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25嵐の前の不思議


俺は外国や王都近くのお店で買ったお土産を大地主さんに持って行った。


大地主「わざわざありがとうございます。珍しいものをいただけて、今から楽しみです。」

お口に合えばよいのですが。


大地主「瑪瑙さんは中を見ましたか?」

いえ、見ていません。


大地主「では一緒に開けて中を見てみませんか?お茶をいれますので。」

・・俺は良いのですが、大地主さんはあまりそういうのを好まないと思ったのですが大丈夫でしょうか?


大地主「半刻(一時間)くらいなら。それに、瑪瑙さんとは一緒にいても苦痛になりませんので。」

そうですか、では少しお邪魔します。


・・

・・・・


大地主「・・すると、瑪瑙さんは自分の行いに自信がないわけですな。」


まぁ・・やっぱり、変ですかね。

俺はこの間のことを話していた。


大地主「私は変だとは思いません。むしろその性格はうらやましい限りです。」

性格がうらやましいだなんて、初めて言われました。


大地主「これは私の持論なのですが・・」

大地主「瑪瑙さんは、どの様な人が地獄へ行くと思いますか?」


え?

・・超神さんとその辺りの話をしたっけ。


私欲のために行動する人だと思います。


大地主「そうですか。私とは考えが違うようですね。」

大地主「私は、心の悪しき者が地獄へ行くと思っています。」


心の悪しき者・・結局は、私欲のために行動する人ではないですか?


大地主「違います。昔、落ちているものを拾ってはならないという法が作られました。」

大地主「雨の日に落ちていた傘を使った者がさらし首となり、それから誰も落ちているものを拾わなくなりました。」


大地主「ですが民は心を入れ替えて拾わなくなったのではなく、罰を恐れただけのこと。」

大地主「行動は変わっても、心は変わらず。」

大地主「例え罪を犯してなくとも、心が悪なら地獄へ行くというのが私の持論です。」


なるほど、根拠はありますか?


大地主「心が悪だからこそ地獄の苦しみを味合わせるのであり、そうでなければ苦しませる意味がありません。」

大地主「例えば悪漢共に愛する妻をさらわれそうになった男が悪漢共を殺したとしましょう。」

大地主「この男は死後殺人の罪で地獄へ落ち地獄の苦しみを受けたら、考えを変えるでしょうか?」


・・まぁ、変えないでしょう。


大地主「では、悪漢共に愛する妻をさらわれそうになったら、力づくで奪い返すのは間違いだと思いますか?」

大地主「相手は悪漢共・・複数です。こちらはひとり。悪を行う悪漢共に対し、殺さないよう手加減して救えると思いますか?」

大地主「話し合いが通じると思いますか?さらわれた後で役人へ訴えたとして、愛する妻が無事なまま帰って来ると思いますか?」


まぁ、死に物狂いで救おうとしますし、役人に言っても悪漢共を特定して捜して奪い返して・・時間かかりますよね。


大地主「悪漢共を特定できるかわからないでしょう。捜して見つかるかもわからないでしょう。」

大地主「奪え返せるかも、無事に奪い返せるかもわからないでしょう。」

大地主「もしそれで地獄の苦しみが与えられるというなら、その神は邪神としか思えません。」


それはわかりました。

しかし、心が悪でも悪事をしていないのに地獄へ落とされたらたまったもんじゃないと思いますよ。


大地主「いいえ、心が悪なら物事の考え方は悪に準じるでしょう。」

大地主「神はそれを見抜き正当な地獄の刑罰を加えるはずです。」


なるほど・・ところで、なぜこの話を?


大地主「瑪瑙さんは優しい心を持っておられます。」

大地主「その心に従っていれば、必ずや天国へ行けるでしょう。」

大地主「それを、うらやましいと言ったのです。」


俺の性格をうらやましいと言った理由なのか。

しかし、大地主さんとて親切で国を想い民を想い穏やかで優しい心を持っているじゃないですか。

大地主さんだって天国へ行けますよ。


大地主「いえ、私の心は醜い化け物になってしまいました。」

大地主「以前講演した通り、この国が、人が、憎くてたまらないのです。」

大地主「殺したくてしょうがないのです。年月が経つほど、また夜になるとその気持ちはさらに強くなります。」


大地主「そしてそれが・・なんと心地よいのでしょうか。」

大地主「憎しみを抱けば抱くほど、地獄のような日々の苦しみがやわらぐのです。」

大地主「どうやって人を殺そうか考えると、とても楽しい気持ちになれるのです。」


大地主「こんな私を・・神様は地獄へ落とすでしょう。」

泣きながら言う大地主さんに、俺はなんて声をかければいいかわからなかった。


・・

・・・・


王国への要求は、みんなの意見を総合して第二版を作ることになった。

みんなが作ってくれる間、俺は・・再び故郷の村にある女神像へ向かった。


大地主さんの言葉がずっと気になってしょうがない。

地獄へ落ちるは心が悪か行動が悪か。

悪魔王さんも超神さんもあれから会えないし・・というわけで女神像です。


あれ?


