限定
「早速、死にかけてるね」
軽い口調で頭の中に直接語りかけられた。
「あぁ、思ってることが直接伝わるから口を動かさなくてもいいよ」
こんな風に干渉できるのは一人しかいない。
言われるがままなんの説明もなく飛ばされたことや弱体化についてぐちぐちと文句を思い上げるがうんうんと受け流された。
「倒したと思って油断しちゃったのかな?弱いね、実に弱い、弱くしたのは僕なんだけどね」
「こんなに早々に死なれると夢みごごちが悪いし初日だから特別に力を解放してあげるよ、ログインボーナスだね」
「ほら、女の子が心配そうに見つめているじゃない、早く終わらせなさい」
矢継ぎ早に告げられ、頭の中の声が消えた。
瞼を開くと巨大猿が右手を高々と挙げていた。
体に力が漲っているのが分かる、まだ制限されて1日も経っていなかったが懐かしい感じがする、実家の安心感みたいな感じだ。
ふわりと関節を曲げることなく浮き上がるように立ち上がり、振り下ろされた腕を掴んだ。
衝撃が水面に落ちる雫の如く打ち消す様に波を立て次第に勢力を奪われていく。
渾身の一撃が何もなかったかの如く消滅した事が理解できない様で立ちぼうけになっている巨大猿。
「お主の敗因は天災を相手にした事じゃな、我の糧となるが良い」
告げると猿の手に一方的に手を絡ませる様に組む。
手のひらが液状になり、「とぅぷん」っと飲み込まれていく。
飲み込んでいるが蛇の様に体は大きくなる事はない。
質量が違いすぎるのだ、圧倒的な質量差によって大きくなっている事が分からない位の変化しか及ぼされない。
巨大猿飲み込み終わり、周囲に他に敵意を発している者がいないか探るが近くにはいないみたいだ。
ルーシーが近寄ってくるのが分かる、無事を確認した所で体の力が抜け、再び夢の中へと誘われた。