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ランバー1
「奥様」
いつもは冷静なその声に熱がこもっている。
ギラついた瞳で見つめられ、本能的に体が竦んだ。
「ウィリアム様のために、お子を産めるあなたが羨ましい」
激しい嫉妬。
ぶつけられるその感情に、身体が熱くなる。
怒りにも似た激しい欲望がその眼に宿っているのに、私に触れる指先は酷く優しい。
「…あ…」
思わず声を漏らした私を、彼は憎々しげに見つめた。
「あなたが羨ましい…」
再度告げられ、鎖骨を強く吸われた。
「…んっ」
ちりりとした痛みに、再び声が漏れてしまう。
そんな私を彼は嬉しそうに見た。
「この位置なら、ウィリアム様にも見えるでしょう」
愛おしそうに触れられたのは、先ほど口付けられた箇所。
ウィリアム様に見せるためにわざわざ跡を付けたの…。
そんな嫉妬深い彼の側近を、可愛く思ってしまう。
随分歪んだ愛情だと思う。好きな人に見せつけるために別の相手に跡を付けるだなんて。
それを受け入れてしまう私も歪んでいるんだろう。
でも構わない。ここではそれが許されているから。
「ふふっ」
少し笑って彼の首に腕を絡めて引き寄せると、噛み付くようなキスをされた。