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7 アカネの『転』

 で、アカネに原稿を渡してから五日が経過した。

その間アカネは学校を休み、日課である筋トレや古武術の修行や格闘ゲームをせず、ひたすらお話を書く事に全てを注いだそうだ。

まあ、その心意気はいいと思う。

でも、でもね?私がアカネの書いたお話を読んで感じた事は、次の一点に尽きる。 


格闘少年漫画やないかい!


 そう、そうなのだ。

いや、もうわかってたけどね、こうなる事は。

アカネに私が求めるような、ロマンチックなクライマックスを書けっていう方が無理だったんだわ。

だけど、それでも私はアカネにモノ申さないと治まらなかったので、アカネを部室に呼び、机に原稿を叩きつけて声を荒げた。

 「アカネぇっ!あんたの原稿読んだわよ!一体どういう事なのよこれ⁉」

 それに対してアカネは、達成感に酔いしれた顔でこう返す。

 「いや~、自分でも驚くくらいに筆が乗っちゃって、クライマックスは大いに盛り上がったッス!」

 「確かに盛り上がりはしてるわね!ただし!これじゃあ完全に格闘少年漫画じゃないの!このお話はラブロマンスだってあれほど言ったでしょうが!なのにどうしてこうなったのよ⁉」

 「え、自分は精一杯そういうつもりでお話をかいたんスけど、何か違ったッスか?」

 「違うわよ!まずタイトルからして違うでしょうが!


 【第三話 覇王降臨・鳳凰転生編】


 ホラコレあんた!覇王は降臨しないし鳳凰も転生しないっつったでしょうが!なのに何でのっけからタイトルで宣言しちゃってんのよ⁉」

 「いやぁでも、伏線(ふくせん)はちゃんと回収しないといけないと思ったんで・・・・・・」

 「そんな伏線一本も張ってねぇよ!しかも最初の一行目のセリフは何よ⁉

 『我、(ケン)を極めし者なり』


 誰だよコイツ⁉こんな事言うヤツ出てこねぇよ!」

 「これは、ザナトリア王国の王子である、ヴァルベス・ザナトリアッス」

 「言わねぇわよ!ヴァルベスはこんなセリフ言わないから!こいつは悪者だけど、表向きはもっと上品な言葉づかいをするのよ!しかもどうして王子が(けん)じゃなくて(ケン)の方を極めてるのよ⁉」 

 「やはり男の戦いは(こぶし)で語るのが一番だと思うんッス!」

 「剣を使いなさいよ剣をぉっ!そんでヴァルベスとエリーナの結婚式の後、ザナトリアの軍隊が王宮に攻め入るシーンもおかしいでしょこれ!


 【その時である、ドレスタニアの王宮に、武装したザナトリアの軍勢が一気に押し寄せた】

 『ヒャッハーッ!』


 「『ヒャッハーッ!』って何よ⁉世紀末のゴロツキか⁉そこまでガラの悪い連中は出てこないのよ!」

 「いかにも悪者共が攻めて来たって感じが出てるでしょう?」

 「出し過ぎよ!そこまで出さなくていいのよ!で、その軍隊を相手にクレイが立ち向かうシーンもおかしいのよ!


 『貴様らなど、俺の『鳳凰(ほうおう)飛翔(ひしょう)(けん)』で粉微塵(こなみじん)にしてくれる』


 鳳凰飛翔拳って何ぞいな⁉北○の拳みたいな必殺技は要らないっつったでしょうが!」

 「いや!ザナトリアの軍隊をクレイ一人で倒すには、これを使うしかなかったッス!」

 「何故に一人で倒すかね⁉ここはドレスタニアとザナトリアの軍隊が王宮で激しい戦闘を繰り広げるシーンだったでしょうが!」

 「いやいや!一騎当千(いっきとうせん)こそ格闘少年漫画の醍醐味(だいごみ)だと思うんス!」

 「だからこれは格闘少年漫画じゃねぇっつーのっ!それでここ!クレイとヴァルベスの一騎打ちのシーン!ヴァルベスのセリフがおかし過ぎるのよ!


 『うぬと我の闘いに剣など不要。(おの)が拳で語り合おうぞ』


 だから剣使えよ剣をよぉっ!何で拳で語り合うのよぉっ⁉」

 「鍛え抜かれた男の拳は、名の通った剣をも打ち砕くッス!」

 「そういうのはいらないのよ!それで次!ヴァルベスがどえらい事になってるじゃないの!


 『覇王が降臨した我の力、存分に味わうがよい!』

 【ゴァアアアアアアッ!ズォオオオオオオッ!】


 何の音よこれ⁉ゴァアッ!とかズォオッ!とか!ラブロマンスにありえない効果音でしょうが!」

 「これは、覇王の力が降臨したヴァルベスの全身から、闘気が湧き上がっている音ッス!覇王のあふれ出す強大な力が伝わってくるでしょう?」

 「そんなモン伝えなくていいんじゃい!私が伝えたいのはもっと他の事なのよぉっ!それで次にエリーナが叫ぶセリフもおかし過ぎるのよ!


 『クレイ!今こそ鳳凰の力をその身に転生させるのよ!』


 そんなアドバイスいらんわ!鳳凰は転生させるなってあれほど言ったでしょうがぁっ!」

 「いやいやいや!だけど覇王が降臨したヴァルベスに対抗するには、鳳凰を転生させるしか方法がなかったッスよ!」

 「知らないわよ!そんな設定どこにもねぇわよ!しかもクレイとヴァルベスが実際に戦うシーン!何なのこれ⁉


 【ゴガガガガガッ!バキッ!ドカッ!ズゴォオオオオッ!】


 北○の拳か⁉これ!小説!そして!ラブロマンス!」

 「クレイとヴァルベスの魂の激突の様を、あえて効果音だけで表現したッス!」

 「やかましいわ!それでもっともおかしいのはここよ!ヴァルベスの拳がクレイの心臓に炸裂しそうになった時、エリーナが止めに入って、その拳がエリーナの心臓に命中してしまうシーン!」

 「愛する者を命を投げうって守ろうとした、エリーナの愛が伝わるでしょう?まさにラブロマンスに相応(ふさわ)しいシーンッス!」

 「それはまあいいけど!その後にクレイが叫ぶセリフが問題なのよ!


 『ユ、ユリアぁあああっ!』


 ユリアじゃねぇっつぅのおおおおぉっ!」

 「あ、すみません。勢いでつい」

 「勢いで違う作品のヒロインの名前を叫んでるんじゃないわよ!もうメチャクチャじゃないの!トウ子の段階で(すで)にメチャクチャだったけど、アカネのクライマックスで更にメチャクチャになっちゃったわ!」

 「いやぁ、でもその後クレイは怒りのパワーを(ふる)い立たせ、見事にヴァルベスを打ち倒したでしょう?やっぱり最後に正義は勝つッスよ!」

 「だから!そういう話じゃねぇっつうのぉおおおっ!」

 もう、何もかも、メチャクチャです・・・・・・。



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