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3 ヒロミの『起』

 その日の夜。

自分の部屋に戻った私は勉強机に向かい、さっそく文化祭で発表する為の作品の制作に取り掛かった。

文化祭まで約二週間。

私達に与えられた時間は決して多くはない。

その中でいかに天道院会長に認めてもらえるような作品を作り上げる事ができるか?

その為にも、私がちゃんとお話の土台を作らないとね。

トウ子とアカネがおかしな方向へ話を持っていけないような、ちゃんとしたお話の土台を!


 そして私は三日間学校を休み、ずっと自分の部屋にこもって、何とか起承転結の『起』の部分を完成させた。それは次のような内容のお話だ。


 タイトル    『騎士と姫様』

 舞台と時代背景 中世ヨーロッパ時代の架空の王国、ドレスタニア王国

 ジャンル    ラブロマンス

 登場人物    ドレスタニア王国騎士団長 クレイ・シードルフ

         ドレスタニア王国王女   エリーナ・ドレスタニア

         ザナトリア王国王子    ヴァルベス・ザナトリア


 あらすじ


 ドレスタニア王国の王女、エリーナ・ドレスタニアは、隣国(りんごく)のザナトリア王国の王子、ヴァルベス・ザナトリアと政略結婚をさせられる事になっていた。

しかしエリーナが本当に愛しているのは、自分の専属の護衛(ごえい)騎士でもあるクレイ・シードルフという青年だった。

対するクレイもエリーナに想いを寄せており、二人は周囲に悟られないよう、愛を(はぐく)んでいた。

そんなある日、クレイはドレスタニアに忍び込んでいた怪しい少年を(とら)える。

その少年はザナトリア側のスパイで、ザナトリア王国が、ヴァルベスとエリーナとの結婚式で、ドレスタニアの王族の人間を皆殺しにし、ドレスタニア王国を奪い取ろうとしている事を聞き出す。

それを知ったクレイはエリーナや国王にその事を知らせ、結婚式当日、ザナトリアの軍隊を(むか)え討つべく、密かに戦力を集めるのだった。

そして(むか)えた結婚式当日、スパイの言葉通り、結婚の儀式の後、ザナトリアの軍隊が王宮に攻め込んでくる。

しかしそれに備えていたドレスタニアも軍隊を集結させて応戦し、王宮は激しい戦場と化す。

そんな中クレイとヴァルベスが一騎打ちを行い、見事にクレイがヴァルベスを打ち倒す。

ザナトリア軍は引き返して行き、ドレスタニア王国は危機を(まぬが)れる。

そしてその功績を認められたクレイは、ドレスタニアの次期国王に抜擢(ばってき)

エリーナと晴れて結ばれ、二人は末永く幸せに暮らすのだった。


 とまあ、こんな感じのお話です。

特にひねりのないベタなお話だけど、この方が感情移入もしやすいし、トウ子とアカネもおかしな方向には話を持っていけないでしょう・・・・・・多分。

 とにかくこのあらすじを元に私はお話の冒頭を書き始め、クレイの凛々(りり)しい()で立ちやエリーナの可憐(かれん)優雅(ゆうが)容姿(ようし)描写(びょうしゃ)し、ドレスタニア王国の豪華な王宮を描き、二人が(ひそ)かに想いを寄せあっている事、しかしエリーナはザナトリア王国の王子との結婚を決められている事等を簡潔(かんけつ)に説明した。

 これでこのお話の登場人物や世界観は大体伝わったはず。

後はトウ子とアカネが余計な事をせずにクライマックスまでお話を進めてくれれば、最後は私が感動的なラストシーンで締めくくって、天道院会長にも認めてもらえる作品が完成する!

きっと、多分、恐らく・・・・・・。

 正直、不安な気持ちしかないけど、それでも私が今やれる事はやった。

明日、この原稿をトウ子に見せて、このお話の続きを書いてもらおう。

果たして、どうなる事やら・・・・・・。


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