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第十五話サブストーリー~スピカ視点~

 バーベキュー終了の数時間後。


「んぅ………」


 目が覚める。


 さすがにさっきは飲みすぎたと反省しながら、ガンガンする頭に手を当てる。すると手についていた泡が顔につき垂れる。


(へ……あわ?)


 なぜに今泡が手についている? と思えば全身泡だらけだ。服も着ていない。


「あら、気が付いちゃった?」


「へぅ!?」


 後ろから抱きしめるように撫でまわされる。


 内股のきわどい部分も触られて、体がビクビクと反応してしまう。


「ううううううウンディーネさん? いったいなにおぉ!?!?」


「何って、体洗ってあげてるのよ? そんなに酔っ払ってちゃ自分で洗えないでしょ?」


 確かに、酔いが全身に回ってまともに体が動かせない。


 だからと言って、なぜスポンジやタオルを使わずに手で洗ってるのこの人ぉ!?


「あぅ……そ、そこぉ……だめぇ」


「あら、何がダメなのかしら? うふふ」


 胸の敏感なところをまさぐられて、くすぐったいような快感にだんだん酔いとは違うほてりを感じる。


 ウンディーネの吐息が髪が肌をなでて全身ををくすぐる。


「ウフフ……かわい。もっと、いじめたくなっちゃうなぁ……」


「あ、そこは……」


 そして、その手は女性の一番敏感な場所へと向かう。


 抵抗することが許されず、きゅっと瞳を閉じる。


「ウフフ……アハハハ! 冗談よ。本当に可愛いわねぇ」


 その笑い声でハッと我に返る。


「も、もう! ウンディーネさん!!」


「だいぶ体が動くようになったでしょう? 体内のアルコールを浄化させたから、もうなんともないはずよ」


「え? ……あ」


 確かに頭痛も消え、体も自由に動く。さっきから全身をまさぐってたのは別にエッチな目的ではなく、血液中のアルコールを手で直に触って浄化させていたとウンディーネさんは教えてくれた。


「それとも、続き……してほしかった?」


「もーーーーー!!」


 頬をハムスターのように膨らませながら、ぷんぷんと怒ってみせる。


「ごめんなさい! アハハハ!! 大丈夫よ。あなたの体はタクミ君の物だしねぇ」


 顔がトマトのように赤くなってるのがわかる。


「へっ!? そそっ、そんなことないですもん!!」


「本当にわかりやすいわねぇ。からかい甲斐があるわ」


「そ、それにタクミとは……私は」


 そこで言葉に詰まる。


「? 私は……?」


「な、なんでもないです。もう自分で洗えますから離れてください!」


「ウフフ……わかったわ。さぁ~って、次はあのエルフちゃんかしら」


(あ、ペルちゃん……ご愁傷様)


 その日、大絶叫ののち、ビクンビクンとうち上げられた魚のような女神が風呂場で発見され「もう、女神に戻れない体になっちゃいましたぁ」と虚ろな目でつぶやいていた。




「……ふえ?」


 気がついたら、私はいつものベットに腰掛けていた。


 さっきまで旅行先の宿屋にいたのに…………。


 あ……あかり消し忘れている。


 この世界のライトはクリスタルという、魔力を込めた石を元に使っているものが多い。


 この、スタンドライトも同じシステムで動いており、蒼炎がゆらゆらと揺らめいている。


 ……なお現実世界のように電気がないかといえば、実は存在する。だが、普及しているとは言い難いかな?


「––––––––なんだ? もう寝るのかよ」


「へ?」


 誰かが、ベットで横になっている。


「……だ、だれ!?」


 その声の主が起き上がり、私の顎を手で添えて軽く引く。


「せっかくの夜じゃねぇか……もっと楽しもうぜ」


「た……タクミ!?」


 私は、一瞬放心しそうになった体を数歩後ろに引く。


「どうした……スピカ」


「どうしたはこっちのセリフよ……っ」


 動機が治らない……さっきからバクバクなりまくりだ。心臓がまるでエンジンのように激しく鼓動し、体を熱くしていく。


「まったく……困った子だ」


「え? きゃあ!!」


 手を引かれたと思ったら、ベットの上に押し倒された。上に覆い被さられ、左手をタクミの手で完全に拘束される。


「恥ずかしいのはわかるけどよ……俺も恥ずかしいんだ……ちっとは我慢しろ」


「は……恥ずかしいって……どういう…………んあっ!?」


 む……胸触ってきたっ!?


