14王国と外国
クー「これで心置きなく王国と戦えますね。」
慰労会も終わり、地図を広げ今後の予定を話し合っている。
王国がこの国の半分、俺たちは3分の1ほどを支配している。残りは反乱や独立した他のとこ。
レイン「王国と戦うだけの十分な強さがあるわ。」
クー「他の独立勢力と協力すれば王国とも十分戦えます。」
雫「これまで王国の指示通りにやって来たではないか。」
雫「このまま協調路線でも問題なかろう。」
そういえば・・次の指示は来ていないんですか?
雫「わらわのところには来ておらぬ。」
エティーさんのところへは?
エティー「・・それが・・」
なにか来ている予感。
エティー「外国を倒せと・・」
外国!?
クー「それは無理ですね。」
クー「外国とやり合うだけの体力はこちらにありません。」
クー「王国と違って遠すぎます。必ず戦線を維持できず敗退します。」
体力って、資金とかそういうのだよね?
レイン「逆がいいんじゃない?外国とは和を結び王国と戦う。」
レイン「王国は信用できないわ。」
俺たちって外国と敵対してない?
レイン「私たちが敵対したのは自国の反乱軍。」
レイン「しかも向こうが先に攻めて来たわ。戦う理由がこちらにはあった。」
レイン「外国軍が来る前に片をつけたし、外国とは争ってない。話し合いの余地はあるわ。」
そういえばそうだね。
エティー「外国など信じられるか!利用されて必要なくなればトカゲのしっぽ切りされるだけだ!」
レイン「王国から受けている仕打ちがまさにそのルートじゃない?」
クー「そうですね。利用されているだけで、王国は私たちに何をしてくれましたか?」
クー「偉そうに命令だけして、ゴーレムを奪うよう命令して・・恨みはあれど恩はありません。」
クー「そもそも私たちの村が滅びても王国は何もしてくれませんでした。奪うだけなら賊と同じです。」
エティー「王国が隅から隅まで全てに目を向けられるわけではない。」
エティー「そのために領主官憲を置いている。」
エティー「しかるべき機関があるのに利用せず嘆いているだけではないのか?」
クー「機関を置くことは手段でしかなく、目的は国の安泰です。」
クー「あなたは目的と手段を取り違えています。」
クー「目的に辿り着いていない以上、その手段には欠陥があります。」
エティー「なんでも王国に任せてもうまくいくわけないだろう。」
エティー「王国とて民の協力があってこそ十二分に活動できるのだ。」
エティー「領主や官憲が仕事をせず住民が勝手なことをしていたら、王国とて動きようがない!」
クー「その領主や官憲は王国が任命した人材でしょう。」
クー「仕事しないならその責任は王国がとるべきです。」
クー「何のための王族ですか!誰のための王ですか!」
雫「・・」
ドドドドドドンッドンッバンッ
領主「おいうっせーぞ。寝てるんだから静かに・・おいオレがイケメンだからって熱いまなざしで見つめられたら照れるって。」
ミミット「イケメン・・?」
クー「仕事してください。」
領主「・・・・瑪瑙、説明!」
王国と外国、どちらを次の敵にするか紛糾していまして。
その過程で仕事しない領主がいるって話になってます。
領主「お、オレは仕事してるぞ!あー忙しい忙しい。」
領主様はそそくさと部屋を出て行った。
エティー「あれは何をしているのですか?」
領主様は夜遅くまで仕事しているんですよ。
夜に外へ出かけるのをたまに見かけますし。
レイン「遊んでいるに一票。」
クー「私も一票。」
雫「夜の店へ行ってるのは知っておる。一票。」
エティー「追い出した方がいいと思います。一票。」
ミミット「追い出すのに同意します。一票。」
あれ?みんなの心が初めてひとつになった?
