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第十五話サブストーリー~ペルセポネ視点~

「スピカさんがすっごくいいポエムを捨てちゃってたんですよぉ……もったいないと思いませんか?」




「タクミさんずっと書いてた特訓のノート捨てちゃったんですよ? もったいないですよね~」




「って、言っただけなのになんで私ぶたれるんですかぁ~~!! ひどいと思いませんかウンディーネさぁん!!!」


 たまたまお二人に会って話そうとしただけなのに、まるで鬼になったかのように怒られちゃいました。


「いや、それはアンタが悪いでしょ」


「ひぐぅ!! な、なんでぇ!!!」


 二人から逃げてきた私は運よくウンディーネのいきつけの店でかくまってもらえたのですが、ウンディーネさんにも言われてしまいましたぁ。


 外にはいまもなお、「どこじゃあ~~~~~!!!」「駄女神はおらんかぁ~~~~!!!」と二匹の獣が徘徊しています。……怖いです。


「まぁ、もうちょっと(かくま)ってあげるから、ほとぼりが冷めた頃に謝ってきな」


「うぅ……本当にもったいないと思っただけなのにぃ」


「いや、アンタ基準だとそうかもしれないけど……絶対恥ずかしいわよそれ」


「うぐっ……で、でも二人とも一生懸命書いてたんですよ?」


「あの子達も子供ねぇ……昔アトゥムが言ってた中二病ってやつかしら?」


 私は一瞬アトゥム様の事を知ってる様子のウンディーネさんに驚きましたが、彼女の境遇を考えると知り合いでもおかしくないと思いました。


「ウンディーネさんはニョルズさんの後継者でしたね」


「え……そ、そうだけど。どうしてあなたが知ってるのよ」


「ふふん。こう見えても女神ですから」


 と胸高らかに宣言すると、まるで可愛そうな人を見るような目で見られてしまいました。


「はいはい。それはよかったですねぇ」


「し、信用されてない!? わ、私本当に女神なんです!!」


「そうは言ってもねぇ……どう見たってお子様じゃない」


 うぅ……た、確かに身長はフォルちゃんに次いで二番目に小さいですけどぉ……。


「私の見た目が幼いのはエルフだからです」


「確かに伝承では千年以上生きるとされてるエルフだけど、寿命はせいぜい二百年程度でプライドの高いエルフが大見栄を張ってついた嘘ってのはわかってんの」


「うぅ……それはそうですけどぉ」


 それでも私は百十二歳。十九歳のはずのウンディーネさんより長生きなんですよね。


「やれやれ。仕方ないね」


 私の背後から少年のような声が聞こえた。振り返ると帽子を被った男の子がにこやかに笑ってる。


 だけど、その男の子の正体を知ってる私達は、深く頭を下げた。


「やだなーそんなにかしこまらないでよ。僕がそういうのあんまり好きじゃないのペルちゃんもウンディーネも知ってるだろ?」


「いや、どうしても創造神様となると……えへへ」


 私が頰をかいていると、アトゥム様は私達の輪に入る。


「彼女は間違いなく女神だよ。僕が保証する」


「あ、アトゥムがそう言うんなら本当なんでしょうね……にしてもなんつーメンバーよ……レアスキル持ちが二人、剣聖とナイトが一人。んで女神ですって?」


「たはは……女神堕ちしてますけどね……はは」


 だんだん気が沈んできます……うぅ、恥ずかしい。


「気にしなくていいよ。君はよくやってる。君もこの世界を救うために必要な一人……クイーンだからね」


「クイーン?」


 なんのことだろうと首を傾げる。


「君にはいずれちゃんと説明するよ。とにかく今は自信持って……ね」


 すると、アトゥム様は霧のように消えていった。


「あー、その……ごめんなさい。まさか本当に女神とは」


「いいんですよ。女神一年目で即女神堕ちの駄女神ですから……」


 うぅ……いじけそうです。




「へぇ……タクミを転生させる時に失敗をねぇ」


「はいぃ……」


 すると考え込むウンディーネさん。


「……本当に失敗だったのかしら?」


「え?」


「いや、なんでもないわ……忘れて」


 首を振って会話を止めたウンディーネさんだけど……確かに私にも違和感がある。


 なにかとてつもなく重大な事を忘れてるような……。


「でもよかったじゃない。タクミもいい恋人見つけた見たいだし」


「え、いえまだ二人は付き合ってないですけど?」


 そう言うとウンディーネさんは思わずテーブルを叩いて、樽ジョッキから麦酒(エール)が波を立ててこぼれちゃいました。


「は、はぁ!? なんでよ!? どう見たって両想いだったわよ!!」


 二人はたいして意識してなかったでしょうが、話す時間も長く見つめあっては笑い合う。見てる方が恥ずかしくなるほどのラブラブっぷりを見せつけていました。


「ええ……多分二人ともお互いに気持ちはわかってるんだと思います」


 そう、二人ともそれで気付かないほど鈍感と言うわけではないです。でも……あの二人は……。


「ふぅ……なんか事情があるみたいね」


「え、ええ……まぁ……」


 さすがに私でもこの秘密くらいは守れます。うん、私偉いです!


「わかった。これ以上詮索はしない。だけどおせっかいは焼かせてもらうわよ」


「へ? あ、ちょっと!!」


「大丈夫! どうせなんか喧嘩しちゃっただけでしょ? ウンディーネお姉さんに任せないさい」


 と言うと、ものすごい速さで酒場を出てしまいました。


「た、大変ですっ!!」

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