表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
130/143

第百十一話「答え」

「くっ……無概」


「いやぁーー!! なかなか素晴らしい名前を与えてくれてありがとう!! こちらではコードネームYT0012としか呼べなかったんだけどね」


 私はなんとか抵抗しようと動くが、完全に体が動かない。スピカの魔力切れの影響で吐きそうなくらい気分悪いし、さっきの痛みも激しすぎた。実際にダメージを受けてないとはいえ、魔力から脳を通して佳奈美の苦痛を分散させてたんだ。


 魔力切れについてはティエアでも確認したけど、基本的にソウルプラズムに依存している。だから、スピカと私の魔力……つまりMPは別管理となっているが、魔力は血液循環によって発動する。だから連続発動による内臓へのダメージは残ってる…………。


 これはティエアではスピカ、無銘は私と別キャラクター扱いとなっているが、本来の現実世界での魔法は体内機関の魔力が体に内包されるからだと思う。


 …………つまりは、今の私は魔法は使えるが、体は動かない…………無概がどこまで強いのかわからないけど、タクミが以前苦戦した影沼や自衛隊員を一瞬で倒した実力を見ると、逃げる事すら出来ないかもしれない。


「ぐふっ……な、なにしやがったクソヤロウ…………」


 影沼が血を吐きながらよろよろと立ち上がる。が、すぐに膝をついた。


「……動かないほうがいい…………アンタの肺を一つ斬った。今は、まともに動けないはずだ」


 無概が冷たく言い放つ。


「んなこと聞いてんじゃねぇ……オレは体の全身に防御魔法を施してたはずだ。銃撃すらはじいてたはずなのにどうやって斬りやがった…………」


「……防御なんて関係ない。俺の剣は、剣撃のみを過去に送る」


 タクミの奥義……遡龍烈牙(ソウリュウレツガ)っ!! まさか無概がそこまで使えるなんて…………。


遡龍烈牙(ソウリュウレツガ)……あの男もとんでもねぇ技出すもんだな…………なんせ、この技使えば、攻撃のみを相手の過去の体内に送り付ける事すらできる。どんなに鍛えてても内臓そのものは弱いからな。やろうと思えば相手を十秒前に心臓破裂させる事すら可能。しかも、過去改変のリスクだった年齢後退も発生しない。過去に飛んでんのは攻撃だけだからな」


 つまり遡龍烈牙(ソウリュウレツガ)は、やろうと思えば防御力無視。しかも過去で殺すわけだから仮に先にタクミを倒したとしても、その結果を捻じ曲げて過去を改変してしまう。


「そんな技を手に入れれば、システムも攻略不可認定するわけだわな。殺そうが何しようが勝利することはできない。何をしようが過去で相手を殺せるんだからよぉ。しかも過去改変なのに矛盾を修正できるチャンスである矛盾(パラドックス・)世界(ワールド)は発生しない。本当の意味で、相手には何もさせずに死という結果のみを過去に送ることができる」


 タクミが、そこまでの力を手に入れてたなんて……。


 心臓破裂なんてことが起きたら十秒といわず即死だ。反撃など不可能。……いや、それができるのなら、脳を内部から切り裂くことも可能。魂すら……跡形もなく消し去る事ができる。


 さらに、タクミは運命の(ストーリー・)破壊者(ブレイカー)。ゲーム世界でもなんでも、タクミは神を殺すことができる。


 殺す事に関しては彼は最強だ……。その力が、あろうことかゼクスの手に堕ちてしまった。


「最初はある程度の人物のみ洗脳して核で脅せばいいと思ったんだがな。あいにくこっちの世界線では技術レベルが低すぎて、核の威力が調節できねぇ。変に使わせると被害が大きすぎる。ま、人間にある程度の力与えるのも癪だしな」


 こっちの世界線で核についても勉強したけど、威力が私が知るものより数段高かった。博多区で爆発したら私がその時にいた北九州空港にまで甚大な被害が及ぶレベルで、多少の熱風と放射能で被災にあうとかそんなものではなかった。


 だけどそうか……核の威力が高すぎると余計なものまで破壊してしまうから調整が必要だったんだ。ちょうど基地一つを機能させないレベルにすれば基地周辺は放射能で侵されるものの、除去すればきれいな状態で手に入る。


 だけど…………戦争は激化してしまった。報復戦争も起きたから、核の威力は次第に上がり多くの地表を焼いた。


「……それで、全人類を洗脳する計画を立てた…………」


「…………人間ってのはな。一度引き金を引けば調子に乗るもんなんだよ。最初は威力が小さくても、もう少し威力を上げても大丈夫。もう少し大丈夫……もうちょっとだけなら……そうやって気が付けば犠牲者は手に負えないほどになっている。せっかく必要なところだけ破壊できるようにしてやったのに、人間っつーのはどこまでも腐ってやがる……そうは思わないか? 星井早紀」


「思わない……アンタが何言おうが…………私は…………人の思いを信じる」


「はっ!! テメェらが何をしようが……もう終いだ。いやーー!! 最後にクッソおもしれぇもん見せてもらったぜぇ!!! 無駄な事にも気付かずに仲良しこよしでお互いに苦しみあった時のあの顔っ!!! 超笑えるぅ!!!」


「ゼクスっ!! ぐあっ……」


 怒りで立ち上がろうとしたが、もう足が動かない。


「あー、はいはい。そういうのもういいから。……はいはーい。無概くんはさっさとそこのクソザコどもを運んでくださーい!!」


「まっ……てっ……」


 願う手は届かず、気絶している佳奈美は連れ去られていく。





 ダメだ……ただでさえ痛みで動かないのに、相手がタクミと同等なんて。…………いや、殺す事に躊躇わない彼はそれ以上と言っていいだろう。





 どんどん私の中を絶望が犯していく。


 無理とかそういう次元の話じゃない。





 もう私に、出来ることはなにもない…………。










 ––––––いや、これで計画通りだぜ。









「っ!!」


 ––––––いま、私何したの?


