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〜 選択 〜 第四部 第一話

★からんちゅ♪魔術師の鐘★ 〜 遥かなる想い 〜


いよいよ! 第一章エンディングに向け、 第一章 第四部 〜 選択 〜 の始まりです。


過酷なレースを制したアウラとチッチ。

しかし、一時の平穏は突如、砕かれる。

そして、アウラを待つ更なる悲しみが訪れ選択を迫る!


物語が交差する!



  第一章 第四部 〜 選択 〜


 ☆第一話


 ◆異形の魔物


 アウラに触れ掛けていたチッチの指先が、アウラの細い指先に触れる事はなかった。

 チッチはアウラの傍らを擦り抜け、正装の上着を剥がすように脱ぎ駆け出し大広間を出ていった。

 アウラは呆然としたまま立ち尽くす。

 アウラにもランディーの話も聞こえていた。


 ――でも何故? チッチが?


 アウラは、血相を変えて駆け出したチッチの形相を思い出す。


 ――そっか……。


 チッチの傍にいると直ぐに忘れてしまいそうになる事……。

 アウラの胸の奥深くに眠る復讐心。

 恋は盲目と言うが、これ程までに普段は忘れてしまうものなのか。

 グローリー号の上で瀕死のチッチが気持を言葉にしてくれた。

 うれしかった……。

 チッチの笑顔を見ていると薄れていく醜い感情に自分は安堵を感じていた。

 しかし、チッチは違った。

 チッチの中には、街を焼き母親を死に追いやった異形の魔物に対する憎しには、微塵も失ってはいないようだ。

 自分のように恋に浮かれ、心の片隅に追いやっている復讐心を。

 自分も行かなければと、アウラは我に帰る。

 振り向くとチッチの脱いでいった上着と何時もアウラ以外の人前で決して外す事のない右眼を覆い隠している包帯が無造作に床に捨てられている。

 チッチの後を追おうとした時、ランディーに肩を掴まれた。

「ランディー様……私も行かなくてはなりません! どうか御手を離して下さいませんか」

 アウラは、硬い表情でランディーを見つめた。

「そう怖い顔をしないでくれアウラ。しかし、美人という者はどんな顔をしても絵になるものだね」

 ランディーが先程見せていた険しい表情を緩め、頬笑み掛けた。

「ランディー様! こんな時に何を呑気な事をおっしゃっているのですか! チッチが……チッチが」

 軍が邀撃態勢を整える前にチッチは異形の魔物と接敵するだろう、とアウラは思っていた。

 チッチがスレイプニルを呼び、異形の魔物に向かえば、どのような物を使って向かうより早く着ける。

「やれやれ……きみは見た目に似合わず、せっかちなんだね。山羊飼いの彼は異形の魔物を討ちに行ったのではない。まぁ、結果的には討って貰う事になるかも知れないがね」

「では……チッチは何をしに出て行ったのです? あんなにも血相を変えて」

「彼は彼の仕事をしに行ったのだよ。彼の仲間と合流する為にね」

「チッチの仕事? チッチは学生で……はっ! 騎士勲章」

 アウラの脳裏に以前、傭兵たちに襲われた時に助けに来てくれ傭兵一小隊を一瞬の内に葬り去り大地を血の海へと変えたチッチの姿が浮かんだ。

 それと、もう一つ気になる事がある。

 ナーンの街付近で砲撃を受けて瀕死のチッチが自力で封印を解き、おぞましく禍々しい気を放つチッチの中に母が埋めた循鱗の破片から新たに生まれたもう一つの循鱗。

 自分がチッチの循鱗(はは)の封印を解かなければ、チッチが追い込まれるような状態に陥れば、あの漆黒の循鱗を、その力を使って自力で封印を解くかも知れない。


 ――それに循鱗を封印出来るのは私だけ。


「ランディー様? チッチのお仕事とは……いったい、何なのですか?」

「すまんが、それは私にも分らない」

 アウラは、ランディーの何かを隠しているような答えを聞いてランディーを振り切り、再びチッチの後を追おうとした。

「まぁ、待てと言っている」

「待ちません! チッチの身に危険が迫るような事があれば、彼の封印を解かなければなりません。それに異形の魔物を創り出す術式を組んだのは私です。その責任も果たさねばなりません」

「そう気負うなアウラ。我々も出る。きみにも一緒に来てもらわねば困る。一人で向って何が出来るというのかね? 今のきみに」

「そ……それは……」

 アウラは悲しげな顔をして視線を落とした。

「すまん。言い過ぎた」

 ランディーがアウラを宥めると言葉を続けた。

「彼らの仕事の内容を本当に私も知らない。アウラはおかしいと思はないかね?」

「何を……ですか?」

「どうして突然、こんな所に異形の魔物が現れたのか……きみが幼い頃に描いた魔物を創り出す魔法陣は北にあったグルンベルの近くの小さな森に三つ、グリンベルの街中に四つ、そして街の周囲に二つだという事が調査と後の検証で分かっている。このような場所にきみは描いた覚えがあるのかい? それに今のきみは、なぜか魔物を創り出す魔法陣を覚えていない。無論魔法陣を描く事は出来ない。違うかね?」

