表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/143

第十三話サブストーリー~アトゥム視点~

 ……水の都 シーファト。そこの酒場にいつもいるはずだけど……。


「おい、聞いたか?」


「ああ、間違いない」


 海竜族の男達が、噂をしていた。全身がうろこに覆われていて、耳形が魚のひれのよう。人間と言うより、二足歩行のトカゲって感じだ。


「エストギルドの奇跡の料理人が……シーファトに現れるらしい!!!」


「マジか!! あの麦酒(エール)をさらにうまくしたビールとやらに改編し、脂身が少ないはずのレインボーフィッシュをサンマノシオヤキとやらに作り替え、さらにSUSHIと言う謎の生魚とライスの食べ物を作り出すまさに奇跡の料理人!!!」


「ラーメンとかいうスープパスタも絶品らしいぞ!! 俺らにも料理してくれねぇかなぁーー!!!」


 三~四人ほどの男達の会話を、青髪の女性がワインを飲みながら聞いている。


「へぇ……奇跡の料理人ねぇ…………」


「なんだよウンディーネ。酒好きのアンタもやっぱ興味あんのか?」


「エストには、ずっとクソまずい麦酒(エール)くらいしかなかったのに、いつの間にか酒の名所にさせた実力……私にも見せてもらおうじゃない」


 妖艶な美を全身から放ちながら、空になったグラスを置いてパイプに火をつける。


 煙を吸いながら髪をかき上げる姿に、海竜族の男達も魅了される。


 大人な魅力をかもちだしながらも、張りのある白い肌。男たちの物より小さいヒレ型の耳とうなじに色気を放つ。


「これで十九歳ってんだから……わかんねぇよねぇ……」


 我ながらすごいデザインだと感心していた。


 さぁて、ちょっとウンディーネにも話をしておかないとね。僕は観光気分から創造神としての顔に切り替えた。


 僕が近づくと、気配を感じたのかウンディーネがこちらを見る。


 感心しつつ、僕は僕の世界に彼女を招き入れる。




「やっぱり創造神様ですか……」


「かしこまらなくていいよ。僕はそんなにたいした存在じゃない」


「たいした存在じゃないねぇ……一応創造神がいなけりゃ私達は存在してない。もう少し自信持っていいんじゃない?」


「……滅びの待つ世界にしたのは––––––––僕の責任だ」


 そう……忘れもしない未来で見てきた僕の罪だ。


 僕はこの世界に直接干渉できない……だから、勇者と仲間達に救ってもらうしかないんだ。


「そうかもしれないけどねぇ……それを防ぐために私や剣聖がいるんじゃないの」


「わかってるさ……だけどそれではコマが足りないんだ」


 相手は未知数の力を持っている……タクミくんがいても、人数不足は否めない。


「ふぅ……まぁ母様の代からの縁だからね。だけど……私はまだ……」


「ごめんね……まだ辛いだろうけど」


 するとウンディーネは首を横に振った。


「ううん。大丈夫よ……いずれ乗り越えないといけない事よ」


 誰かの幻影を目で追いかけるように、遠い場所を見つめる。


「……ごめんね」


「よしてよ……それより、世界を救済するためのコマ……全員揃いそうなの?」


 僕がチェスのコマに見立ててつけた、ティエア救済のための人物(キャラクター)達。


 クイーン 女神 ペルセポネ。


 ビショップ 魔女 ウンディーネ。


 ルーク 剣聖 コジロウ。


 ナイト 勇者 結城拓海。


 そして……キング––––––––全てのキーとなる少女。




 ––––––––スピカ=フランシェル。




 彼女を奪われれば、文字通り僕達の負けだ。


 相手はまだキングが誰かは気づいていないようだ。だが彼が、この世界の登場人物(キャラクター)となれば……誰がキーとなるかはすぐにわかる。


 いや……もしかしたら、偽アーノルドが接触した時点ですでにバレているかもしれない。


「……ウンディーネ。君は今度来る奇跡の料理人と接触するつもりなんだろ?」


「は? ……んまぁそのつもりだけど……それがなんの関係があるのよ」


「その料理人の名前は知ってるのかい?」


「……知らないけど」


 僕は、覚悟を決めたように……その名前を告げた。


「彼女の名前は……スピカ=フランシェルだ」


「なっ!! そ、そんなわけないでしょ!!! あの子は私がっ…………私が––––––––––」


 そう……彼女は知っている。スピカのことを…………。だが、それは彼女じゃない。


「スピカと言っても、同姓同名……姿こそ似ているけど種族も、普通の人族だよ」


「っ……そ、そうよね……彼女のわけがない」


「……そして、彼女がキング…………この世界の命運を分ける」


「ど……どういうことよ」


「ごめん––––––詳しい理由は僕にもわからないんだ…………だが、彼女がキーであることだけは間違いない」


 偶然にも名前が一致したあの少女が……どうしてキーになるのかはわからない。


 だが……彼女の生まれた理由……それこそが全ての元凶になっているのかもしれない。


「スピカ…………」


 ––––––彼女にとっても、その名前は特別なものだ。




 同姓同名の翼を持った少女……彼女はウンディーネにとっては親友と呼べるものだったのだから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