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脱糞

突然始まった教官のセクハラ。そして揺れ動く104期訓練兵団。地獄の訓練がいま、始まろうとしていた…

***


「まあ、待ちたまえ。」

黒服に身を包んだ男はゆっくりと確実に教官と距離を詰めていた。

「あ…ああっ…お待ちください…」

教官は突然顔を真っ青にして震え始めた。

「いささか、新人教育に気合が入りすぎてしまっているようだね。もうそのへんにしておきなさい。エロメンコ少佐。」

黒服に身を包んだ男はその碧眼ですべてを見通しているかのように、威厳のある声で教官に言った。

「あ…あ…っ」

教官はもはや一切の言葉を放つことすらできなくなっていた。

「そういえば、君は確か、葡萄酒が好きだと言っていたね。その熱意を見込んで私から、ブドウ畑の主人に言っておこう。やる気のあるやつが一人入ったとね。」

そう言って、にやりと笑ったと思ったら、三人の兵士が出てきた。憲兵であった。

「や、やめてくれえええ!ぁぁっ、お…俺は…た、たすけてkじゅれーーー!!」

ブリュリュッ…ブチつブチつ…

教官(エロメンコ少佐)は糞尿を垂れ流しながら、憲兵に連行されていった。

「…お見苦しいところをお見せしてしまったね。彼は少々教官デビューで緊張していたようだ。」

教官をあそこまで、怯えさせ、一瞬で消してしまうこの男。いったいどれほどの力を持っているのだろうと誰もが思っていた。

「では、改めて。私はクーパー=ケネディ。4兵団統括団長だ。」

場内はまたもや、騒然とした。あの教官がああなるのも無理はない。この国に存在するすべての兵団の頂点に立つ者、ケネディ統括団長である。まさか、そんな大物がなぜこの訓練所へ?という疑問がウィリアムの頭に浮かんだ。

「未来ある兵士の金の卵、略してきんたまをこのように指導するとは…おっと失礼。あっはっはっは!」

(この国はもうだめかもしれない)

ウィリアムはそう思った。


***

宿舎食堂ーーー


 あの後、すぐさま代わりの教官がやってきて、入団式はすぐに終わった。そして、部屋の案内が終わって、昼食を食べるため、食堂にやってきた。


「もうっ!なんであの時私を指さしたの?!?!」

オリビアがダニエルに問い詰める。104期訓練兵の皆は静かにその会話を聴いていた。

「ち…違うんだ。俺も怖くて、その時の記憶がないんだ。頭が真っ白になっちゃって…」

「はあ?!いいかげんなこと言わないでよ!だいたい、あなたが間違えなければ…誓いのカンナムをやればあんなことにならなかったのに」

「まあまあ、落ちついて。結局、服は脱がなかったんだし、あの教官の本性がばれてよかったじゃない」

オリビアの隣に座っていたリアム=エミリーがオリビアをなだめた。

「よくないわよ~。すごく怖かったんだから!」

オリビアが涙目で訴える。

「ちょっとうんこ行ってくる」

まったく空気を読まない男、アイザック=ゾーイ。この男、入団式の途中にも関わらず、ペットのサルと遊んでいた。この時も食事中にもかかわらず、突然のうんこ発言である。

「ね…ねえ。ここほんとに訓練所なのかな。お笑い芸人養成所と間違ったんじゃ…」

ユズトが苦笑いでウィリアムとミユに話しかける。

「私はそっちのほうがいいわ。ウィリアムが兵士になるのは反対だもの。」

「ゥㇽセェ…ゥㇽセェ…」

ウィリアムは俯きながら、小さな声でつぶやいた。

「おまえら!!さっきからうるせえんだよ!!いまから、人類が邪悪なパカラどもを駆逐して、広い砦の外に飛び出す翼になるんだろ?!それとも、そんなこと諦めてただただ兵士ごっこでもしにきたってか?!そんなやつ、いますぐここから出ていけよ!」

突然、ウィリアムが激怒した。人類を守る兵士を目指して入団したウィリアムにとって、この状況が許せなかったからだ。

「ちょ…ちょっと落ち着いて!」

ユズトの言葉はウィリアムの耳に入らなかった。

「ああ?急になんだおまえ、兵士ごっこしにきてんのはお前のほうだろ?」

ははは、と数人の笑い声が聞こえる。

「なんだと?!」

ウィリアムはさらに声を荒げて言った。いまにもとびかかりそうな勢いだ。

「だいたい、俺たちはパカラどもなんて興味ないんだよ。優秀な兵士になって、内地で幸せに暮らすんだよ。」

こう言って、ウィリアムを挑発するのはオーウェン=アリソンだ。ウィリアムよりも背が高く周りを見下すような態度が特徴的だ。

「諦めて良いことあるのか?あえて希望を捨ててまで現実逃避する方が良いのか?お前は戦術の発達を放棄してまで大人しくパカラの飯になりたいのか?……冗談だろ?

オレは… オレには夢がある…

パカラを駆逐してこの狭い砦の世界を出たら…外の世界を探検するんだ」

「お前、馬鹿だろ?勝てないとわかってるから諦めるんだよ」

「……

あぁ…そうだな…

わかったから…

さっさと行けよ内地に…

お前みてぇな敗北主義者がココ(最前線)にいちゃあ士気に関わんだ…よっ!?」

ミユがウィリアムの身体を持ち上げ、外へ連れて行った。

「おい!なにすんだよ!はなせ!」

「黙って。あやうく教官にこの騒ぎが見つかるところだったわ。」

「あ…わるい…」

「気持ちはわかるけど、落ち着いて。今はそんなことしている場合じゃないでしょ。」

「そうだったな…明日から訓練が始まるんだ。身体を休めないと。」

「そういうこと。私が後片付けしとくから、ウィリアムは先に部屋に戻っていて。また明日、訓練頑張りましょう。」

「ああ、そうさせてもらう…イライラしてたら急に疲れてきやがった…」


 ミユは食堂で片付けをし、ウィリアムは自室へ戻って行った。


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