30250年前に起きたこと
対ミークルーガー作戦。
俺も持ち場につかないといけないんだけど、王様に呼び出された。
王「そう硬くならずともよい。まあ座れ。」
失礼します!
・・なぜか、王様の頬に手の跡がついている。
王「お主を呼んだのは他でもない・・巴に迫られたというのは本当か?」
あ、はい。
王「それは・・巴がお主のことを好きだからだと思うか?」
い、いえ。ミークルーガーを使役できる自分を懐柔したかったのだと思います。
王「そうだろうそうだろう。巴がお前なんかを好きになるなど決して許されぬからな。」
王「それでだ!・・その、その時の巴は、ど、どういう格好をしていたのだ?」
え?えーと・・
下は黒いミニスカートに白いハイヒールを履いていました。
上は・・あれなんて言えばいいんでしょう。こう、鎖骨が見えて、すっとした感じの服だったのですが。
上下とも黒を基調としていて、いたずら好きのお嬢様みたいな雰囲気でした。
王「ぶふぁっ!」
王様が鼻血を吹いて倒れた。
お、王様!?大丈夫ですか!?
王「そそそ、その服は・・昔、私がプレゼントした服だ。」
王「巴に似合うと思いプレゼントしたのだが・・殴られてしまった時のだ。」
殴られたんですか。
王「ちょっとくらい・・ちょっとくらいミニスカートでもいいではないか!」
王「ミニスカートの巴・・うおおおお!見たい!!見たいぞ!!!」
・・がんばってください。失礼します。
他人が取り乱していると、なぜか自分は冷静になっちゃうよね。
王「待て!お主には巴にミニスカートをはかせる義務がある。」
・・・・義務?
王「爵位を送られれば、私とは主人とペットの関係になろう。」
主従の関係では?あとまだ送られていませんので。
王「やだやだ!巴のミニスカート姿見たい!」
王「見せてくれるまでここから動かないもん!」
そう言われましても・・わかりました。
できるかはわかりませんが、ミークルーガーを倒した後で頼んでみます。
王「よーし任せた。だが、覚えておくがいい。」
王「巴のビンタは痛いぞ。」
そして、王様は手形がついた頬を指差した。
あ、頼んでみたんですね。
王「ふっ、ミークルーガー退治より難しいと思え。」
イケメンはこんな変態セリフもかっこよく言うんだなぁ。
・・
・・・・
王様との有意義?な話を終え会議室を出たら、兵士さんがやって来た。
兵士「大変です!宝物庫で異変が起きました!」
俺と王様は顔を見合わせ頷き、宝物庫へ向かった。
・・・・
雫「父上、それに瑪瑙も来たか。」
宝物庫の前には雫さんがいた。
王「なるほど、異変だな。」
宝物庫・・その扉の一部が光っていた。
雫「宝物庫の鍵はここに。父上、開錠許可を。」
王「うむ、宝物庫を開けよ。」
雫さんが鍵を開け扉を開く。
・・ミニスカート姿かぁ・・えーやっぱり頼みづらいなぁ。
俺もまぁ、見たいけど。
雫「これは!」
王「剣が光っておるのか。」
それは、蛇の紋章が入った剣。
王「確かその剣は誰も鞘から抜くことができなかったものだ。」
雫「父上、これは瑪瑙のために作られた剣かもしれぬ。」
王「なにか知っておるようだな。よし、瑪瑙よ剣を抜いてみるがよい。」
は、はい。
俺は剣を手に取った。いきなり爆発とかしないよね?
剣「期待されてる!爆発しなきゃ!」
してません。爆発しないでください。
剣は・・するりと鞘から抜けた。
・・俺は剣をうまく扱えるわけじゃないけど・・役に立つのかな?
すると剣から光が飛び出し、壁に向かっていった。
王「なにかをさし示しているようだな。」
王「その方向は・・女神像!」
雫「行ってみよう!」
王様と雫さんを追って俺も女神像のある部屋へ向かう。
・・あのー、なんか俺殺人鬼みたいな気分なんですが。
剣抜いて人の後ろ走るってヤバい。
王「お前みたいな素人が殺人鬼を名乗るなどおこがましい。」
王「本物はガチ怖かったぞ。」
・・王様って大変なんですね・・
・・
・・・・
どうやら正解のようだ。
剣から放たれる光は、女神像の胸の位置で止まっている。
そういえば、この女神像はなんですか?
王「250年前に現れたミークルーガーを封印するために作られたものらしい。」
王「ここは6つの精霊様の力が強く影響している土地で、この場所がその中心。」
王「女神像は6つの力を集約して大きな力を発揮する・・だったかな。」
雫「父上、これと同じ女神像が瑪瑙の育った村にもあったぞ。」
雫「守護像として、また封印石様と意思疎通する媒体となったりした。」
王「なに!?」
19年前に封印石を作った工匠のひとりが作ったって聞きましたが・・
王「・・そうか・・まだいたのか・・」
雫「父上?」
いたって・・もしかして、女神像のモデルになった・・ジェミニって女の人?
王「250年前に何があったか・・当時の王は記録を残してはならないと厳命した。」
王「それは・・あの女のせいなのだ。」
どういうこと・・?
