邂逅
腹が減った。
そういえば昨日…かは分からないが、に昼飯を食ってから少なくとも1日は何も食べていない。
人間、異常事態に巻き込まれた時は以外と冷静になるのか、それとも現実から目を背けているだけなのかは分からないが、草原に座り込んだ僕はそんなことを考えていた。
ここがどこかはひとまず置いといて、この村に入れば飯にありつけるかもしれない。
それが僕の出した結論だった。
そもそもそれ以外にとるべき行動はないだろう。
ここで村を無視して適当に歩きだすのはどう考えてもイカレてる。
そんな思考の末、というかそれしか道がないと分かっていながらも不安や恐怖から決断が遅れていただけなのだが…僕は村に向かって歩き出した。
近づいてよく見ると遠くで見るより、なんというかボロっちかった。
そもそも素材が木だし、何度も補修されたような跡がある。
そこそこ年季も入ってそうだ。
そして、そんなボロボロの門を前に僕は立ち尽くすことになった。
ボロボロとは言ってもそこはまだ機能を保った門。
どう考えても
「開かない…」
情けない声で独りごちると、押したり引いたり持ち上げようとしてみた。
所々が軋む音はするが、門としてはびくともしない。
これは困った。
呼び鈴的なものがついているのだろうか?
しかし門を隅々まで見渡してみるが、そんなものはどこにもない。
とうとう僕は最後の手段に出た。
「すいませーーーん!!誰かいませんかーーー!!」
大声で人を呼んだのだ。
少々気恥しい気もするが、このまま誰か来るまでじっとしているというのはそれはそれでめんどくさい。
これで手っ取り早く人を呼んで門の中に入れるならいいだろう。
30秒ほど待つと、僕の声が聞こえたのだろうギギーッと少し不快な音を立てて大きな門が外側に開いていった。
門が開いていくと同時に、丁度そちら側に太陽があったのだろう。
眩しい光に咄嗟に腕を目の前にかざし、光を遮る。
「おにぃ…ちゃん?」
ようやく光に慣れてきた眼に映ったのはかなり汚れた格好をした、それでも美少女だとわかる女の子が、半ばほど開いた門から、これまた半分ほど体を乗り出してこちらを伺っていた。
不健康そうな白い肌は泥や砂で汚れ、着ている服はドブに落としたあとの毛布を被っているようで、それでも無垢な瞳をした少女が。
「おにぃちゃん!」
少女はもう一度同じ、しかしかなりニュアンスの違った言葉を口にすると、こちらに駆け出してきた。
「えーっと…ん?」
当の僕は意味がわからないままこちらに駆けてくる少女を見ているだけだった。
妹はいません