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11ミークルーガー


夜。


こんこん、こんこここん、こんこん。


雫「柚月か?」

柚月「はい。巴様の活躍、王国も大変満足していました。」


雫「エティーにはゴーレムを王国へ渡すよう命令していたようだな。」

柚月「・・エティーが話されましたか。」

雫「いや、別ルートじゃ。」


雫「あのゴーレムは元々瑪瑙のもの。返してもらうわけにはいかぬか?」

柚月「私の一存では何とも・・それに、そう簡単に手放すとも思えませぬが・・」


雫「とにかく伝えとくように。そもそも各地で反王国の動きが活発なのは王国の非道な政治のせいじゃぞ。」

柚月「わかりました。」


柚月「それと王国より”さらに西の地にて外国の支援を受けし反乱軍を討伐せよ”とのことです。」


雫「わらわはそんな仕事をするために出向いているわけではないのじゃが。」

柚月「申し訳ございません。私には王国の言葉を伝えることしかできません。」


雫「わかっておる。王国へは、期待するなと返事しておいてくれ。」

柚月「かしこまりました。」


雫「あと・・お主は誰の命令で動いておるのだ?」


柚月「・・それは・・失礼します。」

音も無く使者は姿を消した。


雫「母上のお庭番ゆえに母上の言葉と思っておったが、そうとは限らぬようだな。」


・・

・・・・


闇の定例会議。


雫「昨日王国からの使者が来た。」

クー「また何かさせるつもりですか?」


雫「その様だ。ここよりさらに西の反乱軍が隣国の支援を受けているそうだ。そこを討伐しろと言ってきた。」


エティー「え!?」

どうしました?


エティー「あ、いえ、私のところにも柚づ・・王国の使者が来まして、東の反乱軍を討伐しろ、と。」


ミミット「真逆の方向ですね。」

レイン「両方はきつくない?戦線も横に広がって分断されやすくなるし。」


片方だけを相手にするなら、西の反乱軍かなぁ。

外国の介入はなんとなく不安になる。なんでかはよくわからないけど。


クー「領主同士の戦争と、国同士の戦争。どちらの方が大きな被害になりますか?」

そりゃ国同士の戦争でしょ。


クー「その違いは?」

・・規模?

国同士の方が、金銭的にも舞台も大きくなる。


クー「なら、外国が介入すると規模はどうなりますか?」


大きくなる!

話が国外まで広がり投入される金額も増える!


・・被害も大きくなるってことか・・


クー「そういうことです。」

そういうところは真っ先に倒さないと!


クー「戦争は財力が力になりますから、弱いところはワラをも掴む気持ちで外国の力を借りようとします。」

クー「それが被害を拡大するとしても、王国の仕打ちに苦しむよりマシだと考えるのでしょう。」


・・そう言われると、ちょっとかわいそうな気も・・

どうすればいいんだろう?


クー「王国も、外国の力を借りる独立勢力も、自分の都合でしか物事を考えていません。」

クー「誰かが全体を正しく統制しなければなりませんが、これを怠ったのは王国です。」


クー「とはいえ民への被害を最小限にするのが最優先。」

クー「外国の力を借りる独立勢力を倒し、それから王国にお灸をすえるのが理想です。」

なるほど。


クー「ただし、理想と実現可能かは別問題です。」

クー「理想に現実を加えたものが妥協となります。」


クー「凡人は妥協に妥協を重ねようとします。しかし非凡を目指すのであれば、妥協を理想に近づける努力をしましょう。」


レイン「つまり両方ぶっ倒せば解決ね。」

クー「独立勢力を倒すのは難しくありませんが、王国は難しいでしょう。」

レイン「それを成し遂げるためにここは独立したんじゃないの?」


王国のやり方では領民を幸せにできないから独立したってとこかな。

王国のための民ではなく、民のための王国になってほしいなぁ。


雫「わらわは・・東へ進む方を優先すべきと思う。」

雫「外国の支援を受け潤沢な資金を持っているなら強敵となろう。戦うべきではない。」

雫「王国と戦う前にこちらが疲弊してしまう。まだ力を蓄える時期だ。」


エティー「いえ、このまま外国の支援を受けた西の勢力を放置していたら、より巨大な存在になってしまいます。」

エティー「早目に退治しなければ大きな禍根になるでしょう。」


クー「なんであなたたち自分が持ち込んだ話と逆の方を薦めているんですか?」


雫「王国の指示と自分の意見が同じとは限らん。」

雫「王国のやり方に納得しているわけではないのでな。」


エティー「私は・・話を持ってきたのが親友なんです。」

エティー「できれば聞き入れたいですが、それはそれとして外国勢力は放置できません。」


じゃあ東か西かどちらかへ進むってことでいいのかな?

どっちにするかは・・同じくらい重要っぽいから、どっちでもいいよね。


レイン「王国が全部悪いんだから、王国を倒せばそれでいいんじゃない?」

クー「そうですね、他の独立勢力とは協調した方が早く王国を倒せます。」

ミミット「まだまだ各地に苦しむ人がいます。そういう人たちのために動いた方がいいと思います。」


・・なんか、結構みんな考え方バラバラですね。


クー「思想を気にせず仲間にしているからですよ。」

じゃあさ、ここらでみんなが考えている目的とかを再確認してみませんか?


レインとクーさんとミミットさんは、王国打倒派だよね。


レイン「ええ。」

クー「両雄並び立たず。」

ミミット「民を不幸にする王国なんていりません。そもそも王国の権限が強すぎるんです。」


雫さんとエティーさんは王国と協調派・・でいいんですよね?


