第12壁 奇妙な夢と奇妙な少年
蛇は夢を見る。とても嫌な夢。とてもいい夢。
そしてとても奇妙な夢。
今話は蛇視点となっております。
「…たっちゃん」
一人の女性がつぶやいた。
「ねぇ…ちゃん?」
俺はそう返した。
何年も前に死んだ姉。生きているはずなどない。
だって彼女は魔法界の禁忌に手を伸ばしたのだから。
「これは夢よ。でもいい夢じゃない。」
その姉はそう言った。
続けてこうも言った。
「もう私抑えられないわ。私はもう消える。たっちゃん。これだけは忘れないで。あの子は悪い子じゃない。」
そう言うと俺の静止など聞かず姉は消えてしまった。
その途端俺の前に地獄が広がった。
正確に言うと地獄となった"自らの住む街"を見たのだ。
…….
…..
…
.
目が覚めると時刻は午前零時を指していた。
「あ、蛇起きた?クソまずいスープできたから飲む?」
歩はそう言った。
「いらねぇよ…それより俺たち…」
「ああこの子が助けてくれたんだけど…」
歩の指さした方向をみるとそこには10歳くらいの男の子がいた。
「お兄ちゃん誰?僕なんでここにいるの?」
歩は大きなため息をつく。
「ずっとこの調子なんだ…何も覚えてないみたいで」
するとガチャリと音を立ててリサが刺激臭のするスープらしき物を持って入ってきた。
「お!蛇!起きたか!お前も飲むか?すまし汁」
「やめとくよ。リサのスープは毒殺までこなしちまう万能スープだからな」
そう言うとリサはそうかそうか万能かと喜んでいた。俺はただクソまずいから飲みたくないだけだしかなりの悪口を言ったはずだ。
「とりあえずそいつを魔法スキャンかけて…」
「そう言うと思ってかけておいたが…情報が一切ない。というのが結論だ。記憶も、魔粒子量もな。」
蛇の言葉を遮るように放たれたその言葉はあまりの不可解さを持っていた。
「ないだと?」
何故か?そりゃあ普通は"ない"わけが無い。
"この世に存在している限り"は。
Devil's game began.




