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決まりについて


呼びに来た執事に連れられて結構な距離を歩いてサロンへと到着した。


伯爵は家令と…なんというかいちゃいちゃしてた。


家令も整った顔をしているので、手を繋いで微笑み合うその姿はちょっと絵になる。ここまで連れてきてくれた執事が咳払いをすると、家令は慌てず姿勢を正してこちらに向き直った。


「奥様、こちらへお座りください」


促されるままに伯爵と同じテーブルに着くと、すぐにお茶とクッキーが用意された。

「どうぞ」と言われたので一枚かじってお茶を飲む。

美味しい。

うちの家で出てくるのより全然美味しい。これが格が違うということなのか、そんなことを思いつつ一枚食べきって二枚目に手を伸ばしたところで伯爵が切り出した。


「さて、早速だがここでの決まりについて確認しておきたい」


クッキーをつかもうとしていた手を一旦引っ込めて背筋を伸ばす。今後の一生に関わる話だ。


書面でのやり取りでは、私に都合いいことばかり書かれていたけれど、まさかそれがそのまま全部本当ということはないだろう。どうせなんだかんだ制約がつくに決まってる。

そう思って耳を傾けた。


「まずひとつ、君には跡取りを産んでもらいたい」


わかってる。私はそのために来た。


「出来れば長男は私の恋人の誰かとの間に作って欲しい。無理にとは言わないが、素敵な男性ばかりだから君もきっと気に入る相手がいると思う」


え…男色家の伯爵の恋人と子作り?

私の驚きに気づいた伯爵が補足を入れる。


「ああ、僕は男一筋だが僕の恋人の中には女性もいけるのも結構いてね。跡取りが欲しいと言ったら喜んで協力してくれると言うので頼んである」


なんだか複雑な心境だ。まあ、知らない男の子どもより好きな相手の子どもの方がいいというのはわからなくもないけど。

それと伯爵には複数恋人がいるのね。


「ただ、僕のように女性は無理という人もそれなりにいるから無理強いはやめて欲しい」


ちょっとすまなそうに続けられた。

どれだけハンターだと思われてるの…

というか何人恋人がいるの…


「…私も無理強いは趣味ではないので大丈夫です」


嫌がる男の人に乗っかって無理やり関係を結ぶとか、かなりナシだわ。


「それは良かった」


本気で嬉しそうに笑う伯爵。

…本当に心配してたのね…。


「長男が産まれてからなら、この家の誰とでも関係を結んでもらって構わない。この家で働いているのは、僕の恋人か、そうなってもいいと思っている人ばかりだから。君が産んだ子どもは全員僕の子として育てる。是非ともたくさん産んで欲しい。ただ、相手候補の中には、この家令のように自分の子は自分の後を継いでこの家をサポートするために育てたいと思っているのもいるから、できれば誰の子かわかるようにスケジュールは管理して欲しい」


複数人と関係結ぶの大前提ですか…


伯爵の話はまだ続いた。


「子作り以外は基本的に好きにしてもらって構わない。ただ、興味があるのなら近くの村からの陳述の取りまとめなどを任せたいと思っている」


「え…?」


ぽかんとしてしまった。

女に少しとはいえ領地経営の一端を任せるなんて、聞いたことがない。


「私の母はやっていたのだが、やはり普通の女性はそういうのは興味がないだろうか」


少し残念そうな顔をされた。


「いえ、興味なくはないです」


慌てて首を振る。

子作りしかやることがない生活はちょっとキツい。


「なら後で教師役を付けよう」


伯爵は嬉しそうに笑った。





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