「……違いません。だとしたら、いったい誰が……もしや、あの魔法陣を組立描ける魔術師が現れたのですか?」

「そうかも知れないが今のところ情報はないがね。そう考えるのが妥当かも知れん」

 ランディーが難しい表情をして答えた。

「隊長! 出陣準備整いました」

「よし! 名も無き赤の騎士団出るぞ!」

「アウラ来てくれるね。きみは我が隊が名誉と誇りにかけて守り抜く」

「はい」

 アウラは短い返事の中に強い意志を込め答えた。


 ――シュベルクのとある最高級宿。

「うん? この音……」

「どうしたですぅ?」

「これ……もしかして……あれだよぉ」

「「「ゴーレム」」」

「たくっ! 面倒な事になってるみたいだ。きな臭えぇ、匂いがしやがる」

 銀髪の少年が突っ伏していた机から上体を起こした。

「行くですぅかぁ? じゃぁ、アイナも――」

 美しい金色髪の少女が何かを言おうとして時、銀髪の少年が言葉を被せた。

「お前は、ここで大人しくしてろ! 他の仲間も動き出す。てか! お前、なんで仕事について来てんだ?」

「そ、それはですぅねぇ……!! そう、そうですぅ――! 折角の休みだから他国の祭りとやらを見に来たのですぅ」

「うふふ、いいじゃん! 一緒にいこ! 折角、他国の街に来たんだからさぁ! この娘が危険な目に遭いそうになったら、お兄ちゃんが守ってあげれば済むんだよぉ?」

 人の姿はしているが、背中には半透明の羽根を生やした小さな少女と金色髪の少女が声を揃えた。

「「ねぇ!」」

「ですぅ」

「お前らな! 何、観光気分出してんだ! 俺は観光に来てんじゃねぇっうの! 仕事! 要人護衛!」

 三人? が、やいのやいのと騒いでいた時、宿の外に砲撃の音が木霊した。

 その音の大きさと音の長さから銀髪の少年は、まだ遠いと判断した。

「きな臭えぇなぁ! 休憩は終わりだ。行くぞ」

「わたしも行っていいですぅかぁ?」

「……まぁ、一人にしとくのも、かわいそうだしお前を放っておく方がゴーレムに襲われる街より心配だ」

「もふぅ! 素直じゃないなぁ、ふふぅ。私は当初の予定通り連絡役があるからぁ、お二人でどうぞ」

「うるせぇ! 行くぞ。他の連中と話し今後の対策を練る」

 外には砲撃音と共に聞き覚えのある物が出す鳴き声(似た音)が響いている。


 シュベルクの南西。異形の魔物が現れたとされる場所に向かっていたチッチとアスカは壊滅したナーン駐留軍の戦場を見ていた。

「これは酷いな」

 アスカが眉を(ひそ)め呟いた。

「でかい足し跡に踏みつぶされてるなぁ」

「魔術師の作り出したゴーレムの仕業か……しかし、何だ! この足跡は人や獣、魔物の類いの足跡ではないぞ。それに地面の陥没からして相当な質量を持っているゴーレムだな……石のゴーレムか、或るいは鋼鉄のゴーレム」

 魔術師の作り出すゴーレムの足跡は人間の足跡と、大きさはさて置きほぼ変われない。五指の跡が残るはず。

 しかし、この場に残されている足跡は長さ九フィール程と優れた魔術師が一人で作り出すゴーレムと似た大きさで、その形に指の跡らしき物は無く、爪先はやや丸みを帯び側面に向かい角ばった所も見られ、足跡の中には丸い穴と地面に深い溝が等間隔に何本も規則正しく並んでいた。

「数も複数……一、二……九、十。十体か……となると敵は十人以上の魔術師と、その護衛にあたる騎士や戦士が複数という事になるな」

 アスカが、敵の戦力分析をしているとチッチがそれを否定した。

「ゴーレム以外の足跡も匂いも残ってない。もしかすると魔術師が少数のみかも知れない。それに嗅いだ事のない匂いだ。金属には違いないと思うけど……それと」

 チッチたちは見た事のない光景を見ていた。

 地面は砲撃で耕されている。それも尋常では程の弾痕が残され、人の亡骸はもはやその姿を保ってなかった。

「足跡の後を辿り魔法陣の残された場所に急ごう」

「こんな事なら、アウラを連れてくるべきだったなぁ」

「はぁ――、お前と言う奴は、こんな光景をあの娘にみせたいのか……まったく」

 アスカが大きく息を吐いて厭きれた顔をした。

「違うぞぉ! 魔法陣を解除して貰う為だ!」

「そうかい。それは悪かったな……それより急ぐぞ。調査を済ませ戦場に早く戻ってやらないとランディーの奴が、後でうるさいからな、リヴァ!」

 アスカがリヴァを呼び出し二人がその背に乗るとリヴァは蛇が水面を泳ぐように低空を飛んだ。

 チッチとアスカはゴーレムの足跡を辿りながら、二人は急ぎ魔法陣の描かれている場所を探しに向かった。


 To Be Continued

最後まで読んで頂き誠にありがとうございました。


次回もお楽しみに!

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