16対決!ミークルーガー(後編)
雫さんが祈りを捧げると、海は静けさを取り戻した。
これでミークルーガーのいる小島へ行ける!
・・
・・・・
レイン「小島まで来てから聞くのもなんだけど、ミークルーガーって強いの?」
俺が聞いた話だと、こちらが1回攻撃する間に6回攻撃されるとか。
クー「スピードタイプですか。油断するとあっという間に戦線が崩壊されますね。」
クー「うまくおとりにひきつけられればよいのですが。」
不死のノーライフさんでなんとかならないかな。
クー「それより逃げられたりしないか気になります。」
雫「封印されているなら大丈夫じゃ。封印石から大きく離れられないようにする。」
エティー「波状攻撃で、ミークルーガーを必ず追い詰めましょう!」
がんばるぞー。
?「・・出迎えとはごくろうなことだな。」
ミークルーガー!?
ミークルーガー「封印はまもなく解ける。その時はお前たち人間を皆殺しにしてやろう。」
ミークルーガー「250年も封印されてどれだけ苦痛だったか・・我の苦しみを味わうがいい!」
クー「暴れたら封印くらいされるでしょう。」
エティー「今度は倒します!」
レイン「・・ヤバい空気を感じるわ。気合い入れなくちゃね。」
ミミット「民のため、化け物は退治しなければ!」
雫「みな準備はよいか?封印を一部残して解き放つぞ。」
戦うのむっちゃ怖いけど準備はできています!
雫さんが何か唱えると・・風が止まった。
そしてすぐに、”それ”は現れた。
レイン「なにこれ・・」
クー「人型でも、獣型でも、虫でも植物でも魚でも鳥でもない。」
ミミット「化け物・・」
エティー「これが・・ミークルーガー・・」
その姿を言葉で形容することはできなかった。
とても自然物には見えない。
どこが頭かも、どれが足なのかも、手も耳も目もどれなのかわからない。
雫「封印は一部を除いて解いた。もう倒すしかないぞ。」
えーい、やろうみんな!
ミークルーガー「愚かな人間に、我の力を見せてやろう!」
え!?
ミークルーガーが、6体に増えた!?
1回攻撃する間に6回攻撃されるってこういうこと?
キメラ・バジリスク・ノーライフ・ノーマルじゃあ防ぎきれない!
ミークルーガー「ぐぅっ・・こ、この力は・・別の封印石!?まさか・・」
6体に別れたミークルーガーが、5体に減った。
よくわからないけど、弱体化はしているのかな?
それでも全然安心できないけど。
・・
・・・・
1回攻撃する間に6回攻撃される・・それは、5体に別れたミークルーガーが【それぞれ6回攻撃する】ということだった。
速い!それに強い!
超神さんや悪魔王さんから借りた兵たちはともかく、人間の兵ではたちうちできない。
・・わがまま、だったな。
強敵相手に本気を出さないだなんて、もっと早く気付けば被害はもっと少なかったはず!
お前の力が必要だ。
力を貸してくれ!
ゴーレム召喚!!!
その名を呼ぶと、ゴーレム兵と魔法板が現れた。
・・久しぶり。
お前を悪魔王さんから借りてから、俺の冒険は始まったんだよな。
駒は揃った!
5体に別れたミークルーガーを、ゴーレム・キメラ・バジリスク・ノーライフ・ノーマルがそれぞれ受け持つ!
みんなは援護してくれ!空間兵はミークルーガーを1体ずつ確実に仕留めろ!
レイン「あら、懐かしい子じゃない。」
ゴーレム「あなた様のために馳せ参じました。」
レイン「ありがと。」
ゴーレムさん?あの、あなたの主は悪魔王さんか俺じゃないの?
レインとゴーレムの連携、空間兵を操るクーさんの活躍で、5体に別れたうちの1体を倒した。
クー「見事です。ミークルーガーを倒せるのは軍団一の火力を持つあなたしかありえません。」
クー「ミークルーガーの猛攻から仲間を守るために、その力を大いに振るってください。」
空間兵「かしこまりました、マスター。」
お前も喋れるんかい!
そうこうしているうちに、空間兵がもう1体のミークルーガーを倒す。
超遠距離からの高威力攻撃つええ。
ミークルーガー「く・・くそおおおおおおおおおおおおおお」
ミークルーガーが、1体に戻った。
ミークルーガー「人間が・・人間なんかが・・力が入らない・・原因は・・・・お前か!!!」
ミークルーガーが、こちらを向いた。
100メートル以上の距離を、一瞬で詰めてくる!
ミークルーガー「死ねえええ・・うわあああああああああああああ」
・・なにが起きたかよくわからなかった。
俺に向かって来たミークルーガーが、俺の左目に吸い込まれた。
静かになる。
みんな状況がよくわからないようだ。
雫「まさか・・19年前に封印石を埋め込まれた赤子・・?」
クー「なるほど、女神像のところで聞いた”19年前の計画が始まる”とはこのことでしたか。」
クー「瑪瑙が19年前の赤ちゃんだと気付いていたわけですね。」
レイン「もう一度女神像で話を聞いてみない?私たちの知らないことを知っているのかもしれないわ。」
俺たちは頷き、とりあえず小島から引き上げた。
・・
・・・・
再び女神像へ。
女神像から声が聞こえる。
?「よくぞミークルーガーを封印した。」
雫「あなたは・・瑪瑙の左目に埋め込まれた封印石様ですね。」
そうなの?
