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バーン1


「おまえがウィルのために子を産む女か」


庭を散歩中、かけられた声に振り向くと背の高い男の人がいた。ちょっとその言い草にムッとしたけれど、まあその通りなので黙って頷く。


「俺の子がウィルの子として育てられるなら、それ以上に嬉しいことはない」


そう言いながら彼は一歩近づいた。

反射的に後退る。

それを見ると、彼は足を止めた。


「ああ、すまない。ウィルからも聞いているとは思うが、無理やりどうこうという気はないんだ。ただ、先ほども言った通り俺の子をウィルに与えてやりたい。だからチャンスをくれないか?」


「チャンス?」


「ああ。俺のことを知って、俺に抱かれてもいいと思ってほしいんだ。そのために時間をくれ」


…………


「無理やりにはしない?」


「我が剣にかけて誓おう」


ひどく真面目な顔で頷かれた。

剣の誓いを破る人は滅多にいない。それにどうせ相手がその気になったら私の抵抗など意味をなさないのだ。


「どうすればいいの?」


「とりあえず何か食いながら話でもしよう」


まともな提案だった。

了承の意味を込めて頷くと、肘を差し出された。


エスコートか。


久しぶりの淑女扱いに、少し泣きそうになりながらそっとその腕をとった。最近は格上の家からの断るに断われない招待で嫌々参加したパーティーで、売女のように扱われてばかりいたから…。


庭園に溶け込むように置かれた品のいいテーブルセットに着くと、すぐに執事が近づいて来た。


「紅茶と何かつまめる物を」


彼は簡単に注文した後、私に確認する。


「甘い物も頼むか?」


ちょっと迷ったけど頷いた。ウィリアム様から、変に遠慮するなと言われていたから。

甘いお菓子は大好きだ。


「そうか」


彼はチラリと笑った後、それも頼んでくれた。

執事が去ってすぐ、彼は口を開いた。


「俺はバーンだ。騎士をしている」


それだけ言って黙った彼を観察する。

どおりで鍛えられた身体をしていると思った。

高い身長。

今日は私服のようだけれど、布の服の上からでも盛り上がった筋肉が見てとれる。先ほどエスコートしてくれた時に触れた腕からも、なめらかな筋肉の弾力を感じた。

美男子というよりは、男くささを感じる引き締まった凛々しい顔。実直そうな瞳。

なのに


「男色家なのよね」


つい漏れたつぶやきに、バーンは苦笑した。


「いや、両刀だ」


それを聞いてなんとなく複雑な気持ちになった。

そのまま見つめ合っていると、二人の執事がトレーを持って近づいて来たので、一旦そちらに意識を向ける。

一人はポットやカップなどの乗ったトレーを、もう一人はお菓子やサンドイッチなどを乗せたトレーを持っている。

二人とも睫毛が長く髪がサラサラで、綺麗な顔立ちをしている。テーブルにカップを置く仕草も洗練されていて美しく、思わず見惚れてしまった。


セッティングを終えて下がる二人の後ろ姿を無意識に視線で追っているとバーンが咳払いをした。

慌ててそちらを見る。


「…今は俺のことを見て欲しい」


拗ねたような口調と表情を、少し可愛いと思ってしまった。


その後バーンは、騎士団の訓練の話や任務中の出来事、飼っている犬のことなどを話してくれた。

無骨な外見に反して、意外にもバーンと話すのは楽しかった。


その日はお茶だけして別れた。


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