まぁまぁ、締めるときはちゃんと締める方ですし、ここの独立も領主様の決断だったんですよ。
エティー「なら今後の方針も決断してもらいたいものです。」
エティー「独立したとはいえ、領主であれば王国の事情はわかるでしょう。協調路線を望むはずだ。」
クー「いえ、王国から独立したのであれば、共に歩むことは不可能です。」
クー「王国から信用されないことは領主自身がわかっているでしょう。」
レイン「王国より良い国を作りましょう。」
レイン「理想の国は自分たちで作らなくちゃね。」
雫「今ある悪い制度を改め、良い制度は残す。」
雫「ひとつダメなら全部取りかえる・・では、真面目にやっている者たちが報われぬ。」
ミミット「王国との協調は、王国の権力を守るためであってはいけません。」
ミミット「地方を軽視するなら、王国の権力を小さくして地方に権力を委譲してもらわなければなりません。」
みんな色々考えているんだなぁ。
俺たちの戦いはこれからだ!
~完~
クー「なに逃避しているのですか。あなたが決断するのですよ。」
やっぱり?そんな気はしてた。
レイン「独立前からあなたがまとめ役をしてたんでしょ。」
レイン「あなたの決定をみんな尊重するわ。」
エティー「瑪瑙殿の功績は十分すぎるほどだ。」
エティー「しかし一度の失敗ですべてを失うこともある。」
エティー「正しい決断を望む。」
ミミット「私たちに期待する人は大勢います。」
ミミット「その期待を裏切らないためにも、民に寄り添った決断をすべきです。」
雫「最初にここへ来たときは、利用するつもりでいた。」
雫「だが、驚くほどの成果を上げ、今や王国に匹敵する存在になりつつある。」
雫「もはや利用しようとは思わぬ。その行く末をわらわに見せてほしい。」
保留でお願いします!
レイン「手遅れになる前に決断してね。」
・・
・・・・
あれからどんなに悩んでも答えはでない。
王国に従って外国と戦えば疲弊するだろう。そしたら王国が攻めてくると思う。
王国と戦えば外国が隙をついて攻めてくるだろう。
どちらとも戦わない・・でも、いずれどちらかが攻めてくるはず。
そしたらもう片方とも戦うことになるだろうから・・みんな同じやんけ!
悪魔王さーん、超神さーん、助けてくださーい!
配達員「瑪瑙さーん、郵便でーす。」
あ、いつもありがとうございます。
2通・・悪魔王さんと超神さんからだ!!!
俺は、まず悪魔王さんの手紙を読んだ。
「ずいぶん悩んでいるようね。」
「あなたは厳しい道のりを歩んでいるわ。決断を下さなければならないことも多い。」
「選択肢に正解があるとも限らない。全部正しい場合も、全部間違いの場合もあるわ。」
「他にも選択肢があるかもしれない。」
「・・逃げてもいいのよ。あなたがすべてを背負う必要なんてない。」
「でもそうね、人はいつもすべてを解決する選択肢”妙手”を狙っている。」
「妙手は・・そう簡単には見つからない。」
「正しいかわからない選択肢たち。」
「その中にあなたの妙手が眠っているかもしれないわ。」
「諦めないで。」
「あなたは困難に立ち向かうための実力はついている。」
「どんな結末を遂げても、私はあなたを褒めてあげるわ。」
悪魔王さん・・わかりました。
最後まで俺、がんばります!
超神さんの手紙は・・
「手紙でごめんなさいね。これ以上はあなたを甘やかすことになってしまうの。」
「必要以上の甘やかしは、あなたの成長を阻害してしまうわ。」
「必要なものはすべて揃っているはずよ。」
「あとはあなたの意思が未来を作る。」
「いつも未来は不確定。」
「不安になってしまう、足が前へ進むのを嫌がってしまう。」
「よくわかるわ。みんなそう。」
「組織が大きくなれば、守りに入ってしまいたくなる。」
「楽な道へ進みたくなる。新しい道が見えなくなってしまう。」
「それでも前へ進まなければ得られない結末がある。」
「あなただけ納得してもだめ。」
「あなたの仲間もみんな不安なの。」
「これまで私があなたを導いたように、あなたがみんなを導くの。」
「もし悩むことがあれば、その中に正解がないのかもしれない。」
「気分転換をして頭の中をクリアにしましょう。新しい答えが見つかるかもしれないわ。」
「あなたは優しい人。」
「あなたの決断は、優しい答えになる。」
「どんな結末を遂げても、私はあなたを認めてあげるわ。」
超神さん・・ありがとうございます。
俺の決断でみんなを幸せにしてみせる!