封印石「はい。19年前に起こったことを私はすべて見ていた。」
封印石「当時何があったかを、話す時が来た。」
封印石「・・すべては、工匠のひとりが真実を知ったことから始まった。」
封印石「工匠たちは、赤子を生贄にしてミークルーガーを殺すことを知らなかったのだ。」
封印石「偶然真実を知った工匠のひとりは、赤子を連れ逃げ出した。」
封印石「・・しかし工匠はどうすることもできなかった。」
封印石「いずれミークルーガーは復活する。そうなれば、より多くの人が犠牲になる。」
封印石「工匠にミークルーガーを倒す力はない。赤子ひとりの犠牲で済むなら・・そう悩むようにもなった。」
封印石「・・ひとりの女性が工匠の前に現れた。」
封印石「女はジェミニと名乗った。長い黒髪の美しい女性だった。」
封印石「女は工匠に道を示した。それが19年前に作られた新たな計画。」
封印石「・・それは、赤子の手でミークルーガーを倒すもの。」
封印石「赤子を地方の夫婦へ里子に出し、戦うための剣と守るための女神像を作った。」
封印石「赤子が立派に成長してミークルーガーを倒し封印する。そのための準備。」
封印石「・・王国と巫女の一族はひとつ大きなミスを犯した。」
封印石「封印石に適応する赤子を使ったのは、2つの理由から。」
封印石「ひとつは封印されたミークルーガーが赤子を殺さないため。」
封印石「封印されるとミークルーガーは赤子と同調して自身と赤子を錯覚するようになる。」
封印石「それにより、ミークルーガーは赤子を攻撃できなくなる。所定の儀式で赤子を殺すとミークルーガーも死ぬのはこれを利用する。」
封印石「もうひとつは封印されたミークルーガーを利用させないため。」
封印石「同調すると、ミークルーガーを使役できるようになってしまうのだ。」
封印石「だが赤子であれば、ミークルーガーを使役したりはしない。」
封印石「・・王国と巫女の一族のミスを逆手にとり、成長した赤子にミークルーガーを使役させる。」
封印石「・・・・それだけだ。」
あれ?使役させた後は?
封印石「工匠に道を示した女は言った。赤子が自由に決めればいい、と。」
封印石「復讐するも、欲望のまま生きるも、すべては・・王国の行いによって決まる。」
雫「・・」
封印石「あとはお前たちも知っているだろう。」
封印石「役割を終えた工匠は、赤子を王国の目から逸らすために自らをおとりにして命を絶った。」
封印石「赤子は成長し、そして・・ああ、見事ミークルーガーを封印した!」
あのー、工匠さんは女神像の他に剣も作ったって言ってませんでした?
それ知らないんですが。
封印石「蛇の紋章が入った剣だ。対ミークルーガー専用の剣。」
封印石「まだ手に入れてないの?・・まー勝ったからいいじゃん。」
いい・・のか・・?まぁいいのかな?いやぁやっぱり・・うーん、わからない。
クー「女性はジェミニと言うようですが、女神像の名前と同じです。」
封印石「女神像のモデルはその女だ。名前も頂戴したのだろう。」
クー「その女性はその後どうなりましたか?」
封印石「わからない。だが・・すべてを見通しているような、そんな女だった。」
レイン「瑪瑙の左目があった場所にあなたが埋めこまれているのよね?」
レイン「元々の左目はどうなったの?」
封印石「・・王国によって潰された。仮に残っていても、もう元には戻せない。」
レイン「そう・・」
心なしか左目が痛いような・・気のせいか。
エティー「とんでもない計画だ。」
エティー「王国の計画を逆手にとり、最高の一手を犠牲にされた赤ん坊に与える。」
エティー「その女は、神か悪魔か・・」
王国からすれば悪魔になるのかな。
俺からすれば神様・・女神様?
会ったことないけど。
ところで、所定の儀式で俺を殺せばミークルーガーも殺せるんだよね?
なら、普通に俺を殺したらどうなるの?
封印石「ミークルーガーが復活する。」
封印石「寿命で亡くなっても復活する。左目から封印石を取り除いても復活する。」
封印石「王国は暗殺できず、魔法板と違って奪うこともできない。」
・・結構危険じゃないそれ?
封印石「死んだ後のことまで気にしてどうする。」
いやそれでも、残された人のことくらい考えると思うけど。
そういや封印石と俺には呪いがかかってて、呪いの影響で精神に影響があるんだよね?
で、ミークルーガーを封印したらその影響も受ける・・って以前聞いたけど、あまり実感ないよ?
封印石「呪いの影響は・・・・たぶん、お人好しすぎるところかなぁ。」
レイン「わかる。」
クー「微妙な影響ですね。」
封印石「ミークルーガーの影響は、少しずつ出てくる。」
封印石「邪悪な力に心が蝕まれていくだろう。」
封印石「だが気にすることはない。すべては王国がまいた種だ。」
・・・・すっごく気にしますが。
とはいえ、人の心はそう簡単に変わるものなの?
封印石「お酒を飲んでも酔いに抵抗できるか?」
封印石「空腹でもイライラせずにいられるか?」
封印石「人は、それほど自分を制御できない。」
わからないわけでもない。
・・今は・・自分で自分を制御できてるよね?
兵士「た、大変です!外国が攻めて来ました!」
えええ、ミークルーガーを封印したばかりなのに。
クー「兵をここに集中させていたのがバレたようですね。」
クー「迎撃しますか?」
もちろん!
俺たちのやることは変わらない。
領民のためにできることをしよう!
・・
・・・・