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閑話「神々の洗礼」フレイア視点

「ふーんふーんふーーん」


 アーちゃんに会うのも久々だなー。……まぁ向こうでは何度も合ってたけど。


「アーちゃん!! オッスオスーーーー!!!」


「っつ!! ばっか!!! もう数分遅くてよかったのに!!! まーた死んじまったじゃねぇか……」


 まるでゲーム中に声をかけられ文句を言う子供のような絶対神。……こいつ普通に見たら絶対神なんてわっかんないよねー。


「そんな事言ったって、アーちゃんが遊んでるってわかんないよ……なにしてたの?」


「いや、何回切られたら死ぬかゲーム」


「アーちゃんそれ好きだねー。うわー勇者さん細切れじゃん」


 目の前には中空に浮かんだデジタル映像。テレビのような映像だけが空中に浮かんでいて、そこには四肢をブツ切りにされた肉塊が存在していた。


 その勇者だったものの隣には、僧侶と思われる女性がいた。戦士とほとんど同じ状態だが、胸が刺し貫かれ完全に絶命している。


 その殺人犯……おそらく勇者の恋人だろう女剣士は泣きわめき、何が起きたのかわからず、だが動けずにただただ絶望する。


「ツマンネ……もう死んでいーや。こいつ」


 どうやら洗脳を解いたようで、その場にその子が崩れる。ようやく自分の自由が戻ってきたことを知り、剣を取り、それを自分の胸に突き刺す。


「あらら、死んじゃった……これでこの世界も終わりかねぇ」


「この世界の創造神は既に自殺済みだし、終わるんじゃね? まぁ今更、世界の一つや二つ消滅したところでどって事ないだろ?」


「まーね。あ、そういえば“ほーこく”があった」


「ん?」


「スピカちん死んだよ」


「あ、そう」


 予想外の言葉に、アタシは首を傾げた。


「あ、そう……っていいの? 大切な存在じゃなかったっけ?」


「予想通りだからねぇ。むしろまだ生きてたの? って感じ?」


 拾い上げたルービックキューブをいじりながら答える。


「へぇ……じゃあ計画に支障はないってことだね」


「……むしろ好転したってところだな」


「どゆこと?」


 やれやれとバラバラの絵柄に組み上げたルービックキューブを、高い弧を描いて私に投げてきた。


「スピカ=フランシェルは生きてるよ」


「っと……生きてんの?」


 受け取ったルービックキューブを、私は完成に向けていじり始める。


「そもそも、あの創造神の目的はスピカの生存。殺したら本末転倒でしょ」


「んじゃあ、どーやってウチらの監視をかいくぐったのさ……あの子が生きてる限りいつでも監視できるはずだよね?」


「決まってるだろ? 偽証だよ」


「あ、それかー……はい、できたよ」


 投げ返したルービックキューブは、見事に揃ったカラフルな色を示していた。


「じゃ、偽証でスピカが死んだことにしたって事?」


「いいえ、それだけだとスピカの死は絶対。偽証はかけられた本人にも有効。自身が死んだと偽証すれば仮死状態になり、呼吸もできない。生きて戻る事などあるわけがない」


「へぇー。そーなるんだぁ」


 偽証なんて便利な能力持ってないから知らなかった……。


「なので、スピカが死んだと偽証した上で、もう一手間必要ですっと」


「もう一手間……ああ! わかったかも」


 なるほどなぁ……それならスピカは傷つかずに隠れることができるのかー。


「さすがに、ここまでヒントを与えれば気づくか……さてと、ずっと封印されてて疲れた。とりあえず飯食いてぇ」


「ご飯ねぇ……じゃあ、現実世界で肉食お!!」


「採用!」


 決定した私達はゲートを作る。輝く光の扉が現れ、その先は現実世界だ。


「それにしても、まだあいつら気づいてない見たいだよ? この力の存在に」


「そりゃまだ、たどり着けないだろうねぇ」


 ……ルール無視の転生? 本当に草生えるわ。


 私らはそもそも現実世界だろうが、異世界だろうが自由に往き来できる裏口(バックドア)の能力が存在するんだから。


 だから転生ではなく、ただの移動。ばっかだよねー。ルール無視転生だー!! とかなんとか言って騒いでるからずっと気づいてないでやんの。そもそも移動しているだけだから創造神のルールどころか転生ルールなんて関係ないっての。


「それにしても革命だったよー。最初にこの能力を知った時にはさー。私ティエア生まれだから現実世界がどんなところか気になってたんだよー。そしたら、いつでも移動できるって……」


 いつでも移動できる。だからそもそもアーちゃんには封印なんて意味ないんだよなー。


 この絶対神もティエアに入った時だけ封印されているだけで、それ以外は移動し放題。だからこの神様、完全にこの封印空間を自室にしちゃってるし。


 ついでに私の能力をアーちゃんに継承したとか勘違いしている創造神(バカ)もいたけど、本当は真逆。まさにあの時、アタシは裏口(バックドア)を手に入れた。


 創造神を騙すために精神崩壊したふりしてたけど、裏ではめっちゃ現実世界で遊んでたんだよねー。


 そのおかげで、こんな面白いものも手に入れたし……ねっ!


 手から離れたそれは、弧を描き戻ってくる。


 それをキャッチせず送り返す。それを繰り返すだけでもすげー楽しい!!


「ループ・ザ・ループだっけ? その技」


「ちっちっちっ! インサイド・ループだよアーちゃん」


 軌道を上に変えて、そのままキャッチする。


「ヨーヨー……いまいち何が面白いのかわからん」


「何言ってんの!? おーっし! じゃあアキバいこーぜ!! アタシの超絶トリック見せてやんよ!!」


「その前に飯っ!! ……ってアキバにもあるか」


 去ったあとの封印空間はまるで子供部屋だ。ゲートが閉じる瞬間に生じた風で、コロコロと転がるけん玉の玉がころがる先を見つめた。


 そのけん玉を、虚ろに覗く衛士の頭もまたコロリと転がった。


「じゃねー。ちょっと楽しかったよ」


 その先は死屍累々。血の海の中に無数の死体を嘲るように私は現実に戻る。




 フレイアから……東条佳奈美として。

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