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第五話「クソゲーディーラーはイカサマ上手」

第一章までのあらすじ(あくまでタクミの妄想です)


 交通事故で死んだ俺は異世界に勇者として転生してきた!

 最初に来た村では驚く事の連続だった。

 ご老人は歴戦の勇者! 選ばれし子供達が何をするわけでもなく集まっていた!


 ギルドでも俺の最強ステータスが判明! 勇者としての才能をまざまざと見せつけてやった!


 しかも、初任務にいきなりドラゴンの討伐を選択! だが、ドラゴンですら俺にかかれば一発KO! 十匹以上も狩りまくってしまったぜ!


 この世界に迷い込んだ美少女女神も、俺のおかげで立ち直ったようだ。神も俺に期待してるようだ! 今度は酒場の少女を守れときたもんだ。


 やれやれ、転生勇者には守るものが多すぎて困っちまうぜ!

 なぜこうなった!!


 俺は、この世界をなめていたというのか?


 俺はこの世界では最強で、誰にも負けないとどこかでそう思っていたというのか? 何が勇者だ!! 痛々しい!!!


 ただの臆病者じゃないか! こんなところで前に進めず、臆して立ち止まるくらいなら死ね!! 剣をとれ!! 何もしないくらいならせめて盾になれ!! 負けるとわかっていてもそのくらいの根性は見せろ!!!


 行け!! いけいけいけいけ!!! 逝け!!!!!!




「Show Down」




「はい。せめてもの情けよ」


 スピカが呆れ顔でコップに入った水をくれる。そのやさしさが……今はものすごく辛い。


「なぜだ……? どうしてこうなった」


「何も考えずポーカーで所持金を全賭けするからでしょ? 夢見すぎなのよまったく」


「だって、勝ってたから……」


 今からしてみれば、ものすごく根拠の薄い賭けだった。なんか面白そうでファレーナさんの週一で行われるギャンブル、ポーカーに挑戦してみたのだが、なんと三連勝したのだ。……だから波が来ていると思い、所持金のほとんどを全部賭けたのだ。


 そしたら、あっさり負けた。


「悪いわねタクミ君。お詫びに何かおごらせてよ」


 ポーカーも幕引きにしたファレーナさんが、俺の前に座ってくる。大人びたシャンプーの香りが俺の鼻を刺激したが、それにドギマギする余裕すらない。


「よしてくれ……情けなんて……」


「まぁツイてなかったわね。ごちそうさま~」


 ちくしょー……。今日は調子いいと思ったのになぁ……。最後の手札もスリーカードのキングだったんだぜ? それなのに、あのタイミングでフルハウスはねぇよ。フルハウスは。


「はっ……! もしかしてイカサマ……なんてことないでしょうね?」


「––––––––––––」


 あれ? 反応ない? なんか、少し顔を背けてるし。おかしいな? なんで反応ないのかな? あ、なんか少し笑顔になってる? どういうことだ?


「イカサマ……じゃあ、ないですよね?」


「––––––––––––––––––フッ」


 え、何今のフッて。そういう事なの? ねぇ、俺、だまし取られちゃったって事。三連勝で調子乗らせて掛け金上げた所を狙い撃ちって事か!?


「イカサマ……してましたね?」


「ああ、そうだ~君にいい話があるんだ~」


「騙されねぇぞ! 露骨に話そらすなぁ!!」


 そんな俺の嘆きを無視して、一つ手を叩いてから、ファレーナさんは一枚の紙を渡してくれた。


「ん……賞金首?」


「ついさっき入った仕事よ。奴隷商人のアーノルド=シュレッケン。その捕獲、それが難しい場合は殺害。あなたが今日賭けたお金の数十倍もの報酬が入る上に、危険手当の2万ゴールドは前払い制。今のあなたにピッタリの話だと思うけど?」


 その依頼書を持つ手がふるえた……。


 なんてことだ…。さいっこうじゃないか!!!! 奴隷商人討伐? 金なんてもはや関係ない。これこそ俺が待ち望んだクエスト!!! ついさっき俺がイカサマされたのなんて一気に吹き飛んだ。


