1番強い!
仕方ないね、3年も経つと口調も変わるよね
学院の生徒の数はたくさん居て、態々1対1なんてしていたら莫大な日数がかかってしまう、だから取り敢えずは8日間、8つのグループに分けられた生徒たちがバトル・ロワイアルをする、生き残った2人だけが本選に進むことが出来る、会場はとても広く、全卒業予定生を8つに割るだけで十分に対応出来るようになるほど。試験の中の様子は魔法を使った道具で外から見ることが出来るようになるそうだ、光の属性か何かだろうか?
会場は森を模したものに決まった、風や土属性は有利に戦えるけどそこまでの差違はない、せいぜい全く互角の力量の時にほんの少し助けになるくらいだろう、割りきって考え、弓を発現し、風の魔法を展開する。
『目を覚ませ、力を捧げよ。迦楼羅』
『広がり知らせよ、触れ動くもの、その全て』
風の辺境伯らしく風を声に宿して魔装を発現させる、初手は探索魔法、魔力を展開した範囲の風の動きを知ることが出来るこの魔法はとても優秀だ、半径10Kの魔力展開範囲を持つ僕にとっては。
探索魔法に引っ掛かる敵を全て射落としていく、そもそもあまり見せ場を奪わないようにとしばらくだらだらと待っていたんだ、これ以上我慢なんて出来そうにない。
矢の届く範囲を掃討すると今度は魔法で飛距離を増強して魔法の展開範囲を掃除していく、1方向はこの後進んでいく方向、特に落とす必要はない。
ある程度数を減らしたところで弓を送還し刀を発現させる、次期風の辺境伯が臆病者だなんて言われては堪らない、効率を求めた結果だってことを知らしめないと。
『目を覚ませ、力を捧げよ。桜河』
風の声音で呼び出した桜河は不可視の刀身を伸ばすことが出来る、ただでさえ身の丈に迫る刀身を持つ桜河にこれ以上の刀身が必要かはともかくとして、取り敢えず今日は風だけでやりきるつもりだ、そのほうがまあ風の辺境伯らしいだろう。
敢えて残しておいた一方向へ駆ける、辺りを警戒する生徒に追い付いては切り捨てします追い付いては切り捨て、最初に探索魔法を使った範囲分切り捨てたはずだ、また10Kフルで探索魔法を放ってもいいのだけれど、どうしようかな、そうやって奇襲的に切り捨てるのは面白くない、僕は次代の風の辺境伯だ、であるならば僕が絶対の強者であることを見せつけないとね。
桜河も送還して立つのは森のなかにぽっかりと空いた空間、風を纏わせたことは役に立った。贅沢は言うものではなくするもの。折角豊富に武器が使えるんだ、出し惜しみせずに使っていこう。
『目を覚ませ、力を捧げよ。杉廓』
呼び出すは槍の魔装、杉廓。サイズ的には短槍か、手槍か、よくは知らないけれどそんなところだろう、取り回しがよく、使いやすい長さであることさえ知っていればそれでいい。
槍と風はすこぶる相性がいい、螺旋状に纏わせて貫通力を上げるもよし、シンプルに風で後押しして加速を得るもよし、槍の攻撃に向いている強化が使いやすい。
隠そうともしていない丸出しの闘気が向かってきている、これは土の気配か?土でこの気配で堂々と来て、となればやっぱり来たか土の辺境伯。対属性であり、森から受ける力も同等、相手の魔装は土の属性を帯びた鎚、気なんて一瞬も抜けない、こいつが予選で落ちれば盛大にいい顔が出来るだろう、なら、やるっきゃない!
鎚というものは、重く、大きく、大振りだ、本当に同い年かと少々疑わしく思いながら見上げる背丈の差はおよそ20C、僕とて平均よりは10Cほど高い、それでも見上げるそのガタイにはしっかりと筋肉がついているのが分かる。あ、まずい、土の精気を吸い上げ始めた。みるみるうちに土が弱っていくのが分かる、一体どれほど一撃にかければ気が済むのか、土の辺境伯はそういう家だ。
風を集め、纏い、絶対の速さを求める、風は風らしく、土塊を翻弄してやるとしようか。
僕と相手では、相手の方がリーチが長い、というか広い。魔装の大きさ自体はそこまで変わらないけれど、土の属性を宿す以上見た目よりも広い範囲に衝撃は走ると思う、具体的なリーチの差は分からないし、もっと言うならどれくらいの範囲が当たる範囲なのかも分かりはしない、だからこそ前へ踏み込む、僕の得物が槍な以上超至近距離という訳にはいかないけれど、風を纏い駆け抜けざまに一撃を加える、駆け出す位置を変えてもう一度、それなりに深く切りつけてはいるけれど、倒れるにはもう暫くはかかると思う、きっと一撃でも貰えばそのまま倒れてしまう、だから足を止めずに、槍の持ち味すら殺して、いかに受けずに、与えるかだけを考える。ああ、もう反応が間に合い始めてる!もう迎え撃つタイミングがあってる!どんどん調整されていく迎撃を躱し、また攻撃パターンを変えて突っ込む、もうすぐおしまいだ!だから、だから僕は今こそ槍を手放す。
『意思に従い、風纏え。貫穿』
槍の穂先に風を纏わせる魔法を唱えて貫通力を少しでも上げる、纏う風を強くして、これまで1番の速さで突っ込んだ、すごい!合わせるなんて!けれど、僕は受ける事無く離脱し、槍は刺さった。手元に無くても特に問題はない、一瞬送還して、またここに呼び出せば良いのだから。
詠唱破棄で呼び出せる事を驚かれても、僕はずっと言っていたと思うよ、好みの問題で詠唱を行うんだって。