王「250年前の記録は、ひとつだけ王家が管理している。」
王「まあ・・巴が見つけたように、”中途半端なもの”は今でもたまに見つかるがな。」
王「焚書は・・あの女のことが書かれたものが対象だ。」
書いてはいけないような人なのだろうか?
王様は・・女神像を見ながら話し始めた。
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それは、250年前・・ミークルーガーが人類を蹂躙していた暗黒の時代。
ミークルーガーに成す術なく人々は絶望の日々を過ごしていた。
時の王は神に祈りを捧げるも救いはなく、ある日・・悪魔に救いを求める。
そして現れた女はジェミニと名乗った。
女は王にひとつの条件を出した。
ミークルーガーを討伐しないこと・・その条件を飲むなら封印する方法を教えると。
もし討伐してしまったら、より恐ろしいことになると女は言った。
王はその条件を飲んだ。
女は人の中から封印する力を持つ者を選び出した。
これが後に巫女の一族となる。
女は人の中から優れた工匠を選び出した。
この時の技術は工匠たちの間で伝承されていった。
女は工匠に自分の姿を模した女神像を作らせた。
この地は6つの精霊・・火、水、地、風、光、闇の力が大きく均等に配置された特別な場所だと。
精霊の力を以ってミークルーガーを弱体化させる・・女神像はそのコントローラーだそうだ。
さらに女は工匠に封印石を作らせた。
巫女が祈りを捧げ、封印石は完成した。
だが、ここでひとつ問題が起きた。
ミークルーガーを封印するには、弱らせる必要があると。
女神像を使い精霊の力で弱体化しても、人口の半分が犠牲になるくらい戦い続けなければならないと女は言った。
女は、ミークルーガーに人類を滅ぼされるよりマシでしょと言った。
だが、王は決断することができなかった。
女は、別の方法を提示した。
それは、スネークドラゴンをミークルーガーと戦わせるというもの。
その場合、人の犠牲はない、と。
しかし女は言った。
このやり方をする場合、スネークドラゴンとミークルーガーの両方を封印することになる、と。
すべてを見透かしたような女に、王は寒気を感じたそうだ。
女から居場所と説得方法を教わり、スネークドラゴンを動かすのに成功した。
・・予想外だったのは、スネークドラゴンがミークルーガーより強かったこと。
このままでは、ミークルーガーを退治してしまう・・
だが、激戦を繰り広げる両者に近づくことはできなかった。
もしミークルーガーを倒してしまったら、より恐ろしいことになる・・
王は女を見た。
女は・・小さく笑った。
それが何を意味していたのかは、わからなかったそうだ。
王の決断で、ミークルーガーを無理やり封印することにした。
しかし結果は・・スネークドラゴンもミークルーガーも封印してしまった。
女が言った通りの結果になったのだ。
それからすぐ女は姿を消した・・
―――――――――――――――――――――――――
えーと、人間に味方してくれたスネークドラゴンまで封印したのを隠したかったんですか?
雫「いや、そこではない・・これは今も表に出せぬ・・」
雫「あ、悪魔の力を借りた話じゃぞこれは!」
王「そうだ。実際にこの後は悪魔信仰が流行して問題となる。」
王「そのため時の王は焚書に踏み切ったのだ・・残してはいけない歴史として・・」
王「女は再び現れたか・・今度は・・何を企んでいる・・」
王様は、女神像を見て悲しい顔をした。
俺も女神像を見た。
こうして見ると、普通に綺麗な女の人って感じだけど・・
・・・・あ、剣どうしましょう。
女神像に向けて光っていますけど・・捧げろってことだとはわかりますが。
王「やってみよ。」
大丈夫かな・・俺は剣を女神像に捧げた。
?「対ミークルーガー戦の難易度を選択してください。」
?「1.ノーマル」
?「2.ハード」
?「3.ヘル」
・・は?
俺は王様と雫さんを見た。
ふたりとも眉をひそめ首をかしげた。
?「一番簡単なのがノーマルで、一番難しいのがヘルとなっています。」
?「自信のある方はヘルを、自信のない方はノーマルを、どちらとも言えなければハードがお勧めです。」
女神像から優しい声で淡々と説明される。
えーと・・とりあえずノーマルが安心ですかね。
雫「まぁ、そうじゃな。」
王「この質問自体が罠とかでなければよいが・・」
その場合はどうしようもないかと。
1.ノーマルでお願いします。
?「難易度【ノーマル】で受理されました。」
?「難易度を変更したい場合、もう一度剣を女神像に捧げてください。」
剣が返却された。
途中変更できるんだやっさしーい。
・・さっきの王様の話からなんでこんなことになってるの?
兵士「王!王はこちらですか!?」
部屋の方から声が聞こえた。
さすがに中までは入って来ないんだね。
王「ああ、すぐそちらへ行く。何があった?」
兵士「ミークルーガーが攻めて来ました!既に戦闘は始まっています!」
来たか・・
雫「わらわたちも急ぐぞ!」
俺たちは頷いてみんなの元へ向かった。
・・
・・・・