 私の投げた小刀が、無概の肩に刺さっている。でも私は投げた覚えはない。


 ……無銘ちゃんでもない。当然、魔力切れで動けないスピカでもない。


 誰かの意思が腕に流れ込んできたみたいに、勝手に腕が動いた。


 ふと、私のポケットが光ってる事に気がついた。


 ……無銘ちゃんの封印石。今は壊れて、その中身はいないはず。








 ––––––そう、そこしかなかった。










「貴様……どうやって攻撃した?」


 無概が聞いてくる。






 ––––––君は、俺が––––––。






 ……気がついたら、私は右に飛んでいた。瓦礫で手を切ったけど、それ以上に私がいた空間は未来から飛んできた一閃で切り裂かれてた。


「避けた……お、俺の攻撃を?」


 無概も何が起きているのかわからないようだ。


 未来からくる斬撃など避ける方法なんてないからだ。 ––俺以外はな––。











 ––––––言ったろ? 俺は––––––。











 ––––––そうか……そうだったんだ。




 俺は ––君は–– 本当にずっと側にいたんだ。


 タクミは ––俺は–– ずっと約束を守ってたんだ。


 君を ––私を–– 守るために、自分すら犠牲にしていた。




 それが……私達 ––俺達–– の偽証だったんだ。





「ようやく気づきましたね……早紀さん」


 ––––––ここは……私の世界?


 いや……(早紀)は目の前にいる。


 (彼女)の前には、ペルちゃんがいる。(早紀)は今……たどり着くべき覚醒にいたった。


「そう……貴方は女神に覚醒しました。私と違って自分の力で…………」


「自力じゃないよ……スピカや無銘ちゃんのおかげだよ」


 ……(早紀)は、私の意思とは関係なく話している。


 でも……それでいいんだろう。きっと、それは……()()じゃなくていいんだって事なんだろう。


「……神の領域にたどり着いた貴方には、願えば本物の女神として永遠の富と栄誉を手に入れる事ができます」


「うん……でもわかってるでしょ? ペルちゃん。……私の願いは、ただ一つ……タクミとあの家に帰ること」


 そうだ……私は、早紀との魂のリンクが切れたんだ。


 もう……俺は早紀じゃない。


 俺が過去で死んだことになり俺の魂が破壊される可能性に気づいた時、早紀の魂に自分自身を偽証し、早紀の体に融合する方法しか思いつかなかった。


 そうすれば、俺の体からは俺の存在はなくなる。……結城拓海は存在しない事になる。


 そうやって世界を偽証するしかなかった。


 ただ、本来いくら偽証してるとはいえ、別の人間に魂を移す事は本来できない。そんな無茶をすれば、魂は次第に本物の早紀に溶けて吸収されてしまう。


 だから、赤の封印石に逃げ込んで俺の意識を封印した。


「早紀さん……ええ、わかってました。私の女神の後輩がいなくなるのは残念ですが」


「うふふ、ごめんね……ペルちゃん。でも……私、やっぱりタクミと一緒がいい。好きなんだもん」


 けど俺は……少しの間だけ早紀として生きれてよかった。


「その気持ち、タクミさんにちゃんと伝わってますよ。文字通り、心の底から……ね」


「えへへ……まぁ、そんな事しなくてもタクミには隠すつもりなんてない。彼の魂は私と共にある。だから何度でも言うよ。私は……タクミが好き。––––––ね……タクミ」




 早紀……それでもな……俺は嬉しかった。君と魂をリンクして……君の想いとともになれた事が––––––。










「タクミ。貴方の望む世界はなに?」


「俺の望む世界は君だ。俺は約束の世界を……あの事故の時に叶えられなかった世界を望む。君は……俺が守る」











 ––––転生(リインカネーション)––––







「死ね……星井早紀」


 ……何十もの過去への攻撃は、早紀へと向かい殺す––––––。だが、そんな攻撃は無意味だった。


「……何度も言わせんなよ……俺は、約束を守る男だ」


 その攻撃は全て俺の剣で無力化され、過去に送られる前に鋼の音がその空間に弾けていく。


「貴様は……」


 俺は、空気に流れ散らされる塵の中でたたずみ…………悪役らしくこの上なく邪悪な笑みで笑った。





「俺は……(早紀)を守る勇者(悪役)だ」

というわけで、早紀視点に見せかけて実はずっとタクミ視点でした。

今章はプロット前段階では早紀編を考えてました。元々死因変更の伏線を用意してたわけだし、魂が消滅したタクミが生きてるのはおかしいからですね。

ですが、それじゃつまらないと悩んだ結果どうやってタクミを復活させるかと言う問題の解決策としてタクミ君には早紀との約束をしっかり守って貰おうと早紀として早紀の体に入る計画を立てたわけです。


さて、ツイッターではすでに宣言した通り、次章は最終章となります。

ゼクスときらきら星の関係。そしてゼクスの本当の目的。

そして神経系支配というエグい洗脳方法。そしてティエアを守る事は出来るのか?


ぜひブックマーク、評価、感想をお願いします!レビューをいただければもっと嬉しいです。


では、ぜひとも最後までお付き合いください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