チュートリアル
『ではまず、現在において使用可能なスキルについての説明をさせて頂きます。最初に先程も説明させて頂きました変身【人化】です。使い方は「トランスフォーム!ヒューマン!」と右手を上げながら唱えますと…』
「トランスフォーム!ヒューマン!!(キリッ)」
『…格好良いんですけど、残念ながらそういう設定は採用されてないのです。変身【人化】と念じれば使えてしまう簡単仕様でございます。』
全身の血が沸騰しそうなくらいに熱く感じる…これなんて羞恥プレイ?
『使用時間は先程説明させて頂きましたので割愛させて頂きますね。』
このスルーがまた追い討ちをかける…トドメさしてくれませんか?
『次に暗殺者のスキルで【発射】です。これは手に持った物質をターゲットへと飛ばす事が出来るスキルです。手で投げるより正確に強い効果が期待出来ます。その辺りにある石を拾い【発射】を前方の廃屋の壁へと使用してみて下さい。』
今度は罠は無いよね?………石は簡単に見付かるので5つ程拾って1つを残し収納に入れる。
『まだストレージの説明はしてませんがお使いになられるのですね?』
ちょっと悲しそうな声色で言われるので何故だか罪悪感を感じてしまう。
「えっと…いけなかったかな?」
『良いからやれです。』
怒られてしまった。本当にこの娘AIなの?
「はい。えっと…そうだ!【発射】」
手のひらにあった石ころは突然に前方に勢いよく飛び出し、壁に当たってカツンと高い音をたてる。
「意外と早く強く飛ぶんだな、びっくりしたよ。」
『暗殺者の攻撃用のスキルなので。またナイフくらいの物なら対象として使用可能ですが、1つだけ注意点を説明致しますとこのスキルで飛ばした物体は放物線を描きません。つまり、射手は特定されやすいので安易な使用は不利になる場合もございます。威力は現在のプレイヤーの皆様が投げるよりは強いですが、弓には及びません…丁度中間くらいですね。』
「つまりは暗器の使用や毒物を飛ばすのには便利そうだな。」
『流石でございます。既に発想が暗殺者ですね。』
絶対褒められてないよね?ね?
『次に死霊使いのスキルで【クリエイト『ゾンビ』】です。』
もう来た!ゾンビさん!嫌いだって言ってるのに…。
『このスキルは倒した生物をゾンビとしてユニット作成して下僕として使役するスキルです。』
もうエグいんですけど…。
『では、ここには生物がいませんので管理者権限によって生物を召喚致します。【発射】で倒して【クリエイト『ゾンビ』】を使用して下さい。』
えっ?もう実践ですか!?あ、目の前に可愛い犬が…あれ?牙を剥き出しにして怒ってらっしゃいます?
「しゅ…【発射】!」
飛ばした礫は狙った通りに眉間に突き刺さる様に命中し、犬は倒れる。するとキラキラっとエフェクトと共に犬の身体は消えていった。
「えっ?消えたけど?どうすれば良いの?」
『よくご覧になって下さい。死霊使いの適性がある方には倒した後にその場所にうっすらと火の玉みたいなモノが見られるハズです。それに向かってスキルを使用して下さい。』
「えっと…あった!ってコレって倒した相手が全部こうやって見えるって事だよね?………業の深い職業だな。なんだっけ?【クリエイト『ゾンビ』】!」
蒼白い魔法陣が地面にかすかに光り、何もない虚空から犬のゾンビが出てきた。
『成功でございますね。では、そのゾンビに命令を与えてみましょう。そうですね………徘徊せよ!とかはいかがですか?ゾンビですしね。』
うん、ゾンビさんですしね…犬だけど。
「徘徊せよ!」
あっ、フラフラどっかに行っちゃった…。
「いなくなったけど良いの?」
『良いんじゃないですか?しかし、現在はあのゾンビのマスターは制作者のジュレップ様です。なので、必要ないなと感じた下僕は手放す事も可能なのです。そちらもやってみましょう。使用するスキルは【解放】です。』
「【解放】」
『はい、大変結構です。今ので先程のゾンビは使役から解放されました。またこのスキルは使役するアンデット全てを解放してしまいますので、お気に入りの個体を使役している場合はお気をつけ下さい。』
えっ?お気に入りのゾンビって事…うわぁ、無いな。
「で、何体まで使役出来るんだ?」
『最大で6体ですね。ゾンビだけで1パーティ組めちゃう仕様となっております。』
誰得だよ…少なくとも俺にとっては6体もゾンビが周りをウロウロしてたらストレスになるわ。
『生産系のスキルのチュートリアルは、またにしましょう設備や材料が必要になりますのでご了承下さい。』
「分かったよ。今日は何か疲れたからまた明日宜しく頼むよ。」
『かしこまりましたシュロップ様。ゆっくりおやすみ下さいませ。』
―そしてログアウト。
今日は連載初日だし、これくらいにしておいてやるぜ!