村は相変わらず廃村・・なのだけど・・

まだ遠いからはっきり見えないが、女神像が無くなってて、代わりに女の人がいる。


・・女の人がこちらを向いた。

なにか俺は、得体のしれないものを感じた・・


・・

・・・・


近くへ行くと、さらに不気味なものを感じる。

女性の容貌は、女神像に瓜二つだった。


女神像が人の姿になられたか、天魔が俺をたぶらかそうとしているのか・・


?「待っていたわ。」

俺を?


?「命尽きた後を決めるは天の領域。」

?「人の言葉に何の意味もない。」

?「ただただ、生きなさい。」


え・・すみませんどういうことですか?


?「死後のことは神様が決めることだから、人間が何を言っても無意味ってこと。」


?「そして人は必ず死ぬのだから、それまで生きていればいい。」

?「生きるのに理由はいらないわ。無条件に生きていいの。」


?「どう生きるかは、自分で決めなさい。それがあなたの人生と呼べるものになる。」


?「神様はあなたたちに完璧を求めない。」

?「もし求めるなら、最初から完璧な存在に作るわ。」

?「間違ってもいい、前へ進んで。時には引いて。」


まだよくわからないけど、もっと翻訳してとは言いづらい。

俺が勉強しないといけないのかな。


?「ミークルーガーへの対抗手段はひとつだけではない。」

?「王国にもいくつかある。」


?「王国は長い間、ミークルーガーの対抗策を研究してきた。」

?「強力過ぎて制御しきれないもの、効果が不安定なもの、条件が厳しすぎるもの・・」

?「リスクが高すぎるだけ。」


・・王国が滅びるくらいなら、それを使う・・か。

なら、王国はミークルーガーをそれほど恐れていない?


?「力に頼り過ぎてはいけないとゴーレムも言っていたでしょう?」

?「あなたの力を試してあげる。」


え?うわっ!!

前方から見えない衝撃を受け、俺は後ろへ吹き飛ばされた。


?「この子を倒してみなさい。」


魔法板!

女の人は・・なんだろうあれ?

変なものを召喚した。


?「これは戦車と言うのよ。戦う車ね。」


軍馬に荷台を引かせ、荷台に兵士が乗るものを戦車と呼ぶのは知ってるけど・・

これは・・全然違う。

まぁいい、ゴーレム召喚!お願いします!


?「全力で来ないなんて余裕ね・・死んでから後悔しても知らないわよ。」

ドオオオオオン!!!


けたたましい音がして、ゴーレム兵が吹き飛んだ。

な、なにが起こったんだ!?


?「この戦車は重力をエネルギー源にして、空気中の水を圧縮して打ち出すわ。」

?「あなたに勝てるかしら?」


重力自体はエネルギーを発するわけではないって本に書いてあった気がしたけど。

それに・・水?

ただの水でゴーレムを倒したのか・・?


こいつは・・強い!

ノーライフ召喚!空間兵召喚!

ノーライフを壁にして、空間兵で遠距離攻撃だ!


?「水を武器にするとこういうこともできるのよ。」

ドオオオオオオン!!!


これ、すげえうっさい・・あれ?

なぜか空間兵がやられていた。


?「水は形が自在だから、小さな水の弾を一度に発射したのよ。」

?「いわゆるショットガンね。」


範囲攻撃・・弓の斉射みたいなもの?

つ、強いなんてものじゃない!こいつは・・・・ミークルーガー並みだ!


キメラ!バジリスク!ノーマル!

・・ミークルーガー召喚!!・・あれ?


ミークルーガーが出ない。


?「これは私の作った封印石・・封印石から召喚する能力を封印するものよ。」

ドオオオオオオオン!!!


そんなのあり!?


?「いくらミークルーガーが強くても、封印石は人間が作ったもの。」

?「ミークルーガーを御するのに特別な力が必要でも、人の作ったものは普通の力でなんとかなるわ。」

ドオオオオオオオン!!!


なるほど・・つまり・・

一度召喚したらずっと召喚したままにすればいいんだ!!!

・・いや違うか。


?「もっと考えなさい。その度にあなたは強さを得る。」

ドオオオオオオオン!!!


いやでも・・ノーライフ以外みんなやられたんですが・・


?「ならここまでにしましょう。」


すごい人だ・・戦車もすごいけど封印石まで作ってしまうなんて。

あれ?でも封印石の材料はもうないから王国は作れなかったのでは・・?


?「これ?すぐそこに落ちてた石で作っただけよ。」

?「特別な封印石でなければそれで十分。アリを倒すのにゾウを用いたりはしないでしょう?」


まぁ、はい・・


?「また会うこともあるかもしれないわ。それまで元気でね。」


あ、ま、待ってください!まだ聞きたいことが・・いや特にないか。

色々教えてもらったもんな。今はただ感謝しよう。


目を閉じ手を合わせ、女神像に似た女の人に感謝した・・んだけど・・

目を開けて、それを見る。


戦車「・・」


置いていったよあの人!!!

こんなヤバいの放置かよ!!


戦車「仕方ないね。ここの責任者誰?」

まぁ、うちの領地だから・・俺になるのかなぁ。


戦車「落とし物なんで預かってて。普段は魔法板に入っとくから。」

戦車「たまに手伝うんで預かり賃は勘弁してね。」


そして普通に喋るし。


・・

・・・・


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