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第百二十三話「私の主人公」???視点

「くっ……バカな……オレが負けるだと!? 死ぬだと!?!?」


 観測完了……追跡開始。


「だが……神は死んだところで意味はない……奴らは忘れてる。オレ達、神にはバックアップがある」


 予想到達点合致……ターミナルステーション起動。


「復活したら真っ先に殺してやるっ!! 宣言通り何度でも殺してやるっ!!! 永遠に苦しみ抜いて許しを乞うまで殺し続ける!!! あの––––––」


「––––––はい。捕縛です」


「え…………?」


 大丈夫……ちゃんと閉じ込められました。


「な……何だこれ……おい!!」


 バックアップが保存されていた場所は、小さく透明なカプセルになってました。ここにあったバックアップはすでに私の権限で処理しました。なので今彼は神でも何でもなく、ただのソウルプラズムです。私でなくても誰でも消せる小さな意思の電気信号にすぎません。


「これはバックアップのある部屋に仕掛けたセキュリティシステムです。どうやっても脱出は不可能ですので諦めてください」


 そう話すと、最初の神様は私を見て目を見開いて真っ青になります。


「貴様……ペルセポネっ!! ペルセポネ=ハーデスかっ!?」


 私は、皆さんの凄さに本当に感激して……私の今の立場は本当に相応しいのかと考えてしまい、ちょっと自嘲気味に笑います。


「––––––本当に、アトゥム様はすごいです。あなたが最初の神様と気付いた時から、この結末まで予想してたんですから」


「何を言っている……貴様がここに来れるはずがない!! 貴様はただの––––––」


「……ただの––––––第六次元最高管理者。冥界の神。ハデス……それが、私の今の名前です」


「なっ––––––」





 そう……全てはアトゥム様が最初の神が本物のアーノルドさん……ゼクスさん……全ての方々と同一人物である事に気付いた時から、この終局に向けて駒を動かし続けた。


 最初、起源神様は全てアトゥム様が周りの駒を動かし、起源神の封印に向かって作戦を立ててると考えた。


 ですが……アトゥム様は自ら私と立場をかわり、自らが駒となる事で欺いた。


 つまり、私はアトゥム様が真実に気づいた数日後から……私はティエアの新しい創造神となり、密かにみなさんを動かしていました。そして、アトゥム様は女神となり彼を欺いたのです。


 この結末に向かうために…………。





「あなたが人を信じる事をしなかったから、この作戦は成功しました」


「どういう……事だ」


「あなたは人を信じることをしなかった。だから、自分の全てを赤の他人に任せるアトゥム様の作戦に気づけなかった」


 そう……彼がもし、人を信じていれば……私達の作戦は失敗していた。


 ––––––アトゥム様が私を信じたから、私にティエアの創造神を任せることができた。


 ––––––タクミさんを信じたから、運命の(ストーリー・)破壊者(ブレイカー)に覚醒する未来を早紀さんも、そして私も信じることができた。


 ––––––早紀さんを信じたから、私の作戦通りにタクミさんは行動し、封印石の確保。そして、早紀さんの体内に入り込む事に成功した。


 ––––––私を信じたから、崩壊するティエアの中で、健司さんは全てを私に任せてくれた。


 ––––––私の言葉を信じたから、第五次元への通信が開くだけではなく、盤古(ばんこ)さんは私に全てを託して第六次元の最高管理権限をくれた。


 ––––––そして私は信じた……タクミさんが……私の最高の主人公が、最初の神を倒してくれるって––––––。


 そう、タクミさんが運命の(ストーリー・)破壊者(ブレイカー)に覚醒したのは、私が彼を転生させたあの時から、ずっと私の心の中の主人公でいてくれたからです。


 女神だった時はただ信じてるだけの存在だったものが、私が新しい創造神となった事で可能性が生まれた。


 ただの悪役だった彼に、それでも主人公としての力を手にする。そんな私が願うだけでは0%の可能性……。


 私が彼を信じ続ける事で可能性は生まれ、そして早紀さんが信じる続ける事で、その可能性は確率となり……タクミさんが悪役である事を認めつつも、それでも早紀さんとの世界を望んだ事で、確率は確定へとシフトした。


 あの力は、三人で手にした……奇跡だったんです。お二人はそんなこと知りませんが。



でもゼクスさんを捕らえるには、第六次元の最高権限が必要だった。盤古(ばんこ)さんになんとか通信が繋がり、信用を勝ち取った事により私は創造神から起源神までシフトした。


 現実世界…………つまり地球を含めた太陽系は、私の権限でも、盤古(ばんこ)さんの力でも動かせませんでした。あの段階では第六次元の最高管理権限者は二人いたから。


 なので、私は異世界……つまり冥界の神となることで、冥界のルールを書き換え罠を張った。


「まぁ多少計算外なことは起きましたが、もうあなたには何の権限もありません。私の権限によって決定したルールにより命を落とした神は、神としての能力や権利が剥奪されます」


「––––––そんなバカな話があるか……お、オレが作った世界だぞ!? オレが作ったルールの元に世界が動くべきだ!!! 貴様の勝手など許さん!!!」


「許さないも何もないじゃろう…………シルヴァンドルよ」


 私の後ろから、盤古(ばんこ)さんが現れた。


「まったく……お主は相変わらず頑固者じゃのう…………」


「貴様ぁ…………」


「……わしももう少し説明するべきじゃったな…………すまなかった」


 盤古(ばんこ)さんが、深く頭を下げると追い打ちをかけるようにシルヴァンドルさんが叫ぶ。


「説明など必要ないっ!! 貴様は第五次元でアリスを見殺しにした張本人だろうがっ!!」


「見殺し…………か」


「そうだ…………貴様が見殺しにした!! アリスだけじゃない。第五次元で戦死したすべての人間はお前が見殺しにしたんだ」


 呪詛を唱えるかのようなシルヴァンドルさんの言葉を、素直に受け止める盤古(ばんこ)さん。


「ちがうんです…………もうあなたにもわかってるでしょう? 戦争は止められない…………盤古(ばんこ)さんが、何度時間を戻しても歴史を変えられなかったように––––––」