超神「こんにちは♪」
あ、こんにちは超神さん!
俺、がんばります!・・・・ん?
超神さんは、そのまま客間へ入っていった。
ちょちょちょちょっと!?
・・
・・・・
失礼します!
客間へ入ると、超神さんと悪魔王さんがいた。
悪魔王「はーい♪」
超神「座って。カモミールティーを用意してあるわ。」
あ、はい。
お茶を飲む・・ほんのり甘い・・ハチミツですか?
超神「ええ。カモミールティーは少し苦みがあるから。」
へぇ・・いやそうじゃなくて!
なんでいるんですか!?いえいていいんですけど!
手紙!手紙!
超神「書いてある通りよ。あなたに必要な力は全部授けた。」
超神「これ以上は甘やかしにしかならないわ。」
悪魔王「というかいちゃもんつけられてね。」
いちゃもん?
悪魔王「超神が悪いのよ。天使の計画に横やりを入れようだなんて言ってくるから。」
超神「はーあ?悪魔王だってノリノリだったじゃない。」
悪魔王「あー超神に騙されたー。マジ最悪。」
超神「だってジェミニがあそこまで怒るとは思わなかったんだから。しょうがないでしょ!」
悪魔王「悪いのは全部超神だから。その辺ちゃんと理解してね。」
超神「また私のせいにする!あなたのそういうとこ大っ嫌い!」
悪魔王「私だってあなたなんて大嫌いよ。役に立たない世界のゴミ。」
超神「言ったわね・・勝負よ!」
悪魔王「返り討ちにしてあげるわ。」
え?え?え?
な、なんでそうなるの!?
悪魔王「勝負内容は、どちらがこの人間の役に立ったか!」
超神「ふふん、私の圧勝ね。」
・・超神さんと悪魔王さんが俺を見る。
おや、俺の心が警鐘を鳴らしている気がする。
悪魔王「どっち?」
超神「もちろん私よね。」
えーと、おふたりにはとても良くしていただきまして・・
同じくら・・
超神「同じくらいって言ったらその瞬間墓の中よ。」
悪魔王「いやねぇ、私の方が役に立ったって言うしかありえないでしょ。」
えーとぉぉぉ。
超神「簡単なことでしょ。死ぬか私の方が役に立ったと言うかどちらかなんだから。」
選択肢とは一体・・
悪魔王「いいこと教えてあげる。今夜屋敷の空き倉庫に隠れていると・・」
超神「それ反則!はい悪魔王の反則負け!」
悪魔王「ルールはただひとつ。この人間が選んだ方の勝ちってだけでしょ。」
超神「それでジェミニがブチ切れたんじゃない!絶対これ神の案件よ!」
悪魔王「あまり影響のないことなら構わないわよ。むしろ天使ならジェミニより・・」
こんこん、こんこん。
窓ガラスを小さな女の子が叩いている。迷子かな?
超神「・・・・急用を思い出したわ。」
悪魔王「・・・・しばらく身を隠すわ。」
え?え?
悪魔王さんと、超神さんが・・・・いなくなった。
えーと・・とりあえず窓を開けた。
何か用?
るーしー「用事が逃げた。追いかける。」
るーしー「・・あのふたりを、同レベルに評価してはいけない。」
そう言って、女の子は行ってしまった。
???なんだったんだ???
・・
・・・・
今夜屋敷の空き倉庫に隠れていると・・か。
いや全然興味はないよ。
でもほら、一応教えてもらったんだからやってみないと失礼じゃないですか。
世の中には他人にアドバイスを求めておきながら、受けたことを実践しない人もいるとか。
相手の時間を使わせておいて無駄にするとかいけないと思うんですよね。
だから俺が空き倉庫に隠れているのも礼儀というわけで。
エッチなことが覗けるだなんて考えてないよ。
とはいえ・・誰と誰だ?
