第四話サブストーリー ~アトゥム視点~
サブストーリー ~アトゥム視点~
「期待しているよタクミ君。君の物語はじつに面白そうだ……フフッ」
おや? ……宿屋から誰が出てきた。
僕はその影を追いかけてみる。
「畜生!! なんで生きてやがるんだあいつ!!!」
ああ、そうか。君が彼を殺そうとしたんだね。
「やあ!」
僕はその男の前に姿を現す。
「うぉ!? なんだキサマ!!!」
「なんだとは失礼だなぁ。これでも僕、神様だよ?」
「神? バカを言うなキサマのようなガキが神な訳がないだろう!!」
まぁこの姿じゃ誰も信じてくれないか。……僕は苦笑し帽子を深くかぶる。
「まぁいいさ。それより君は誰に雇われたのかな?」
「いうワケがないだろうが!! とにかく、そこどけクソガキ!!!」
と、腰にぶら下げてた短剣を逆手で取り構える。
「へぇ……やっぱりアーノルド君が絡んでいたんだね?」
ビクッっと体が震えた。……ああ、心を読んだのか!? とか……反応わかりやすいなぁ君。
「だけど君はそれだけしか知らないようだね。まぁいいさ。もう用はないよ……消えてくれ」
「何をなめてやがる!! ……へっ? ごっ? びがっ!?」
「彼の物語には、君の居場所はないんだ……。汚らわしい手で僕の世界を汚さないでくれるかなぁ?」
––––––––––––––––––創造主の過度の干渉を感知しました。ペナルティが発生します。
…………実際のところ、僕もこの世界のことを全て知っているわけではない。
この世界は、あまりにもゲームに近いようで……だが確実に違う面も持ち合わせている。
創造神なんて万能の存在に見えるだろうけど、実際はそうでもない。
いくつものルールと、しがらみに囚われた存在。
だから、僕はまだこんな悪あがきをしている。
「結城拓海…………」
彼は、まだ未知数だ。僕が経験した未来では、彼は少なくとも転生後すぐに死んでいる。
そして……滅びが始まる。
それを防ぐキーと思えるのがタクミだ。彼は……やはりスサノオに似ている。この世界の本当の主人公……すでに死んでしまった彼に。
本当に彼は何者なのか…………。
そして……スピカ=フランシェル…………ペルセポネ。
このいくつもの因子がどうやったら、滅びの回避に向かうのか…………。
コマは揃ってる。……あとは、僕と彼次第か。
「ペルちゃん……ごめんね」
彼女は転生先を間違えちゃいない。
この世界は、結城拓海が願った通りの、ハードモードの世界だ。
現に、彼は一度死にかけた。そして死を回避してもなお、さらにまた別のいくつもの試練がある。
今回は、彼の死は、彼では回避できないから、その近くにクイーンを置いて回避したに過ぎない……。
だが、彼はナイト……ルークやビショップのように単純な強さとは違う。変則的な……だが使い方次第ではクイーンより勝る強力な力だ。
そして……次の相手の手は…………。
「《チェック》…………」
ここは、ナイトの働き次第で回避できる。
キング…………スピカ=フランシェル。彼女が奪われれば、世界は終わりだ。
……僕が偽証できるのも、そろそろ限界がある。
相手のキングを倒す作戦も……今はまだない。
そもそも、相手が何者かすら実態がつかめていない状況では、無理もない。
「チェスで勝つためには……ポーン……つまり主役達以外のコマも重要だ」
このチェスは、僕の意思で自由に動くわけではない……コマ達が自分で感情を持って動いている。
なぜなら……この世界は––––––––––。
「……全てはナイト次第……ズルしてまで守った大切なコマがどう働いてくれるか…………」
この世界を変える切り札となるか……それともただの使い捨てのコマの一つに成り下がるか…………。
まずは、お手並み拝見……だね。