8話(完結)ニコヤカ堂の社長はTV対応が上手でした
アイスクリームメーカー『ニコヤカ堂』東京本社工場。
ここでは、バニラやチョコ味の生産を減らしいる。愛緒和県で大ヒットしたアイスクリームの増産のためだ。『金目鯛ポタージュ金と味アイスクリーム』を全国に大量に流通させたい。社長の方針である。
今日は東京にある某テレビ局の取材の日である。
社長が自ら清潔な工場内を案内し、テレビカメラの前でアイスを手に持ち、得意げだ。
「この、『金目鯛ポタージュ金と味アイスクリーム』が、今一番売れているんです。商品の名付け親は私です」
テレビレポーターが、社長にマイクを差し出しながら、質問した。
「社長、金目鯛ポタージュ味は分かりますが、金と味に込められた思いは、何ですか?」
金目鯛ポタージュ味の意味も分からないが、角を立てたくなく聞かなかった。
社長は尻込みする。金運の金。お金が多くニコヤカ堂や、取引先に流れるようにだ。
「一点の曇りもない、ゴージャスな味で金のようだからです」
世間体を考える、腹芸が得意な社長だった。
レポーターも、納得顔をしていた。
テレビ番組が全国放送された翌日から、『金目鯛ポタージュ金と味アイスクリーム』は、飛ぶように売れている。
愛緒和県を除く全国で……。(完)
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