「え…………」


 盤古(ばんこ)さんは静かに頷いた。


「わしもお主とその起源は同じじゃ。何億回も時間を超え、戦争の歴史を変えようとした。じゃが、変わらなかった––––––」


「––––––そんな、馬鹿な」


「だから言ったじゃろう? 人間と動物は同じ。縄張り争いはするし、結局可愛いのは自分の同胞だけ。お主とて気が付いていたから、全人類を洗脳しようとしたんじゃろ?」


 ––––––盤古(ばんこ)さんの絶望はどれほどのものだったのだろうか? きっと、彼も一度はシルヴァンドルさんと同じことを考えたこともあるのだろう。


「わしは、あきらめ…………人の戦争を認めた。すると新たな一面が見えてきたんじゃ」


「新たな…………一面?」


「人間の戦いは、すべてが間違ってるわけじゃない。本当の正義のために戦う人。敵も味方もなく本当の自由や友好を結ぶための戦いをする人。愛する者を守りたいだけの…………ただそれだけの戦い。恨みや欲望のような負の気持ちだけで戦う人間で満たされているわけではない。そう思えたんじゃよ」


「––––––私も、今回の事件でいろんなことを学ばされました。私も殺し合いや、戦争は嫌いです。だけど、それがすべて間違いではない。悪役さんに見えても、ただひたすら一人の女の子のために戦う戦士さんだっているんだって…………そう思いました。だから、私は戦いすべてを否定なんてできません」


「じゃけどな…………わしは、お主に自分の夢を託してしまった。もしかしたら君なら…………本当に戦争のない世界を作れるんじゃないかと…………。今考えると、わしは本当に愚かなことをした。すまなかった––––––」


 絶望と挫折でカプセルの中で崩れるシルヴァンドルさん。


「オレは…………あきらめきれなかった」


「そう……わしよりもっと、あきらめの悪い人間じゃった…………。それが、結果的にお主を苦しめることになったんじゃな…………。すまなかった」


「––––––あああああああぁぁぁぁぁぁ」


 泣き崩れ、嗚咽を漏らす神––––––でも、私はそれを他人事には見えなかった。


 私も…………いつこうなってもおかしくない。


「シルヴァンドルよ––––––お主は一度生まれ変わり、第五次元に戻る気はないか?」


「第五……次元に…………?」


「––––––第五次元のアリスは、輪廻転生を繰り返している…………今は第五次元の西暦で言うと四千年くらいじゃったか」


「馬鹿な…………繰り返すにしても、ソウルプラズムが輪廻転生するには若い間に死ぬ必要がある。何度も老人にならずに若い間に死んでいるとでも言うのか?」


 盤古(ばんこ)さんは静かに首を振る。


「…………もしかしたら、こんな日が来るんじゃないかと思ってな。わしが特別に彼女の事は常に気にかけとったんじゃ」


 つまりアリスさんだけは転生後、老人になって死ぬ直後に回収してソウルプラズムを回復させてから現実世界に再転生を繰り返していた。


「あの子は……ずっと魂のどこかでお主の事を求めていた。いつ何時、名前が変わろうが国籍が変わろうが、変わらずどこか”運命の人はどこか別のところにいるんじゃないか”とそう思っておった…………」


「––––––オレは…………オレは…………」


「四千年たっても、こっちの世界で紛争はなくなっていない。傍観主義の頼りない神の世界かもしれぬが…………人間として戻ってはこないか?」


「––––––うわああああぁぁぁぁ…………あああああぁぁぁぁ……………………」




 それから、何度も泣きながら頷き…………感謝と、謝罪の言葉を繰り返した––––––。





「…………ペルセポネ…………いや、ハデスよ」


「––––––はい」


「お主は優しい…………おそらく、その優しさはシルヴァンドルより深く温かい。じゃが、その優しさは悲しい現実に打ちのめされた時、刃となって己を傷つけていく」


 私は、その言葉の意味を理解していた。優しい人たちが、悪意や悲しみでその心を呪いに変える姿を見てきたから…………。


「もしかしたら、お主は––––––いずれ壊れ、己の存在すら呪いに変えるかもしれぬ。これから何千…………いや何億の年月は、お主を変質させてしまう危険性すらある––––––その覚悟はあるのか?」


 私は––––––それでも笑顔で答えた。


「大丈夫です。私が呪いをため込んで闇に染まったら、その時の勇者様が私を殺してくれます––––––。私は人間のその可能性を信じてるから、喜んで神様になれます」


「ふ……そんな顔で自らの死を願うか…………。お主は、わしなんかよりずっと、神様に向いているのかもしれんのう」




 ––––––そう言い残して、第五次元へと二人は戻りました。


 残された私は、第六次元のすべてを作り変えることができます…………。




 ––––––私は信じました。人間の無限の可能性を。


 だから……きっと大丈夫です。


 私がどんな形になっても…………きっと人間はそれを乗り越えられます。




 そう……私願った世界の主人公のように…………きっと––––––。

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