「相変わらずちいせぇな……だけど、そこがいいんだよなぁ」


「ちょ……やめっ……あんっ」


 寝巻き越しに弄られ、くすぐったいのとは別の感覚に襲われる。


 ウンディーネさんの時と同じように……いや、それ以上に私の意思とは関係なく火照りが強くなっていく。私は足をバタつかせ抵抗するけど、それ以上何もできない。


 男性の力と体重に負けて、ビクともしない体に強制的に引き上げられる感覚……だけど、不思議と恐怖はない。何度も何度も体に電気が流れるように痙攣し、次第に抵抗する意思すらなくなっていく。その度に快楽に負けて喘ぎ声が溢れ出てくる。


「感じすぎだろ、ったく……口塞ぐぞ」


「え……んむぅ!?」


 ただでさえ呼吸ができなくなってきてるのに、息が完全にできなくなってしまう……。


 もう、どうにでもなれと……私は完全に抵抗をやめ、身をゆだねた。


 そして、キスをされながら、右手が内股を弄り始める。


 嘘……い、今そこ触られたら…………っ。




 や……やっぱ…………まだダメェーーーー!!!







「んあ?」



 目の前からタクミが消え、宿屋の天井が見える。


 ……私の唇には誰かの腕が……股間には誰かの足が……ってか。


「ペルちゃん……」


 女神様の腕をどかしながら、ペルちゃんの寝相に愕然とする。


「うぅ……ウンディーネさん……もうだめぇ…………」


 ……覆いかぶさってた方が責められていらっしゃる…………一体どんな夢だ。


 完全に目が覚めてしまった私は、少し夜風に浸ろうと、外に向かう…………。




「……女子(おなご)の夜歩きは危ないぞ……」


「コジロウさん……」


 旅館から差し込むあかりが、白い毛並みをオレンジ色に染め上げている。


「どうした? 眠れなくなったか」


「え、ええ……ペルちゃんに完全に起こされちゃいました」


「はは、そうか」


「コジロウさんはどうして?」


「わしはフォルに起こされたわい」


 私達は同時に吹き出し、お腹を抱えて笑いだした。


「まったく……ペルセポネの奴め」


「ん? ……コジロウさん、ペルさんのこと知ってたんですか?」


「ああ……あいつも女神になる前は色々あったからのう……寝相が悪いのも治ってないようじゃの」


 あはは……やっぱり変わってないんだ。


「ちなみに、ペルセポネとウンディーネは初対面ではないはずじゃぞ? まぁ、あの時はまだウンディーネは幼かったから覚えてないかもしれんがのぉ」


「えっ!? そうなんですか!?」


「ああ。ペルは名前でようやく気づいた様子じゃったが……赤ん坊じゃったからのう……気づかなくて当然かもしれんのう」


「知らなかった……結構知り合いが多かったんですね」


「まぁな……しかし、タクミ殿がペルの転生させた転生者と聞いた時は驚いたぞ……」


 そう言った後、コジロウさんは何かに気づいた様子で考えこんだ。


「…………そうか、ペルも必要な人間の一人という事か……」


「必要な人間の一人?」


「––––––––––スピカ殿……お主は確か、創造(クリエイション)を使えるのじゃったな」


「ええ……そうですけど」


「そういう事じゃったか––––––––」


 なにかを察したようにうなづき、私の肩を叩く。


「……お主はこの先、最大の試練に立ち向かうことになろう」


「え……」


 その目は……なにかを察したように優しく……そして厳しい目だった。


「だけど、惑うな……恐れ抱かず信じろ……お主の母も見ている」


「かあ……さん?」


 どうして……あの人が…………。




 ドクンと––––––––––。




 封印したはずの記憶がフラッシュバックする––––––––。




 私は……なにかとてつもなく大切なことを忘れてる––––––––––?







 私の死は––––––––––確定していた––––––––––––––?







 だったらあの事故は––––––––なんだったの?






「大丈夫かっ!! スピカ殿」


 その言葉で、私の意識は引き戻された。滝のような汗と、頭痛と、吐き気と……涙。あらゆる不愉快な感覚が、気がつかないうちに私を襲っていた。


「––––––––すまん。ワシが余計なことを言ったばかりに」


「コジロウさんの……せいじゃ……ない……」


 私は、よろめきながらも立とうとするが、バランスを崩してしまう。


「無理をするな」


 支えてもらい、私は「ありがとう」と一言だけ伝えた。


「ええっと……こういう時はそうじゃな……なにかいい事を思い浮かべるんじゃ」


「いいこと…………」


 えっと……なにかあったっけ?


「……タクミ」


「え?」


「あっ」


 小さく声を漏らした。()()()()と言って、タクミのことを思い出すなんて…………。


 いや、これが私の素直な気持ちなのかもしれない。私は……あの人の守ると言った時の背中が……たまらなく愛おしくなっている。


「……タクミ殿のことは好きか?」


「……わからない……誰かに恋をしたことなんて……なかったから」


「そうか……ならば、その気持ちを大切にしなさい…………その恋は、もしかしたら……世界をも救うことになるかもしれんからのう」




 その言葉の真の意味を知るのは––––––––まだまだ先の話だった。

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