいます!
宝物庫の扉は・・・・開かなかった。
あのー、やっぱり俺は前王の子供じゃないのでは?
なんか恥ずかしい。
クー「一応全員試してみましょう。意外な人が扉を開けられるかもしれません。」
ひとりずつ試していく。
・・開かない。
実は複数人必要だとか・・うーん、可能性は無限大だなぁ。
ミークルーガーI「開いた。」
なんで!?
ミークルーガーI「つまり私が前王の子供。」
絶対違いと思います!!!
根本的に種族が違うでしょ!
雫「ミークルーガーを想定したものがある・・ということか。」
レイン「味方として?こうなるってわかっていたわけ?」
クー「敵であることを想定した罠が仕掛けられている可能性もありえます。」
エティー「中に入らないとわからないでしょうね。」
ミミット「どちらにしろ、私たちは中に入るしか選択肢はないでしょう。」
マーユ「当時の事情を知っている方がいればよかったのですが。」
イスス「あの人が生きていたら話を聞けたのに・・」
・・ミークルーガーが来るのを・・・・天使様は・・全部知っていた・・?
赤ん坊だった俺が王国に売られることも、クーデターで親が殺されることも・・?
知っていて・・なにもせずに・・・・
ミークルーガーI「間違いない、プチがいる。」
6体のミークルーガーが一斉に中へ入っていった。
雫「瑪瑙?どうした?」
天使を・・信じていいのかな・・・・?
雫「今まで信じて来たのだろう?」
そうだけど・・そうなんだけど・・・・
みんなで中に入る。
実は俺の親が生きてるとかは・・ないよね?
・・
・・・・
?「ぷっちぷちぃぃぃ」
中にはなんだかよくわからないのがいた。
ミークルーガー同様、どの生き物にも類似しない謎形状の存在・・
鳴き声はかわいい。
ミークルーガーI「こいつはプチクルーガー。」
ミークルーガーI「私たち6体のミークルーガーをひとつに束ねる”関節”」
クー「頭脳ではないのですね。」
ミークルーガーI「これが知性あるように見える?」
プチクルーガー「ぷっちぷー♪」
クー「鳴き声だけかわいいです。見た目は・・なんでしょうこれ?」
レイン「わからないけど、強化パーツってとこ?」
ミミット「あ、ミレソウ教と戦うための・・」
ブオオンン!
マーユ「何か通り過ぎましたか?」
雫「いや違う。魔力の余波が広がった感じだ。」
ミークルーガーI「・・これは・・召喚魔術だ。」
ミークルーガーI「この感覚・・私の知っている魔物が呼び出された。」
たぶん・・・・ミークルーガーさんと同等の方ですよね?
ミークルーガーI「ああ・・天使のシナリオ通り、というとこか。」
レイン「天使の狙いはあなたとその魔物を戦わせること?」
ミークルーガーI「・・・・違うだろうな。」
ミークルーガーI「私程度、天使からすれば眼中の外だ。」
レイン「あなたを眼中の外だなんて、天使というのはさぞ御立派なのね。」
レイン「目的を語らず人を利用して何様のつもりかしら?」
雫「いきなり辛辣になったな。」
レイン「天使はミークルーガーが味方になるってわかっていたのでしょう?」
レイン「なら・・私たちの村が滅びることも、瑪瑙が売られることも全部知ってて利用したのよ。」
レイン「人をなんだと思っているの?私たちは家族を殺されているのよ!?」
クー「・・」
雫「(・・瑪瑙の様子がおかしかったのもそれか・・)」
雫「(瑪瑙は育ての親と産みの親、その両方が殺されている・・)」
ミークルーガーI「お前たちの村を滅ぼしたのも、瑪瑙を売ったのも人間だ。」
ミークルーガーI「人間は善悪をころころ変える・・人を殺したり、殺してはいけないと言ったり。天使とて付き合いきれないだろう。」
ミークルーガーI「あと・・天使は神のために存在している・・人のためではない。」
レイン「・・わかってるわよ。納得できないだけ。」
クー「嫌なら無理にやる必要はないですよ。私も少しイラっとしていますし。」
ミークルーガーI「人間が、なぜランク1にカテゴリされているか見てるとよくわかる。」
ミークルーガーI「お前たちは誰一人、神のために存在していない。」
ミークルーガーI「他の生き物を迫害し、人間同士で争う。」
ミークルーガーI「天使は、人間にふさわしい対応をしているとは考えつかないのか?」
レイン「・・」
クー「・・」
ぴこーんぴこーんぴこーん。やばい空気を察知しました。
察知はできても対処方法がわからない・・
マーユ「しかしそれではアンフェアです。」
マーユ「私たちは神様を見たことも会ったこともありません。」
マーユ「何もわからないまま生まれた私たちは、どうすれば神様に尽くせるか想像すらできません。」
マーユ「せめて多少の説明なりきっかけをいただけてもよいと思いますが。」
ミークルーガーI「くくく、やはり人間は愚かだな。」
マーユ「・・説明をお願いできますか?」
ミークルーガーI「お前たちが無知なままなのは、神が望んだからだ。」
ミークルーガーI「無知であることが神の役に立つのだ。」
ミークルーガーI「天使が人間にふさわしい対応をしていると言ったが、別に天使は人間に不満を抱いていない。」
ミークルーガーI「・・生き物は死ねば必ず救いがもたらされる。それまで天使は人のやることに介入しない。」
ミークルーガーI「死は終わりではなく次に進む道中のひとつであり、現世の苦しみは死後救われる。」
ミークルーガーI「見捨てているわけではない。人が知らぬだけ・・」
レイン「じゃあ、私が人類を絶滅させてもいいの?」
レイン「全員救われるのよね?」