雫「王国のせいで苦しんでいる者がいる。」

雫「王国がそれに気付き考えを改めてくれればそれでよいと思っておる。」


雫「制度を大きく変えず民を安心させられるなら、その方がよいではないか。」

雫「新しい国、新しい規律、慣習を古きものとして破壊していけば、この国から文化が失われていくのだ。」


エティー「私は・・王国にはたくさん知り合いがいます。」

エティー「ですが悪い人ばかりではなく、優しく思いやりのある人たちもいます。」

エティー「悪人を取り除き、国を良くしようと考える人が王国を取り仕切れば変わると思います。」


レイン「で、瑪瑙はどっち派?にやにや。」


レインはわかってて言ってるでしょ・・俺はいつもどっちつかずだった。

自分の意見は・・持ってないんだ。

人まねしたり、他人の顔色をうかがってばかりだから・・


レイン「村では私に言われるままついて来るだけだったわね。」

うん。


レイン「これからも私について来ればいいのよ。」


クー「そうですよ。それに、これまで私のやり方を参考にしてやって来たのでしょう。」

クー「なら私の意見を重視すべきです。船頭が多いと座礁しますよ。」


エティー「待ってください。これまで王国とは敵対しないやり方で進めてきたでしょう。」

エティー「ころころやり方を変えては誰からも信用されません。」


ミミット「領民を大事にする考えが元ですよね?なら民を中心に考えればいいんです。」

ミミット「王国が民を蔑ろにするなら私たちは民を大切にする・・王国と逆をやることで支持を得られます。」


雫「話は変わるが、みんなはミークルーガーというのを知っておるか?」

おおう、話の腰がボキっと折れた気がした。


レイン「聞いたことないわ。」

ミミット「初耳です。」


俺も知らない。


クー「250年前に現れた魔物ですよね?巫女が魔物を封印したという伝説の化け物です。」

エティー「あれ?巫女が魔物を弱体化させ、勇者が倒したと私は聞きましたが。」


たった250年前の話も食い違ってる。


雫「昔の話は改変されるもの・・ミークルーガーは、封印されたのだ。」

雫「勇者の話は恐らく、巫女の子孫が王家に嫁いだから盛られたのではないか?」


なるほど・・だから王都に近いエティーさんは改変されたうわさで、地方のクーさんは改変前のうわさを知っていたのか。

なんでそんな昔話を?


雫「ミークルーガーの封印が解けかけていると神託が下ったのだ。」

雫「わらわは密命を受け封印石を探しておる・・ええと、みなの目的を再確認ということじゃったからな。」


そういえば雫さんだけ理由不明でここへ来てたっけ。

そういうことだったんだ。


クー「巫女の一族は場所を知らないのですか?」

雫「恥ずかしい話だがそうなのだ。」


別に雫さんが恥ずかしがる必要はないと思うけど。


雫「南方の地ということしかわかっておらぬ。」

クー「私たちが支配地域を広げれば、探しやすくなりますね。」


クー「・・というのは少しおかしな話です。王国支配の土地へ行くのが筋でしょう。」

クー「なぜわざわざ王国から独立した場所を選んだのですか?」


クー「話していないことがあるのでは?」


雫「ふぅ・・最初は王国支配の地へ行ったが、魔物が跋扈し賊が町村を荒らし回り、驚くほど腐敗していた。」

雫「もしミークルーガーが復活しても、まともに戦うことなどできないと考えてな。」


雫「・・実は王国もあまり力を入れていないのだ。倒したという話に改変させてしまったからのう。」


レイン「それで利用できる組織を探してたってわけね。」


エティー「利用だと?雫様は崇高な使命のため動いておられたというのにその態度はなんだ!」

エティー「ミークルーガーが復活すればこの地は地獄となるのだぞ!!!」


雫「いいのだ。王国はそれほど信頼を失っているのだ。」


クー「そうですね。ゴーレムがいればミークルーガーと戦うにしても有利になれたかもしれなかったでしょう。」

クー「エティーさんこそ雫さんの崇高な使命を邪魔しています。」


エティー「・・そうだな。ゴーレムを王国へ渡したのは私だ・・」


あ、それなら大丈夫です。

ゴーレムの魔法板は呼べば戻って来ますよ。


エティー「・・・・は?」


悪魔王さんが盗難対策ちゃんとやってたみたいで。

無くしても手元に戻せます。


レイン「・・」

クー「・・」

雫「・・」

エティー「・・」

ミミット「・・」


あれ?どうしましたか?


レイン「瑪瑙らしいわね。」

クー「なんで私たちの時にそうしなかったのですか?」


その後で教えてもらったの。

で、いつ使うかは俺に任せるって。


使わず実力で取り戻すのも、王国と決戦・・みたいなタイミングで取り戻すのも、今すぐ取り戻すのも自由って言われてて。

どうしようかなーって迷ったまま、今に至ります。


エティー「なんか・・どっと疲れた・・」

ミミット「え、えーと、いつでも戦力アップ・・?ということでいいの・・?」

雫「不思議じゃな。考えの違うわらわたちがこうして協力し合えているというのは・・」


みんな同じ考えですよ。

国を良くしようという共通の考えがあるじゃないですか。


レイン「とにかく王国をぶっ倒せればそれでいいんだけど。」

ミミット「国よりも民です。国は信用できませんので。」


えーと、まぁがんばろう!

東に進むか西に進むか。


あとミーなんとかさんの封印石も探した方がよさそうかな。

えーと、ミーはおフランス帰りさんだっけ?


・・

・・・・


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