俺以外の男性って領主様しかいないけど・・いやひとりでするのかもしれない。
女性同士の可能性もある。
こつ・・こつ・・
来た!
足音は・・・・ふたつ。
・・
・・・・
雫「わざわざこんなところで話をしなくても、いつものように部屋でいいのではないか?」
柚月「いえ、巴様が王国側の人間だというのは周知の事実でしょう。」
柚月「部屋は盗聴されている可能性があります。」
雫「それは、聞かれては困る話をするということか?」
柚月「・・外国へ攻めそうですか?」
雫「まだわからぬ。外国と戦うほどの力はない。」
柚月「そうですか・・もしや、王国へ攻め込むようなことは?」
雫「・・」
柚月「言えないということは・・大体わかりました。」
柚月「もし、王国へ攻め込むようなことがあれば・・・・」
柚月「瑪瑙を殺してください。」
雫「!?」
柚月「戦闘を見させてもらいました。」
柚月「ゴーレムに劣らぬ強力な兵をお持ちの様で・・」
雫「すべて瑪瑙の所有物だ。」
柚月「瑪瑙を暗殺したら、それらの兵も王国へ持ち帰ってください。」
雫「・・お前たちは、人をなんだと思っている!!!」
柚月「お静かに。人が来てしまいます。」
柚月「ここと王国が争えば、外国の益にしかなりません。」
柚月「どちらかが残り、どちらかが消えなければならないのなら、王国が残るべきでしょう。」
雫「瑪瑙は村を滅ぼされ家族を亡くしておる。」
雫「何もしない王国が詫びを入れるならまだしも、殺せと言うのか?」
柚月「小さき者をいちいち相手にしていては、大事は果たせません。」
柚月「人ひとりが使える時間は1日24時間。一生は約80年。」
柚月「限られた時間を小さき者のために使えば、他に使う時間が減るのです。」
雫「瑪瑙とて国民であろう。大も小もなく、人は人だ。」
柚月「違います。庶民ひとりと王族ひとりの価値が同じではないように、人はそれぞれ価値が違います。」
柚月「より価値の大きい者を優先して当然なのです。」
雫「その様な考えだから各地で謀反や反乱が起こったのではないか。」
柚月「巴様はまだお若い・・”燕雀安んぞ鴻鵠の志を知らんや”」
雫「自分の都合を相手に押し付けるための言葉としか思えぬな。」
柚月「国家とは芯を守れば如何様にも立ち直れます。」
柚月「国家の芯とは王族であり、王族以外の国民は国家のために尽くし、時には犠牲になってでも国家の繁栄を支えなければなりません。」
雫「そんな馬鹿な話があるか!」
柚月「お静かに・・王家が民を憂い、民が王家に忠誠を誓う。それが正しい形です。」
柚月「瑪瑙にはそのための犠牲になってもらうだけです。」
雫「ならばわらわは王族として・・瑪瑙を憂うことにしよう。」
雫「殺すことなどできぬ。」
柚月「・・わかりました。ではエティーに命じておきます。」
雫「これまで瑪瑙は王国の指示に従って来た。」
雫「ならば相応の待遇を与えるのが道理ではないか。」
柚月「王国に逆らった者を優遇するわけにはいきません。」
雫「優遇ではなく、働きに対する正当な対価じゃ。」
柚月「なら・・外国を倒してください。」
柚月「国内問題を片付けても、マイナス評価が0に近づくだけです。」
柚月「外国を倒し王国の領土を広げてこそ評価されるのです。」
雫「・・」
柚月「今日はこれで失礼します。」
柚月「巴様・・あまりここの連中に感化されぬよう・・」
雫「余計なお世話じゃ。」
エロい話じゃなかった。
それにしても・・雫さんも大変なんだな。
俺に何かできることはないだろうか?
・・
・・・・