ミークルーガーI「ああ、人がそうしたいならそうすればいい。神は困らぬ。」
ミークルーガーI「責任ある自由がそんなに不満か?」
レイン「責任ある自由・・人のことは人が決めろってことね。その結果も受け入れろと。」
レイン「正論過ぎて胸糞悪いわ。全部終わったら天使をぶん殴ってやる。」
おおおよかった。レインの機嫌が直った。
でも天使様を殴るのはやめた方がいいと思う。
クー「なら、神様にとって人も虫も魚もみんな同じ扱いということですね。」
クー「勝手にやってもらい、死んだら救う。」
ミークルーガーI「平等なのがそんなに不満か?」
クー「ええ。生きている人間にとっては、死後のことなんて知りませんよ。」
クー「現世では不公平があり不平等がある。それが許せません。生きてるうちがすべてです!」
ミークルーガーI「だから、みんな生まれるのは同じだし死ぬのも同じなんだって。」
ミークルーガーI「そこに公平平等の概念を持ち込んだのは人間なんだから、そうしたいなら勝手にやれって話。」
ミークルーガーI「人間が優遇や特別を望み、他者との差を求めただけ。なぜその責任まで神に押し付ける?」
ミークルーガーI「人間が統一見解を出して実行すればいい。公平も平等も自分たちでできることだ。」
ミークルーガーI「だが最下層民は平等を望むが、王族は平等を望まないだろう?天使も勝手にしろって言いたくなるわな。」
クー「・・だそうですが、王族としてどうお考えですか?」
雫「優遇を望む者は多くとも、冷遇を望む者はいない。」
雫「ゆえに全員が納得する不公平不平等は存在しない。」
雫「公平平等では誰もが自由に意見を述べ、誰も責任をとらぬ。」
雫「失敗の山が積み上げられても不満や机上の空論が増えるだけで解決しない社会になる。」
雫「責任ある王族としては、不公平不平等だろうとも、社会が死ぬのを防ぐことを重視する。」
雫「その上で、できる限り公平や平等を追求していく。それが社会のバランスだ。」
ミミット「ちゃんとできていますか?反乱起こされてますよね?」
エティー「あれは主にミレソウ教が原因です。」
エティー「人為的に国内不安を引き起こした責任を政府に押し付けるのは違います。」
エティー「テロリストが犯罪犯したら、その責任はテロリストに帰結するでしょう?」
マーユ「いえ、治安を担うのも政府の役割ですから責任の一端はあると思います。」
マーユ「責任から逃れようとすれば、本気で治安を担う者はいなくなります。」
イスス「外国はもとより、王国もグダグダだな。」
イスス「独立地域がなぜ独立したままなのか、よく表れている。」
ミークルーガーI「みんなの心がひとつになったかな?」
バラバラになりました。
領主「みんな!なんでそんなギスギスしているんだ!」
領主「さあオレの胸に飛び込んで来るといい!それでみんな仲良しだ!!」
レイン「死ねば?」
クー「あとで確実に死ねる飛び降りスポットをお教えします。」
雫「なぜ島流しされた者がいるのやら。」
エティー「罪状が増えましたね。累計で死刑になればいいのに。」
ミミット「少しは民のことも考えてください・・あ、迷惑になるのでやっぱりやめてください。」
マーユ「一度御自分の生き方を見直した方がいいと思います。」
イスス「見るだけで不快。喋ると不快。存在が不快。」
領主「ふふっ、照れ屋さんだなみんな。」
さすが領主様、まったく動じていない!
はっ、もしかしてこれは、自分が悪役になることでみんなの団結を促している?
すごいなぁ・・俺はこれからのことが不安になって来たよ。
外国の王になるとか、なんかすっごい重圧ある。
レイン「王が全部やるわけじゃないから。何もかも背負い込む必要はないわよ。」
クー「先ほどのような話も経験です。後の国家運営に役立てられます。」
雫「悩んだら父上に話すといい。既に通って来た道だ。」
エティー「瑪瑙お嬢様なら素晴らしい王になれますよ。」
ミミット「謀反起こしていた時と同じで大丈夫ですよ。そう、民のための統治をすればいいんです。」
マーユ「みんなそれぞれの想いがあります。瑪瑙様なら他者の気持ちを思いやることができます。」
イスス「ミークルーガーでみんな黙らせれば解決だ。」
みんなありがとう。
でもミークルーガーで黙らせるのはちょっと・・
ミークルーガーI「話戻すけど、やばいの召喚されたのはいいの?」
そういえばそうだった!
ミークルーガーさん、具体的なことはわかりますか?
ミークルーガーI「そいつの名は”ナトナノサトナ”私と同じ異世界からやって来た者。」
異世界?
ミークルーガーI「召喚場所はここから南東の・・山っぽいな。」
クー「地図あります。」
クーさんが地図を広げ、ミークルーガーが場所を指し示す。
・・西南山?
イスス「外国は東南山と呼んでいる場所だ。」
イスス「王国領だが入山しづらく無人の土地だな。」
領主「ふぁ!?」
どうしましたか?領主様。
領主「ちょ、まずいぞこれは!おい早く行くんだ!」
領主「(そこには外国国王の隠し財産が・・)」
どうしてですか?
領主「・・・・ええと、無人の土地なんだろ?間違いなくミレソウ教は秘密結社の拠点にしているはず!」
領主「一刻も早く潰すことが世界の幸せにつながることがわからないのか!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
なるほど、すぐ行ってきます!
エクスクラメーションマークをたくさん使うほどだ、本気度が違う!
雫「・・」
・・
・・・・