「これだよこれ! やるぜ!!! このクエスト、俺がクリアしてみせるぜ!!!」


 この世界に来てこれだけ気合いの入る仕事は初めてだ! 悪人の討伐……ああ、なんていい響きだろうか……。


「明日から忙しくなるぞーーーー!!!」


「うるさーーーい!!! 他のお客さんの迷惑だから!!!」


 スピカの怒号もまったく聞こえず、俺は新しいクエストに夢中になっていた。




 自室に戻った俺は、ペルと電話をしていた。


『ルールブック4-3:通信機能があるアイテムは、女神との通話機能が追加される。ただし、1年間のみ使用できる』


 通称、『転生人生あんしん一年サポート保証』あなたの転生人生のスタートを、担当女神がきっちりサポート! 24時間365日あなたの近くに安心保証! お困りの時はお電話を。


 って、女神はテレアポかよ! っと、最初はツッコんだものだが、やっぱり電話があるのとないのではだいぶ違う。


「で、どう思う? ペル」


『奴隷商人ですか……どういう事なんでしょうね?』


 依頼書を読んでいくと、どうも五~六人の兵士でエストの南西の国、クレンシエントの森で捕獲に挑むが全員消息不明。死体もなく、全員が消えていた。


 クレンシエントにはエルフの森もあるが、そこでも、見つからなかったという。


 アーノルドにそこまでの戦力があるとは思えない。だが、何かしらの方法で迎撃したとしか思えない。


 俺は再び、地図に目を落とす。


 俺だって、ちゃんと勉強しているんだ。もう国はすべて覚えた……はず。


 えっと……まず、この世界はティエア。計十三の国が存在し、そのすべてがティエア連合国とまとめられている。


 獣人の国であり、細かな種族別に五つの里に分かれる国『クレンシエント』


 海竜族の国、水の都。『シーファト』


 翼人の国、浮島も存在している魔法の聖地。『レジーナ』


 魔族最大の国。魔王の住むもう一つの王国。『ディスペラ』


 そして連合国最大の国、王都『レークス』


 と、主な国がこの六国。さらに……。


 海竜族が『ズュート』、『オディウム』


 魔族が『ノルト』、『シウーメス』


 翼人が『ミセリア』、『ディザイア』


 獣人とエルフの連合国『ヴェスト』


 と言う感じで国を支配している。


 そして、ほぼすべての種族が住む、この小さな国『エスト』


 以上13国で成り立っている。……よし覚えてる。


 その中でもクレンシエントには、エストに一番近い国である。街道は一本のみだが、各国から孤立気味のエストにとっては最大の支援国家と言っていい。


 そして前述の通り5つの里が存在しており、それぞれ猫獣人族(ケットシー)犬獣人族(ワーウルフ)霊長人族(グノン)鳥獣人族(ハーピィ)龍人族(リザードマン)が住んでおり、鳥獣人族とエルフが一緒に暮らしているらしい。その領地が、通称エルフの森と呼ばれている。


 今回はそのエルフの森の外れでアーノルドを発見。五~六人の連合軍兵が追ったらしいが、その後消息不明。


 今回の依頼書の主もその連合軍だ。各ギルド登録者にも協力してほしいという事だ。


『クレンシエント……かぁ』


「ん? どうした? ペル」


『あ、なんでもないです。それよりどうしてアーノルドを追いかけた兵士がいなくなったか……ですよね』


「そうだな……ペル、何かわかるか?」


 残念ながら俺は、まだ魔法とかその辺の知識はまだからっきしだ。だから、ペルなら何かわかるかな~っと。


『今は何とも言えませんが……そうですね……明日の朝まで待っていただけますか? それまでには調べることができると思います……多分ですけど』


「本当か? 頼む!」


 今回はペルに任せることにした。……大丈夫…………だよな?


「ところで、ペル。今どこにいるんだ?」


 ペルは俺を守るという使命があるとのことだが、基本的には自由にやって欲しいので、必要な時以外は自由にしてもらってる。電話もあるし、何かあればこうやって通話すればいいしな。


『王都レークスです。昔転生した人が、そこでお店をやってて、ちょっと様子を見に来てるんですよ』


「へぇ……」


 王都かぁ……お金貯まったら遊びに行きたいな。


「それにしても、よく王都に行く金あったな」


『いえ、これはおつかいクエストです。スピカさんの』


「え? スピカが?」


 スピカ、クエストなんて出してたのか……俺も受けとけばよかったかなぁ?


『ええ。そのお店に荷物を届けてくれって。そのお店がたまたま私の知っている転生者さんのお店だったって事ですよ』


 へぇ……スピカもクエスト発注していたのか。俺も受けておけばよかったかな?


『とにかく、レークスからクレンシエントでしたら通り道です。私の方も調べてみますよ』


 たしかに、レークスとエストの間にはクレンシエントがある。ここはペルに任せて大丈夫だろう。

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